異世界帰りの元勇者が現代の危機を救う~謎の異世界化、原因究明の旅へ~

ゆる弥

文字の大きさ
12 / 47
序章 仇討ち編

12.仇討ち

しおりを挟む
「見えてきました。そろそろ久留里地区に入ります!」

「よし、山への麓の辺りで止めてくれ」

「はい!」

 車両を山道に続くところへ置いてそこからは徒歩で向かい事にした。皆武器やサバイバル道具を持って車から降りる。
 
 鍵を閉めてGPS信号が発進されていることを確認すると山へ入る。このGPSを頼りに戻ってくることになる為、確認は怠れない。

「ここからは静かに警戒して行くぞ。いいな?」
 
 コクリと頷くのを確認して山へと分け入っていく。

 俺を先頭に幸地ゆきじ早波はやな、魔法銃部隊、遠距離魔法部隊、治癒部隊、殿が力也りきやという体制で進んでいる。
 
 なにかあった時に力也のパワーは助けになること間違いなしと思っての配置だ。

 険しい山の中を五感を研ぎ澄ましながら山頂を目指して登っていく。

 ここの山はそこまで高い山ではないが、体力が消耗される。

(こんなことでへばるようでは、鍛錬が足りないな。戻ったら鍛え直さなければ)

 しばらく上るとジスパーダの物と思われる戦闘服の切れ端が落ちていた。

 この辺りで秀人達は戦ったという事か。

 辺りを警戒する。

「それは?」

「戦闘服の切れ端だ。この辺りで戦闘があったんだろう」

「では、近くに?」

「可能性はある」

 刀をいつでも抜けるように構えながら登る。

 ────ガサガサッ

 斜め前の方向から草をかきわける音がする。
 中止していると白いウサギのようなものが飛んできた。

「なんだウサギ────」

「────構えろ!」

 ウサギはホーンラビットというウサギに角が生えた魔物だった。しかし、それは何かに追われていた。追っていたものが今来るはずだ。

 ホーンラビットは切り捨てて来るものに備える。

 黒い影が見えた。デカい。やはり。牛鬼と言っていたが、あれはミノタウロスだ。あっちに居た時のランクはBランク相当だ。こっちの世界では今の所、最上位に強い魔物だ。

「やつは強いぞ! 心してかかれ! 油断するなよ!?」

「「「はっ!」」」

 まずは俺が前に出て抑える。手持ちの斧を振り下ろしてくる。刃を添えて受け流す。

 ────スドンッッッ

 凄まじい力の振り下ろしに土がめくり上がり、そこかしこに土や石を飛ばしていく。

 今が振り下ろしていて隙がある。そう察知して足を切りつける為、横薙ぎに刀を振るった。

 ────ギィィィィィンッ

 何かに行く手を阻まれた。
 それは、俺が秀人に渡した。『神明しんめい』であった。この魔物が持っていたのだ。どおりで発見されないわけだ。

「オマエ、ナカナカヤル」

 この魔物話ができるのか? それに俺は驚いた。このランクの魔物が話すわけないのに。咄嗟に距離を取った。

「お前、しゃべれるのか?」

「ニンゲン、クッタラ。ハナセル、ナッタ」

 頭に血が上るのが分かる。こんなに頭にきたことが過去あっただろうか。この笑い方は人を自分より下の者だと思っている。完全に自分が狩る側だと思っている。

「そうか。もうしゃべるな。頭が沸騰しそうだ」

 ────ゴオウッ

 体から青い炎が噴き出す。これは皆で討伐して意味があるんだ。そう思って討伐隊も組んだ。そして指導もした。だが、もうどうでもいい。

「コノケン、イイ。モッテタヤツ、オシカッタ」

「口を開くなぁぁぁぁ! 魔物風情がぁぁぁぁ!」

 幸地にアイコンタクトをしてから俺はミノタウロスに切りかかった。
 斧を横にして阻まれる。
 そこに刀で切り付けてくる。

 そういうつかい方か。
 わかってねぇなぁ。
 手首に回し蹴りを放つ。

 刀を落としはしなかった。
 だが、いいんだ。
 積み重ねるだけ。

 もう一度切りかかる。また同じことの繰り返しだった。話せるようになったと言っても所詮、脳は魔物だ。

 手首目掛けてまた蹴りを放ち寸止めする。
 ミノタウロスは手を引っ込めた。
 クルリと回りバックスピンキックを放つ。

「せいっ!」

「ゴオォォォ」

 叫びながら腰を折る。

 ────ズバンッッッ

 ミノタウロスの腕から手首と『神明』が切り離されて飛ぶ。
 俺はそれを掴むと飛びのいた。
 ここまで三秒だ。

 ────ビィィィィィィィ

 二本のレーザービームがミノタウロスの心臓部を貫通した。
 しまいだな。

「ファイヤーアロー!」
「ライジングボルト!」

 炎の矢が深々と突き刺さり天から舞い降りてきた稲妻により消し炭となった。

(秀人。おまえの相棒は取り返したぞ。そして、ジスパーダが仇をとった。お前は負けちゃいない。俺達は勝ったんだ)

「やりましたね! 武藤隊長! やっぱすごいです!」

「幸地が俺の合図を受け取ってくれたからよかったんだよ。ありがとな」

「ぼ、僕は、できる事をしようとしただけです!」

 さっき言ったことを実践したということか。部下の成長ってのは本当に早いもんだな。

「アッシの大剣の出番はありませんでしたねぇ」

「アタイの素早さも出番はなかったねぇ」

 力也と早波は不満そうに言っているが口は笑っている。

「仕方ないですよ! 力と速さと技! 全てを兼ね備えた隊長が相手しちゃいましたからね!」

「なんかすまん」

 頭に手を置いて謝るとみんな笑顔になった。

「さぁ、帰りましょう!」

「だな。この『神明』は天地家に渡そう」

 刀しかないけどしかたない。
 鞘はもう一度作ってもらうか。

 抜きみだと危ないので着替えで持ってきた服を切り裂いて巻き付けて持ち帰ることにしたのであった。

 (ジスパーダは強い。秀人これからもっと強くなるぞ! 空から見ててくれよ?)

 見上げた空は綺麗な夕日やけ空だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界複利! 【単行本1巻発売中】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

処理中です...