胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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久しぶりの女子

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 大学生の日常は、学業とバイトと、俺の場合はほんの少しの友人との遊び。
入学以来、仲良くなった吉村と、吉村の友人だった田中、高野というちょっと軽いノリのふたりが遊び仲間となった。バイトの休みの日は、大阪の街をブラブラとしながら吉村たちのナンパに付き合う。

 高校生の頃は、ほとんど女子と関わる事もなく、もっぱら祐斗と絡んでばかり。
大学生になって初めて女子をナンパする事に関わった。が、どうやら俺は女子受けがいいらしく、吉村や田中に恨まれるくらいモテてしまった。

「本宮くんのバイト先に行ってもいい?お酒飲めなくてもいいんでしょ?」
 ナンパした一人の女性、名前はアキちゃんというが、彼女は俺の顔を食い入るように見つめて云って来る。
「いいけど、......俺は厨房に入ってるからさ、店には中条さんていう先輩がいるだけだよ」
 困りながらそう云うと、聞いていた吉村が「えっ!あの中条さん?」と声を荒げる。
 吉村が驚くのも無理はない。中条さんの噂を最初に教えてくれたのは吉村だから。

「うん、まあ、ちょっと変わった人ではあるけどさ。でも別に乱暴って訳じゃないし、殴ったのにも理由があって............」
「理由って?!」
 吉村に訊かれて戸惑った。中条さんが男と付き合っていた事実を話すのはマズイ。本人が話す分にはいいけれど、俺がばらすのはちょっとな。

「とにかく、バイト先の先輩としては優しくていい人だよ」
 そう云って座っていたテーブルを離れると、追加の注文をする為にカウンターに向かった。
 直ぐ後に「アッ、私も」と云いながら付いてくるアキちゃんの声がする。それを確認する様に振り返ると、彼女はニコリと微笑みかけた。センター分けのロングヘアが軽く揺れて、一瞬甘い空気が流れた様な気がした。

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