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結婚式となるはずだった日は、破婚パーティーとなった。
ほとんどの貴族家はこれで理解できるはずだ。
公爵令嬢に問題があったと。
王家での破婚は純潔ではなかったことを意味するのと同じ。
貴族間での破婚は逃亡が多いらしいが。

メリーザとはもともと結婚式をあげる気はなかったから、他国には招待状を送っていない。
国内の高位貴族だけにした。
しかも、ある程度の貴族家には茶番だと内々に伝えてある。

公爵には数か月後の別の式典で大々的に正妃を発表するので結婚式は規模を縮小すると伝えてある。
愚かな公爵は何も疑問に思っていない。 


聖堂ではなく、パーティー会場に案内され、発注済の花や食材を無駄なく消費されるのが破婚パーティーだ。

 
茶番のようなパーティーを終え、クロノスはのこのこと結婚式の準備に訪れた公爵一家とメリーザを閉じ込めていた部屋を訪れて処罰を告げた。
 
公爵家は伯爵まで降爵の上、当主を遠縁の者にすること。領地は半分没収。

公爵は王家を欺いたことと医師を買収しようとしたことで収監。

メリーザは幽閉することなく修道院行き。


この動きでも、国内貴族は公爵家が王家を欺いたと知れ渡る。



真っ青になった2人に告げた。

「どうして辞退しなかった?純潔の検査を誤魔化した?前例を忘れたのか?」

「申し訳ございません。娘が王妃になりたがっていたので……」

「王家の血筋を守るために純潔検査があるのだ。夫以外に股を開く女を王妃にはできない。
 王妃になりたかったということは、あの騎士は遊びだったのか?」

「……ご存知だったのなら、事前に婚約破棄してくださればよかったのに。」

悔しそうに公爵が言うが、自業自得だろう?

「ずっと2人のどちらかが辞退に動くのを待っていた。無意味だったがな。
 公爵家から正妃を出したかったのだろう?記録には残るぞ?正妃になりそこねの汚点としてな。」
 



何度、結婚式をマーリアとのものに変更しようと思ったことか。

しかし、公爵家が王家を欺いたのだと知らしめる必要があった。
メリーザが純潔ではなかったことを公表せずにマーリアを正妃にすると、メリーザを捨ててマーリアを選んだのだと批判が出る可能性がある。
王太子と側妃の意向で公爵家は辞退したと。否定しても、中には信じる者もいるだろう。
 
マーリアがやり玉にあげられるなど、許せるはずもなかった。

破婚パーティー、公爵家の失墜、令嬢の修道院。前例より少しきつく、対処した。



側妃が正妃になることは珍しくはない。
しかも、マーリアは既に2人も子供を産んでいるし、侯爵家出で祖母は元王女。

マーリアを押しのけて正妃に名をあげる者などいない。

ようやくマーリアを唯一の妃として愛を伝えられる。




いつも通りマーリアの部屋に行った。

彼女には今日の出来事を何も伝えないように情報を遮断させていた。
初夜で来ないだろうと思っていたマーリアは驚いていた。

マーリアが離宮に行くことを考えているのは知っていた。
メリーザに気遣ってのことだろう。

気持ちは痛いほどわかる。誰かと愛する人を共有できないんだろう?
マーリアは私と同じだ。
愛する人は一人だけでいい。

マーリアは勘違いしているけど。
 
正妃を大切にしたいから、マーリアに愛を告げないのではない。
邪魔者を排除してから、マーリアに愛を告げたかった。私の唯一として。


『愛してる。君だけしかいらない。』
 
ようやく伝えられた愛の言葉。


『私も愛してるわ。嬉しい。』

ようやく聞けた愛の言葉。


これからもマーリアだけが私の妃だ。





 
 
 
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