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口実にできる?
しおりを挟むゆっくりしてて、と云ったのに、結局は手伝ってもらってカレーはなんとか出来上がった。
ふたりで食べるには量が多かったが、冷凍しておけば又食べられるし、トンちゃんも助かるだろう。
「じゃあ、こっちに運ぼうか。」と云って鍋ごとテーブルに持ってくると、お皿にご飯を盛ってくれる。
俺は大盛りのカレーを目の前に、腹の虫がぐぅ~っと鳴るのを堪えると、トンちゃんが席に座るのを待つ。
目の前に座ったトンちゃんの顔をまじまじと見ると、少しニコリと微笑まれて胸がキュンッとなった。
「じゃあ、頂きまーす。」
「いただきまーす」
手を合わせるとスプーンで掬い、山盛りになったご飯とカレーを口に放り込む。
うまーっ、と心の中で叫んだ。
口に頬張ったせいで言葉は出せないが、俺の嬉しそうな顔を見てトンちゃんも「美味いな」と云った。
うんうん、と首を縦に振り、俺も全身で美味さを表す。トンちゃんと二人で作ったからなのか、今回のカレーは過去一最高に美味く出来たと思う。大阪に来て初めて味わった幸せの様な気もした。
「コレ、最高じゃん?俺もう一杯は食えるな。トンちゃんもじゃんじゃん食べなよ。」
そう云うと、後はもうどんどん口に放り込む。
「やっぱりハルキは若いよなー、流石にオレは大盛り二杯は無理。最近年のせいか食が細くなってるんだ。」
俺の顔をにこやかに見ながらトンちゃんは云う。
トンちゃんだってまだまだ若いのに。と思いながら、それでも12歳の違いはそういう所に出てくるのかと思ってしまった。
「そういえば前に見た時より痩せた?東京に居た頃よりは細くなったよね?」
「うん、.......でもまあ、2キロぐらいだけどね。やっぱり姉さんに感謝しなきゃって思ったよ。晩ご飯って重要だ。ひとりだと、どうしても手軽な物で済ましてしまうから.....。」
苦笑いをしながら云うトンちゃんの顔を見て、俺は確信した。
----夕飯を作りに来よう
そうすれば週に2度くらいは顔が見れる。
「トンちゃん、俺ご飯作りに来るよ。まだバイト決めてないし。」
「........え?....それは、........嬉しいけど、でもハルキには勉強を頑張ってほしいし。それに、学生生活も楽しんでほしい。友達とか出来た?」
「え?.....友達は.......まあ、ひとりは。ぁ、あと中条さんって人。あのオムライスの店のバイトしてた。」
「ああ、そういえば同じ大学って云ってたね。出会ったんだ?」
「うん、......まあね。」
吉村から聞いた事をトンちゃんに話そうか迷ったが、そこは噂話みたいなもので。変に印象を悪くするのも嫌だったので黙っていた。
「これからどんどん友人も増えるよ。祐斗くんみたいな子が仲良くなってくれたらいいね。」
「...........、祐斗は、......アイツは特別だから。」
トンちゃんの口から祐斗の名前が出て、ちょっと複雑な気分になる。
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