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しおりを挟むアリーズがモリス男爵の庶子を実子として受け入れるのは男爵の尻拭いでしかない。
確かに、アリーズには何の利点もない。
強いて言えば、庶子だと夫に浮気された女だと明らかになるけれど、実子であればそうはならないというくらい。
「アリーズ、俺が実子にすることを勧めない理由は3つある。」
「え……?3つも?」
「ああ。しかし、それは客観的事実だけで3つな。主観的にはまた別だ。」
「なんか3つだけでも驚きそうなのに、他にもあるのね。それで?理由って何なの?」
「1つ目は、男爵家の跡継ぎ問題だ。前妻の娘が跡継ぎの予定なんだろう?」
「ええ。だから男爵様は私には子供を産ませないって言ったわ。」
「それなのに愛人に子供ができた。お前の子供ということにして男が産まれるとどうなる?」
そう言えばレベッカが言っていた。『男爵家を継ぐ子供を産む』と。
つまり、レベッカの産む子供をアリーズの実子にするということは、リズベスの立場を危うくするということになるのだ。
「リズベスが跡継ぎではなくなるかもしれないってことね。」
庶子でも跡継ぎになれないこともないが、庶子のままであれば、男爵は確実に嫡子のリズベスを跡継ぎにするはず。
リズベスにいい嫁ぎ先が見つかれば男爵家の跡継ぎになる必要はないかもしれないが、子爵・男爵令嬢の嫁ぎ先は熾烈な争いになったりする。
アリーズも選ばれなかった一人なのだから。
「そうだ。2つ目は、実家の問題だ。アリーズの実子にするということは、アリーズの実家であるフライ子爵家と縁があると認めることになる。将来、その子供がフライ子爵家を頼ってきたら?血の繋がりのない赤の他人に援助を求められることになる。だから、お前の兄は反対したんだ。」
そこまで考えが及んでいなかった。
確かにそう。次期子爵である兄を伯父と呼ばせることにも父を祖父と呼ばせることも抵抗がある。
「私一人の問題ではないってこと、忘れていたわ。」
「そして、3つ目。アリーズは知らないのかもしれないが、赤毛の子は赤毛だ。」
「……どういうこと?」
「そのレベッカという愛人は赤毛なのだろう?赤毛の女が産む子供は赤毛で産まれてくるんだ。つまり、お前の実子には絶対に見えないということだ。」
薄茶色のアリーズが赤毛の子供を産むはずがない。モリス男爵も茶髪なのだ。
いくら庶子を実子と言い張っても、誰も信じないということだ。
アリーズは脱力した。
「……もうそれ、悩む以前の問題じゃない?」
知っていれば、レベッカの子供を実子にするという考えは現実的ではないのだとわかったのに。
なんだか、悩み損だった気がする。
「わかったか?愛人の子を実子にするという男爵たちの企みは受け入れる意味がないってことが。」
「そうね。バカみたい。」
「それでも離婚せずに、醜聞まみれの男爵家にいるつもりか?」
「…………」
「男爵の娘のことか?もうすぐ8歳になるんだろう?初等教育を受けさせればいい。」
確かに。
レベッカが産む子供が男の子であっても、リズベスを男爵家の跡継ぎだと約束させればいい。
レベッカがいる屋敷ではリズベスも暮らしにくいだろうから、王都に行けば離れられる。
アリーズがいなくても、どうとでもなるんだ。
「まさか、男爵に惚れているから離婚したくないのか?」
「違うわ。そうじゃない。だけど、男爵夫人の肩書を離婚で失ってしまうと、自分の将来が見えないの。」
そう。つまりは、子供たちを気遣ったのは偽善で、アリーズの本心はこれなのだと気づいた。
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