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しおりを挟むサンルームに向かうと、なぜか隣同士に座った二人が顔が20cmも離れていないような距離で微笑み合っていた。
「ごきげんよう、ネイド様。お姉様、アーサー様がお待ちでしたのよ?」
「あっ!ごめんなさい、アーサー様。」
「カレン嬢、お邪魔しているよ。
アーサー殿、申し訳ありませんでした。
ナタリー嬢の好意に甘えて僕の話し相手をしていただいたのです。」
「ねえ、カレンたちも座って?一緒にお話ししましょ?」
隣同士に座ったまま悪びれる様子もなく、姉は私たちを呼ぶ。
まさか、ほんの数分の間でここまで進展しているとは思わなかったわ…
今後の展開が読める私は、アーサー様には考える時間も必要なくなったと思った。
だけど、ちょっと私の予想と違う展開に頭を抱えてしまったの……
姉たちの前に私とアーサー様が並んで座ったの。一番おかしな組み合わせよ?
「カレン、アーサー様。私、見つけてしまったの。理想の王子様を!」
うん。それは気づいたよ?
「それは、ネイド様なの。彼も私を自分のお姫様だって。」
うん。ネイド様もおとぎ話が好きなのね?
「だからね、アーサー様は従者でどうかしら?」
うん?従者?
「お姉様?意味がわからないわ?」
「私とネイド様が結婚してこの侯爵家を継ごうと思うのね。
だけど、アーサー様は今までこの侯爵家のために仕えてくれたでしょ?
仕事はそのままアーサー様がしてくれたらいいと思うのよ。」
は?
「アーサー様はお姉様の婚約者よ?仕えてくれていたんじゃないわ。
お姉様に代わって次期侯爵の仕事を学んでくれているのよ。」
「ええ。だからね、婚約は解消して、でも仕事はそのまましてくれたらいいじゃない?」
はぁー。
「もし、婚約解消したら次期侯爵の仕事はアーサー様がするべきことではありません。
それに、ネイド様の家はどうするのですか。跡継ぎですよね?」
「僕の侯爵家は従兄が継げばいいと思うよ?
この侯爵家の方が僕たちに相応しい規模だと思うんだ。」
手を取り合い見つめ合う二人を視界に入れたくないぃ~。
「ほら、お姫様と王子様って周りがお仕事するでしょ?
私たちに必要なお仕事って子供を授かることだと思うの。
だから、アーサー様を雇うわ?」
うちは王家じゃないのよ!
「これは立派な婚約破棄案件だ。慰謝料を請求させてもらう。
俺はお前らの下で働くなんてまっぴらだ!」
アーサー様の冷ややかな視線に、手を取り合ったまま慄く前に座る二人。
そりゃそうだ。何様なのかしらね?
「アーサー様、申し訳ございません。
父には私から事の経緯を説明して、婚約破棄の慰謝料も払うように伝えます。
これは、ネイド様の方にも慰謝料を請求するべきです。」
「ああ、そうだな。俺も父と相談するよ。」
そう言って部屋を出たアーサー様を前の二人は固まったまま見送っていたけれど、ことの重大さがわかっているのかしら?
ここまでおバカな発言を面と向かって言えるって呆れてしまうわ。
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