胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

文字の大きさ
189 / 226

暴かれる秘密

 翌朝、中条さんが朝食を作ってくれた。
 ハムとチーズを挟んだトーストに、スクランブルエッグ。レタスとトマトのサラダにコーヒー付き。まるで喫茶店のモーニングのメニューみたいだった。

「なんだか、喫茶店を任されてた時を思い出しますね。このメニュー、美味しそうですけど」
 俺は目の前に座った中条さんに言った。

「そうやろ。自分の家でこんなメニュー作るなんて、中々ないからな。ハルくんが居てくれるから作ったんや。オレひとりやったらコーヒーだけで済ませてるもん」

「ああ、…、俺の為にありがとうございます」
 ちょっと頭を下げて言えば、「いやいや、そんな感謝されんでも。前にハルくんかてオレの為に色々作ってくれたやん。その時のお返しやからさ」と笑う。

 笑みを浮かべた顔を見て俺も安心した。

「じゃあ、いただきます」
 そう言って、ゆっくりと朝食を味わう事にした。

 一口食べるたびに、身体の中から元気が沸いてくるようだった。
 普段なら、何気なく口にしているものかもしれない。でも、今朝はこれが俺にとっての活力になる気がした。
 
 俺が食べる姿を見ている中条さんは、最近のトマトの味についてとか、コーヒー豆が値上がりしている理由なんかを話してくれる。今はそういう会話がありがたかった。俺が不調に陥った理由には触れずにいてくれた。


 朝食を終えると、ふたりでソファに腰を下ろした。

 食事中はあんなに会話を楽しんでいたのに、ふと二人で並んでみれば、この先何を話したらいいのか分からなくなった。中条さんも、多分俺に気を使ってくれている。俺が自分から話さない限りは、倒れた理由も聞かずにいてくれるだろう。このまま何もなかったかのように、家に帰ってもいいのだろうか。

「あの、………」と、重い口調で第一声を発すれば、中条さんがこちらをじっと見つめてきた。
 俺は、このまま何も言わないわけにはいかないと思った。

 話したくなければ話さなくてもいいと言ってくれたが、もう既に弱みを見せている。
 驚かれる事は間違いないが、俺は事実を話してしまおうと決心した。俺自身の醜い部分も、中条さんにさらけ出してしまおうと思った。

「…、中条さんは俺のおじさんの事、どう思いますか?」

「え?徹さんの事?」

「はい」

「…そうやなぁ、オレからみたら、あの人は正真正銘のゲイやと思う。あの儚げなタイプは、同性の男を狂わせるタイプや。守ってやらなあかんって思わせるもんなぁ。オレがタチやったら、多分口説いてたな」

「そうですか」

「ハルくん、…徹さんの事好きなんやろ?見てたら分かるで」

「え?…」

 びっくりした。はっきりと言われて返す言葉がなかった。


「ハルくんの気持ちが徹さんに通じてるんかは分からんけど、憧れなんか、独占欲なんか…。でも、あの人はなびかんやろな。心の中で頑丈にガードしとるもんがありそう」

「……」

 俺は、ただただ中条さんの洞察力に恐れをなして、口ごもるしか出来なかった。




 
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)