胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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暴かれる秘密

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 翌朝、中条さんが朝食を作ってくれた。
 ハムとチーズを挟んだトーストに、スクランブルエッグ。レタスとトマトのサラダにコーヒー付き。まるで喫茶店のモーニングのメニューみたいだった。

「なんだか、喫茶店を任されてた時を思い出しますね。このメニュー、美味しそうですけど」
 俺は目の前に座った中条さんに言った。

「そうやろ。自分の家でこんなメニュー作るなんて、中々ないからな。ハルくんが居てくれるから作ったんや。オレひとりやったらコーヒーだけで済ませてるもん」

「ああ、…、俺の為にありがとうございます」
 ちょっと頭を下げて言えば、「いやいや、そんな感謝されんでも。前にハルくんかてオレの為に色々作ってくれたやん。その時のお返しやからさ」と笑う。

 笑みを浮かべた顔を見て俺も安心した。

「じゃあ、いただきます」
 そう言って、ゆっくりと朝食を味わう事にした。

 一口食べるたびに、身体の中から元気が沸いてくるようだった。
 普段なら、何気なく口にしているものかもしれない。でも、今朝はこれが俺にとっての活力になる気がした。
 
 俺が食べる姿を見ている中条さんは、最近のトマトの味についてとか、コーヒー豆が値上がりしている理由なんかを話してくれる。今はそういう会話がありがたかった。俺が不調に陥った理由には触れずにいてくれた。


 朝食を終えると、ふたりでソファに腰を下ろした。

 食事中はあんなに会話を楽しんでいたのに、ふと二人で並んでみれば、この先何を話したらいいのか分からなくなった。中条さんも、多分俺に気を使ってくれている。俺が自分から話さない限りは、倒れた理由も聞かずにいてくれるだろう。このまま何もなかったかのように、家に帰ってもいいのだろうか。

「あの、………」と、重い口調で第一声を発すれば、中条さんがこちらをじっと見つめてきた。
 俺は、このまま何も言わないわけにはいかないと思った。

 話したくなければ話さなくてもいいと言ってくれたが、もう既に弱みを見せている。
 驚かれる事は間違いないが、俺は事実を話してしまおうと決心した。俺自身の醜い部分も、中条さんにさらけ出してしまおうと思った。

「…、中条さんは俺のおじさんの事、どう思いますか?」

「え?徹さんの事?」

「はい」

「…そうやなぁ、オレからみたら、あの人は正真正銘のゲイやと思う。あの儚げなタイプは、同性の男を狂わせるタイプや。守ってやらなあかんって思わせるもんなぁ。オレがタチやったら、多分口説いてたな」

「そうですか」

「ハルくん、…徹さんの事好きなんやろ?見てたら分かるで」

「え?…」

 びっくりした。はっきりと言われて返す言葉がなかった。


「ハルくんの気持ちが徹さんに通じてるんかは分からんけど、憧れなんか、独占欲なんか…。でも、あの人はなびかんやろな。心の中で頑丈にガードしとるもんがありそう」

「……」

 俺は、ただただ中条さんの洞察力に恐れをなして、口ごもるしか出来なかった。




 
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