100 / 205
会いたい
しおりを挟む
ナンパした女の子たちと連れだって帰って行った吉村たち。
俺は課題があるからと、カフェで別れるとひとりアパートに向かったが、アキちゃんは最後まで俺の横で話しを続けたそうにしていた。始終笑顔を絶やさずに、俺に向ける眼差しが普通よりも熱い事には気づいている。
そんな感覚は新鮮で、確かに中学生の最初の頃はこんな視線を浴びていた気がする。が、それも俺にホモ疑惑が浮上した途端消え去った。
異性から向けられる視線に優越感を抱かない訳じゃないが、俺の恋愛対象が男の、しかも戸籍上は叔父にあたるトンちゃんである以上、女子からの誘いは困るだけだった。吉村たちに知れたら多分遠巻きにされるだろうな、と思う。遠巻きくらいならいいが、誹謗中傷の渦の中に閉じ込められるかもしれない。
そんな事を漠然と考えながら、冷蔵庫を漁るとカレー用の肉を取り出した。
外食もコンビニ弁当もそろそろ飽きてきて、料理をする事が苦ではなくなった俺は、最近自炊をしている。
それに、カレーとかシチューなんかを多めに作ると、それを口実にトンちゃんの家に行けるという下心もあった。まあ、メールを入れても半分は帰宅が遅くなるという事で会えないが。
スパイシーな香りを全身に浴びながら、時計を確認すれば午後7時40分。
いつもならまだ会社に居るか帰宅途中の筈。一応携帯を取り出すとメールを送ってみた。
『今日、カレーを作ったからそっちに持って行きたいけど。何時に帰って来る?』
簡単なメールを送り、期待半分で鍋からタッパーにカレーを移していると、珍しく直ぐに返信が来た。
『今帰って来たところ』
ハッとなって手を止めると直ぐに『今から行くから待ってて。何も食べてないよね』と送る。
トンちゃんからは、インスタントラーメンでも食べようと思っていたと返事が来て、おもわず小躍りしながら「よしっ」とガッツポーズをした。
それぞれのタッパーにカレーと炊いたご飯を分けて詰めると、急いでトートバッグに入れて家を飛び出す。
家が近くて良かったと、この時つくづく思いながら走ってトンちゃんのマンションに向かった。
好きな人に会うのがこんなに心躍るものなのだと、俺の中の冷静な何かがむず痒くさせるが、そんな事は直ぐに忘れるくらい足は軽かった。
俺は課題があるからと、カフェで別れるとひとりアパートに向かったが、アキちゃんは最後まで俺の横で話しを続けたそうにしていた。始終笑顔を絶やさずに、俺に向ける眼差しが普通よりも熱い事には気づいている。
そんな感覚は新鮮で、確かに中学生の最初の頃はこんな視線を浴びていた気がする。が、それも俺にホモ疑惑が浮上した途端消え去った。
異性から向けられる視線に優越感を抱かない訳じゃないが、俺の恋愛対象が男の、しかも戸籍上は叔父にあたるトンちゃんである以上、女子からの誘いは困るだけだった。吉村たちに知れたら多分遠巻きにされるだろうな、と思う。遠巻きくらいならいいが、誹謗中傷の渦の中に閉じ込められるかもしれない。
そんな事を漠然と考えながら、冷蔵庫を漁るとカレー用の肉を取り出した。
外食もコンビニ弁当もそろそろ飽きてきて、料理をする事が苦ではなくなった俺は、最近自炊をしている。
それに、カレーとかシチューなんかを多めに作ると、それを口実にトンちゃんの家に行けるという下心もあった。まあ、メールを入れても半分は帰宅が遅くなるという事で会えないが。
スパイシーな香りを全身に浴びながら、時計を確認すれば午後7時40分。
いつもならまだ会社に居るか帰宅途中の筈。一応携帯を取り出すとメールを送ってみた。
『今日、カレーを作ったからそっちに持って行きたいけど。何時に帰って来る?』
簡単なメールを送り、期待半分で鍋からタッパーにカレーを移していると、珍しく直ぐに返信が来た。
『今帰って来たところ』
ハッとなって手を止めると直ぐに『今から行くから待ってて。何も食べてないよね』と送る。
トンちゃんからは、インスタントラーメンでも食べようと思っていたと返事が来て、おもわず小躍りしながら「よしっ」とガッツポーズをした。
それぞれのタッパーにカレーと炊いたご飯を分けて詰めると、急いでトートバッグに入れて家を飛び出す。
家が近くて良かったと、この時つくづく思いながら走ってトンちゃんのマンションに向かった。
好きな人に会うのがこんなに心躍るものなのだと、俺の中の冷静な何かがむず痒くさせるが、そんな事は直ぐに忘れるくらい足は軽かった。
12
あなたにおすすめの小説
Innocent Lies
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』のリーダーを務める内海奏多。
"どんな時でも明るく笑顔"がモットーだが、最近はグループ活動とドラマ出演の仕事が被り、多忙を極めていた。
ひょんな事から、ドラマで共演した女性アイドルを家に送り届ける羽目になった奏多。
その現場を週刊誌にスクープされてしまい、ネットは大炎上。
公式に否定しても炎上は止まらず、不安を抱えたまま生放送の音楽番組に出演する事に。
すると、カメラの回っている前でメンバーの櫻井悠貴が突然、『奏多と付き合ってるのは俺や』と宣言し、キスしてきて…。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる