27 / 47
第一章 秋田編
27.魔物が強くなっている?
しおりを挟む
二日間過ごしたホテルを出て車を出した。
ゆっくり休めたので割とすっきりした感じで今日を迎えている。
他の三人もリフレッシュできたようだ。
「今日はなんだかいけそうな気がしますね!」
元気にそう言い放つのは千紗だが、コイツのせいでこんなことになっているのだ。まぁ、それは置いておこう。
「あぁ。だいぶ寝られたからなぁ。良く身体を動かせそうだ」
「ですね!」
凄い爽やかな笑顔でこちらを見てくる。こんな顔ができるようになってよかったよ。昨日何てすみませんってずぅっと謝ってばっかりで暗い顔をしていたんだから。
高速を軽快に走っていると後ろから声を掛けてきた。
「今日は車中泊っすかね?」
「どうだろうな。泊まれるような所があればいいけどな。どっかの施設とか学校とかな。一般の家はなんか抵抗あるからさぁ。その家の思い出の写真とか見かけたら落ち込んじゃうだろ?」
「うっ。たしかに。しかも家で魔物に襲われた跡とか発見したらと思うと無理っすね」
「だろ?」
そんなこと考えただけで気が滅入っている。
子供のとか考えると目も当てられない。
その点、公民館のような施設とかだと普段使われていないし、学校は人がいることはまずないだろう。魔物が出始めてからというもの、学校に行ってる場合ではなくなっているからだ。
「刃さんはそういう場面にあったことあるっすか?」
「この世界ではまだない。異世界に居た時は一般の人が盗賊に襲われたりした場面を見ることはあった。いたたまれなかったよ。だから、俺達が討伐したんだ」
「人を!?」
「あぁ。殺した。その世界では盗賊は死罪。冒険者と言われる者達は盗賊を殺すんだ。自分がやったことを正当化するつもりはない。俺は、人殺しだ」
少し暗い気持ちになってしまった。それで皆に嫌われても仕方がないだろうと思っていた。
「私は、別にそれで刃さんを嫌になったりしませんよ?」
そう話してくれたのは千紗だった。本当にこういう時に気持ちがいいくらいサバサバしているからな。
「その世界ではそれが普通だったんですよね? 郷に入っては郷に従えといいます。その世界ではやらなければ、やられる。今のこの世界と一緒じゃないですか」
「そうっす。別に嫌だとか言うつもりはないっす。ちょっと驚いただけっす」
「ワタクシは、そもそも刃さんの過去は関係ありませんわ。今の刃さんを見て判断しますわ」
冬華がなんかカッコイイことを言っている。
そう言っている自分に酔っている節があるからなぁ。
話半分で聞いていた方がいいだろう。
「みんなありがとな」
「あぁ。いい所だったのに魔物よ!」
車を止めて降りる。
向かってきたのは角を生やした黒い牛が二頭。番《つがい》だろうか。
ブッファローだ。
「あの魔物は突進しかしてこない。だが、闇の魔力で角の攻撃範囲を長くして突進してくる。距離を見誤るな!?」
「「「了解!」」」
炎を纏い斬撃を放つ。合わせて魔法と魔法銃を放っていく。
そんなにスピードは速くないので対処はしやすかった。
傷を負ったのだが、そのまま突っ込んできた。
「ちっ! ファイアーウォール!」
三枚ほどの炎の壁を出し突進の勢いを落とす。
そうすることで、少しスピードが緩まった。
「足を狙え!」
横から二頭それぞれの足を狙って攻撃していく。
二頭のブッファローが膝をついた。
ここまでくれば後はとどめをさす。
首を落として魔石を取り出す。
少し疑問が頭を過ぎる。
(ブッファローってこんなに強かったっけなぁ。もう少しすんなり倒せていたような気がするが。そもそもあっちではDランクだし。そういえばマラスも……)
「刃さん!?」
呼ばれて初めて俺がボーッと立っていることに気が付いた。
「どうしたんですか? 行きますよ?」
「あっ? あぁ。悪い。今の乗る」
車に乗り込み出発する。
魔物が強くなってる?
そう言われれば最初のサルどもも強かったような。というか、魔力量が増えてんのかな?
窓の外から過ぎ去っていく街並みを見ていると森林が多くなっていることに気付かされる。
データとしては知っていた。ただ、実際に見るのは初めてだった。だから異世界化という現象が本当に起きていることだと改めて実感させられた。
魔力だって大気中に漂っているから魔力器官に魔力が溜まるわけだ。
元々の現代には魔力などなかったはず。一体どの時点から魔力があったのか。それありきの魔物だと思うから。
「刃さん? どうしたんですか? さっきからおかしいですよ?」
「あぁ。すまん。なんか魔物が異世界に居た時より強くなっている気がしてな。なんか嫌な予感がするんだ」
「この世界の方が強いんですか?」
「たぶんだがな。最初の斬撃によって始末できていたはずなんだ」
やはり何かが起きているのは間違いなさそうだ。
「そうなんですか。でも私達も魔法は使えますし、負けませんよ!」
その時、佳奈の言葉を思い出した。「まけてない」そうだよな。何を暗くなる必要があるんだ。強くなればいいんじゃないか。
「そうだな。鍛えながら行くか。強くなれそうだなぁ」
後ろからうめき声が聞こえてきた時は笑いが込み上げてきた。
「あっ! 那須高原だぁ!」
「遊びじゃないんだぞ?」
「わかってますよぉ」
口を尖らせる千紗。
車は順調に高速道路を駆けて行く。
ゆっくり休めたので割とすっきりした感じで今日を迎えている。
他の三人もリフレッシュできたようだ。
「今日はなんだかいけそうな気がしますね!」
元気にそう言い放つのは千紗だが、コイツのせいでこんなことになっているのだ。まぁ、それは置いておこう。
「あぁ。だいぶ寝られたからなぁ。良く身体を動かせそうだ」
「ですね!」
凄い爽やかな笑顔でこちらを見てくる。こんな顔ができるようになってよかったよ。昨日何てすみませんってずぅっと謝ってばっかりで暗い顔をしていたんだから。
高速を軽快に走っていると後ろから声を掛けてきた。
「今日は車中泊っすかね?」
「どうだろうな。泊まれるような所があればいいけどな。どっかの施設とか学校とかな。一般の家はなんか抵抗あるからさぁ。その家の思い出の写真とか見かけたら落ち込んじゃうだろ?」
「うっ。たしかに。しかも家で魔物に襲われた跡とか発見したらと思うと無理っすね」
「だろ?」
そんなこと考えただけで気が滅入っている。
子供のとか考えると目も当てられない。
その点、公民館のような施設とかだと普段使われていないし、学校は人がいることはまずないだろう。魔物が出始めてからというもの、学校に行ってる場合ではなくなっているからだ。
「刃さんはそういう場面にあったことあるっすか?」
「この世界ではまだない。異世界に居た時は一般の人が盗賊に襲われたりした場面を見ることはあった。いたたまれなかったよ。だから、俺達が討伐したんだ」
「人を!?」
「あぁ。殺した。その世界では盗賊は死罪。冒険者と言われる者達は盗賊を殺すんだ。自分がやったことを正当化するつもりはない。俺は、人殺しだ」
少し暗い気持ちになってしまった。それで皆に嫌われても仕方がないだろうと思っていた。
「私は、別にそれで刃さんを嫌になったりしませんよ?」
そう話してくれたのは千紗だった。本当にこういう時に気持ちがいいくらいサバサバしているからな。
「その世界ではそれが普通だったんですよね? 郷に入っては郷に従えといいます。その世界ではやらなければ、やられる。今のこの世界と一緒じゃないですか」
「そうっす。別に嫌だとか言うつもりはないっす。ちょっと驚いただけっす」
「ワタクシは、そもそも刃さんの過去は関係ありませんわ。今の刃さんを見て判断しますわ」
冬華がなんかカッコイイことを言っている。
そう言っている自分に酔っている節があるからなぁ。
話半分で聞いていた方がいいだろう。
「みんなありがとな」
「あぁ。いい所だったのに魔物よ!」
車を止めて降りる。
向かってきたのは角を生やした黒い牛が二頭。番《つがい》だろうか。
ブッファローだ。
「あの魔物は突進しかしてこない。だが、闇の魔力で角の攻撃範囲を長くして突進してくる。距離を見誤るな!?」
「「「了解!」」」
炎を纏い斬撃を放つ。合わせて魔法と魔法銃を放っていく。
そんなにスピードは速くないので対処はしやすかった。
傷を負ったのだが、そのまま突っ込んできた。
「ちっ! ファイアーウォール!」
三枚ほどの炎の壁を出し突進の勢いを落とす。
そうすることで、少しスピードが緩まった。
「足を狙え!」
横から二頭それぞれの足を狙って攻撃していく。
二頭のブッファローが膝をついた。
ここまでくれば後はとどめをさす。
首を落として魔石を取り出す。
少し疑問が頭を過ぎる。
(ブッファローってこんなに強かったっけなぁ。もう少しすんなり倒せていたような気がするが。そもそもあっちではDランクだし。そういえばマラスも……)
「刃さん!?」
呼ばれて初めて俺がボーッと立っていることに気が付いた。
「どうしたんですか? 行きますよ?」
「あっ? あぁ。悪い。今の乗る」
車に乗り込み出発する。
魔物が強くなってる?
そう言われれば最初のサルどもも強かったような。というか、魔力量が増えてんのかな?
窓の外から過ぎ去っていく街並みを見ていると森林が多くなっていることに気付かされる。
データとしては知っていた。ただ、実際に見るのは初めてだった。だから異世界化という現象が本当に起きていることだと改めて実感させられた。
魔力だって大気中に漂っているから魔力器官に魔力が溜まるわけだ。
元々の現代には魔力などなかったはず。一体どの時点から魔力があったのか。それありきの魔物だと思うから。
「刃さん? どうしたんですか? さっきからおかしいですよ?」
「あぁ。すまん。なんか魔物が異世界に居た時より強くなっている気がしてな。なんか嫌な予感がするんだ」
「この世界の方が強いんですか?」
「たぶんだがな。最初の斬撃によって始末できていたはずなんだ」
やはり何かが起きているのは間違いなさそうだ。
「そうなんですか。でも私達も魔法は使えますし、負けませんよ!」
その時、佳奈の言葉を思い出した。「まけてない」そうだよな。何を暗くなる必要があるんだ。強くなればいいんじゃないか。
「そうだな。鍛えながら行くか。強くなれそうだなぁ」
後ろからうめき声が聞こえてきた時は笑いが込み上げてきた。
「あっ! 那須高原だぁ!」
「遊びじゃないんだぞ?」
「わかってますよぉ」
口を尖らせる千紗。
車は順調に高速道路を駆けて行く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる