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第一章 秋田編
41.ジスパーダの生き方
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ゴタゴタがあった次の日。
少し頭が冷えてからやり過ぎてしまったなぁと反省していたのだ。
最後の休日だが、少し体を動かそうと訓練場に行くと多くの視線に居辛い感覚に陥る。
(どうしよう。居づらいな。帰ろうかな)
そそくさと訓練場を出ようとすると顔を腫らした隊員がやって来た。
「昨日は、大変申し訳ありませんでした! 自分に戦いを教えて頂けませんでしょうか!?」
やり返しに来たのかと思ったら違かったらしい。ホッと胸を撫で下ろす。
「あ、あぁ。俺で良ければ……」
「有難う御座います!」
了承の意を示すと次々と隊員がやって来て「自分もお願いします!」と言ってくる。この規模になると一人一人を相手にすることはできない。
「じゃあ、あっちで組手をしながら少し話そうか」
「有難う御座います!」
ゾロゾロと人を引き連れて訓練場の真ん中に行くと、最初に声を掛けてきた隊員のことを呼び、前に立たせた。
「これは、あくまで俺の戦い方だ。いいな? 皆同じ戦い方ということをない。もしも、強敵だとわかって戦う時、先手必勝だ。先に殺すための急所を攻撃する」
手を挙げた人がいる。
その人に発言を促す。
「最初だとなかなか攻撃が通らないと思います!」
「そうだな。ただ大振りな攻撃をしては意味が無い。せっかくなら初見で見破れない攻撃をした方がいい。例えばだが、皆は放出する魔法を撃てるか?」
すると、皆が首を振る。
それはそうだ。ジスパーダは放出系の魔法が使える者は遠距離魔法部隊に配属になるからだ。
「もし肉薄してきていきなり魔法を放たれたらどうする?」
「確実にダメージを与えられます! 防がれても無傷とはいきません!」
「そうだろ? 撃てなくてもフェイントをかけるんだ。例えば剣を投げる。その間に肉薄して、首、鼻、喉などの急所を狙って攻撃する」
その言葉に「なるほど」と納得する声が多い。
納得していないものが手を挙げた。
「それだと卑怯じゃないですか?」
「魔物相手に卑怯とかは関係ないんだろう? 奴らは人質をとり、こっちを翻弄した上で人質を殺すぞ? 魔物とはそういう生き物だ」
これを伝えると顔を顰めた。そうか、魔物というものの本質を知らないんだと気付かされた。
「皆は魔物が動物のようなものだと思っているのか? だとしたらその考えは捨てた方がいいぞ。奴らは知恵がある。狡猾で非道だ。可哀想という感情はない。卑怯という考えもない。勝つためならなんだってする。そういう狡猾さは持った方がいいな」
「「「はっ!」」」
昨日はなんだかダメなやつらばかりだと勝手に思ってしまったが、話してみればみんな素直な奴らばかりだった。
「魔法って撃てるようになりますか?」
そう質問してきた男が一人居た。
コツを教えてやることにした。
魔力を魔力器官から手に持っていき外に放出する。
その時に大切なのはどういった魔法を打ちたいかということを明確にイメージできているか。これに尽きる。
それさえできれば魔力を持っている魔人は、だれでも魔法は使えるようになるのだ。
魔法訓練場へ大所帯で移動すると魔法部隊の人間に驚かれた。何をするのか聞かれたので魔法を撃てるように教えていると言うと嘲笑われた。
そんなに簡単なものではないと。
一朝一夕でできるわけがないというではないか。
そう言われたらやってやろうという気になってくる。
「ここに魔力器官があるそれはわかるか?」
「はい! なんとなく!」
「身体強化もここから巡らせるだろ? それを手に集めるんだ。部分強化はできるか?」
それを問い掛けるとみんな首を振った。
部分強化はあまり知られていないからな。
「手のみ強化することで身体強化の数倍威力を発揮できるんだ。ただ、リスクもある。反撃されると生身に受けることになるから考えて使うことだ」
「「「はっ!」」」
いい返事だ。周りを気にせず俺の話を真剣に聞いてくれている。
「その手にためたものを外へ放出するんだ。例えば、魔力が外に出ながら火の玉に変わるイメージをして『ファイヤーボール』」
俺の手には火の玉が出現した。
「「「おぉー!」」」
「これを後は射出するイメージをして飛ばす」
シュッと音を鳴らして飛んで行った。
────ドゴォォォォンッ!
的に当たった魔法は、ファイヤーボールらしからぬ轟音を立てて爆発した。
魔法部隊の面々が目を見開き、口を開けてこちらを見ていた。
「な、なんだありゃあ!」
魔法部隊の方から声がするが、関係ない。みんなが理解したところでやってみる。
早くも風が出ている人がいた。
「おぉ! 出た!」
「皆も焦らずにやればできるはずだ。できれば戦術の幅が広がる。それは即ち、生きる確率が上がるということだ!」
そこまで話すと俺の話に耳をかたむけてくれている。
「俺達ジスパーダは人を魔物から守るために、生きて魔物を屠らなければならない! しかし、逃げたっていい! 生きていれば再戦するチャンスが必ず来る!」
周りを見ると魔法部隊の面々を話に聞き入っていた。
「それでもやはり死んでいまう者もいる。生きているものが、意志を継いで魔物を倒していくんだ! それが……ジスパーダだ」
「「「はっ!」」」
魔法を放てるようになった刀剣部隊員も居たため、これから戦力の増強になる事だろう。
俺は少し役に立てただろうか。
少し頭が冷えてからやり過ぎてしまったなぁと反省していたのだ。
最後の休日だが、少し体を動かそうと訓練場に行くと多くの視線に居辛い感覚に陥る。
(どうしよう。居づらいな。帰ろうかな)
そそくさと訓練場を出ようとすると顔を腫らした隊員がやって来た。
「昨日は、大変申し訳ありませんでした! 自分に戦いを教えて頂けませんでしょうか!?」
やり返しに来たのかと思ったら違かったらしい。ホッと胸を撫で下ろす。
「あ、あぁ。俺で良ければ……」
「有難う御座います!」
了承の意を示すと次々と隊員がやって来て「自分もお願いします!」と言ってくる。この規模になると一人一人を相手にすることはできない。
「じゃあ、あっちで組手をしながら少し話そうか」
「有難う御座います!」
ゾロゾロと人を引き連れて訓練場の真ん中に行くと、最初に声を掛けてきた隊員のことを呼び、前に立たせた。
「これは、あくまで俺の戦い方だ。いいな? 皆同じ戦い方ということをない。もしも、強敵だとわかって戦う時、先手必勝だ。先に殺すための急所を攻撃する」
手を挙げた人がいる。
その人に発言を促す。
「最初だとなかなか攻撃が通らないと思います!」
「そうだな。ただ大振りな攻撃をしては意味が無い。せっかくなら初見で見破れない攻撃をした方がいい。例えばだが、皆は放出する魔法を撃てるか?」
すると、皆が首を振る。
それはそうだ。ジスパーダは放出系の魔法が使える者は遠距離魔法部隊に配属になるからだ。
「もし肉薄してきていきなり魔法を放たれたらどうする?」
「確実にダメージを与えられます! 防がれても無傷とはいきません!」
「そうだろ? 撃てなくてもフェイントをかけるんだ。例えば剣を投げる。その間に肉薄して、首、鼻、喉などの急所を狙って攻撃する」
その言葉に「なるほど」と納得する声が多い。
納得していないものが手を挙げた。
「それだと卑怯じゃないですか?」
「魔物相手に卑怯とかは関係ないんだろう? 奴らは人質をとり、こっちを翻弄した上で人質を殺すぞ? 魔物とはそういう生き物だ」
これを伝えると顔を顰めた。そうか、魔物というものの本質を知らないんだと気付かされた。
「皆は魔物が動物のようなものだと思っているのか? だとしたらその考えは捨てた方がいいぞ。奴らは知恵がある。狡猾で非道だ。可哀想という感情はない。卑怯という考えもない。勝つためならなんだってする。そういう狡猾さは持った方がいいな」
「「「はっ!」」」
昨日はなんだかダメなやつらばかりだと勝手に思ってしまったが、話してみればみんな素直な奴らばかりだった。
「魔法って撃てるようになりますか?」
そう質問してきた男が一人居た。
コツを教えてやることにした。
魔力を魔力器官から手に持っていき外に放出する。
その時に大切なのはどういった魔法を打ちたいかということを明確にイメージできているか。これに尽きる。
それさえできれば魔力を持っている魔人は、だれでも魔法は使えるようになるのだ。
魔法訓練場へ大所帯で移動すると魔法部隊の人間に驚かれた。何をするのか聞かれたので魔法を撃てるように教えていると言うと嘲笑われた。
そんなに簡単なものではないと。
一朝一夕でできるわけがないというではないか。
そう言われたらやってやろうという気になってくる。
「ここに魔力器官があるそれはわかるか?」
「はい! なんとなく!」
「身体強化もここから巡らせるだろ? それを手に集めるんだ。部分強化はできるか?」
それを問い掛けるとみんな首を振った。
部分強化はあまり知られていないからな。
「手のみ強化することで身体強化の数倍威力を発揮できるんだ。ただ、リスクもある。反撃されると生身に受けることになるから考えて使うことだ」
「「「はっ!」」」
いい返事だ。周りを気にせず俺の話を真剣に聞いてくれている。
「その手にためたものを外へ放出するんだ。例えば、魔力が外に出ながら火の玉に変わるイメージをして『ファイヤーボール』」
俺の手には火の玉が出現した。
「「「おぉー!」」」
「これを後は射出するイメージをして飛ばす」
シュッと音を鳴らして飛んで行った。
────ドゴォォォォンッ!
的に当たった魔法は、ファイヤーボールらしからぬ轟音を立てて爆発した。
魔法部隊の面々が目を見開き、口を開けてこちらを見ていた。
「な、なんだありゃあ!」
魔法部隊の方から声がするが、関係ない。みんなが理解したところでやってみる。
早くも風が出ている人がいた。
「おぉ! 出た!」
「皆も焦らずにやればできるはずだ。できれば戦術の幅が広がる。それは即ち、生きる確率が上がるということだ!」
そこまで話すと俺の話に耳をかたむけてくれている。
「俺達ジスパーダは人を魔物から守るために、生きて魔物を屠らなければならない! しかし、逃げたっていい! 生きていれば再戦するチャンスが必ず来る!」
周りを見ると魔法部隊の面々を話に聞き入っていた。
「それでもやはり死んでいまう者もいる。生きているものが、意志を継いで魔物を倒していくんだ! それが……ジスパーダだ」
「「「はっ!」」」
魔法を放てるようになった刀剣部隊員も居たため、これから戦力の増強になる事だろう。
俺は少し役に立てただろうか。
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