異世界帰りの元勇者が現代の危機を救う~謎の異世界化、原因究明の旅へ~

ゆる弥

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第一章 秋田編

19.調査へ出立

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 出発の日がやってきた。
 基地の駐車場に四人で整列している。
 見送りの人たちと武岩総長がズラリと並んでいた。

「これから異世界化の調査に行って参ります!」

「必ず帰ってこいよ!? 健闘を祈る!」

「「「はっ!」」」

 武岩総長の激励の言葉を受けて車に乗り込む。
 運転は知友がすることになった。俺は助手席に乗りこむ。
 後ろには地雷と円鬼が乗り込んだ。

「武藤たいちょー! どーして僕達を連れて行ってくれないんですかー!?」

 大声でそう叫ぶのはこの前まで討伐任務をしていた、幸地であった。
 車を窓を開ける。

「幸地達はこの街を守っていてくれ! みんな居なくなったら誰が守るんだ?」

「そうですけど! 一緒に行きたかったです!」

 敬礼したままそう叫ぶ。

「今回は刀剣部隊からは俺だけだ。頼んだぞ? 部隊長代理?」

「はっ!」

 姿勢をただし俺の代わりを務めてくれるようにお願いする。
 武岩総長にもお願いしているので、その辺は大丈夫だろう。

 車が発進して敷地内を進む。
 この車両を見た隊員たちはみな敬礼して送ってくれる。
 入口の手続きを済ませて基地の外に出た。これから俺達の長い任務が始まる。

 まずは北上する。
 前回の千葉に行った時とはまた違った風景が流れていく。
 高層ビルがほぼ無いのは魔物が現れた当初に、空を飛ぶ魔物に襲撃されて崩れたからだ。

 今は瓦礫がだいぶ撤去されているが、まだ残っているところもある。街を守る壁は地上の魔物を寄せ付けないようにはできるが、空の魔物に効果はない。今は遠距離魔法で対応している。

「そういえば、隊長は親しい人に挨拶してきたんですか?」

 まだ壁の中ということもあり、リラックスしている。

「あぁ。といっても、幼馴染だがな」

「えぇー? 幼馴染、いいじゃないですか! その人、結婚してるんですか?」

 そう来ると思ったよ。親睦会をしてからかなりみんなフレンドリーになった。だから、こういう事もズケズケと聞いてくる。

「残念ながら、天地の妻だ」

「……すみません。知らなくて……」

 急にシュンとしてしまった。悪いことを言ったと思ったんだろう。

「気にしてない。天地には子供がいてな。佳奈っていうんだ。可愛くてなぁ。俺を慕ってくれているんだ。だから、正直に死ぬかもしれないと話してきた」

「そう……ですか。私は数少ない友達位なので……」

 そんな話をしていたら暗い感じになってしまった。
 なんとか空気を変えようと外に視線を移した。
 外はボロボロのビルや住宅が並んでいる。
 犬や猫もウロウロしていることが多い。

知友ちゆうは、犬派か? 猫派か?」

「ぶっ! 何の話してんですか?」

 吹き出して運転が少し乱れるほどだった。

「いや、なんか暗かったからな」

 正直に白状すると。

「私は犬派です」
「俺もだ」
「自分は猫派っす」
「ワタクシも猫派ですわ」

 見事に真っ二つに別れた。そして、コイツら。

「聞いてたのか?」

「そりゃ聞こえるっすよ。天地さんの奥さんと幼馴染なんっすよね? でも、天地さんはもう居ないじゃないですか」

「待て待て! それ以上は言うな!」

 俺は地雷の言いたいことがわかり会話を止めた。それは俺が考えちゃいけないと思っていたことだったからだ。

 莉奈を好きだったこともあるが、それは小学生の頃だ。今はなんとも思っていない。佳奈は可愛いが、姪っ子みたいな感覚でいる。

「す、すんません」

「いや、いいんだ。なんか別の話題ないか?」

 俺が皆に話題を提供するように言うと。

「はい! じゃあ、みんなの異性のタイプは!?」

 知友が悪ふざけとしか思えない話題提供をしてくる。なんなんだ本当に。

「ワタクシは、誠実で綺麗な顔立ちである程度お喋りできる殿方なら誰でもいいですわ」

「えっ? 何気にハードル高くない?」

 知友が円鬼に顔を顰めながら振り向いていった。
 前を向け前を。運転中だぞ。

「ちょっとこれは妥協できないですわ。綺麗な顔というところは特に」

「それは難しそうっすね」

 顎に手をあてながらそういうのは地雷。眉間に皺を寄せて険しい顔をしている。

「そうかしら?」

「はい。綺麗な顔の人って大体もう決まった人がいたりするじゃないですか。そうじゃなければ、遊んでる人。そうなると誠実ではないですよね?」

「た、確かにそうね? でも、ワタクシは諦めないですわ。そういうあなたは?」

 円鬼は負けじとそう宣言した。

「自分はカワイイ系が良くて、年下がいいです。ちょっとギャルっぽくてもいいっすねぇ。ただ、あんまりギャルしてるのは嫌かもしれないっす」

「今のご時世、ギャルっているのか?」

「そこなんすよねぇ」

 異世界化して以来、余り化粧品とか嗜好品のようなものは出回らなくなったのだ。それは魔物が出たことによる弊害で、そんな化粧なんてしている場合じゃない。という風潮になってしまったからだ。

「はいはーい! 私は、守ってくれる人が好きです! 容姿はあまり関係ありません!」

 そう宣言するのは知友。

「なんかめっちゃ広くないっすか?」

「そうなのよ! それなのに、誰も私を守ってくれない!」

 そんなこと言ってもなぁ。一応部隊の人間だから戦闘訓練はしているんだし、一般の男性相手だと逆に守らなきゃいけなくなりそうだよな。

「隊長はどうなんすか?」

「いやー。タイプなんてないよ。俺を好きでいてくれる人がいればって感じかなぁ」

「ダメっすよ!? ちゃんと選ばないと!」

 地雷が興奮し始めた。俺の適当な感じの回答が不満だったようだ。

「いいんだ。その為にはまず生きて帰らないとな」

「壁を出ます!」

 壁を出た先には、目の前に森が拡がっていた。

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