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34 アルミ箔のオンナ 16
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2件目の店へ行こうと誘われるが、神谷くんの想い人からの電話で呆気なくお開きになると、俺はひとり電車に乗る為駅へと向かった。
心の中で神谷くんを羨ましく思う。
まだ、恵と恋人になる前は、俺だって誘いの電話やメールに心躍らせたものだ。画面の恵の文字を指でなぞったりして、出るまで楽しんだ。
……はぁぁ…
思い出は時に残酷。
あの日が薔薇色であればある程、今この現実が悲惨に思えてくる。そして、そこから抜け出す為に、もがけば疲れはピークに達し。
たった一日で、俺の寿命は10年縮んだ様な気がする。
ひとりの部屋に戻ると、恵が出張で居ない日の事を思い出す。
たまの一人暮らしに、少しだけ心が騒いだ。
ビデオを観たり酒を飲んだりして、独りを満喫した事もあったな……
いったい、恵はいつになったら戻る気になるんだろう。野嶋さんの事でこんなに歪んでしまうなんて、思ってもいなかった。
むしろ、俺の方がヤキモチを妬いていたはずなのに。
俺と恵が女性の事で険悪なムードになるなんて想像できなかった。もしなるとしても、それはノーマルだった恵にオンナの影が見えた時。
そう、この前の様に帰宅の遅い日が続いた時は、俺も疑った。
呼び出して問い詰めたくなる程に……。
ふて寝をする様にベッドに入った俺は、モヤモヤしたまま朝を迎える。
いつもの様に会社へ着くと、エレベーターの前で恵と会うんじゃないかと待ってみるが、一向に来る様子は無く。
仕方なしに自分のフロア迄上がって行った。
「あ、おはようございます。ちょっと問題がありまして…」
デスクに向かう俺を見つけると声を掛けられて、同じ部署の後輩の顔を見た。
「山下、おはよう。…どうした?ヤな話か?」
朝っぱらから青ざめた顔の後輩に訊ねると、カレは「はぁぁぁ一」と深い溜息をついた。
「なんだよ、なんかしでかした?」
取り敢えず机の上に鞄を置くと訊いてみた。
「名古屋の案件、反故になりました!」
「………あ?」
この間出張で行った、あの会社が?
どういう事だ?俺の頭の中は一瞬で真っ白になってしまった。
心の中で神谷くんを羨ましく思う。
まだ、恵と恋人になる前は、俺だって誘いの電話やメールに心躍らせたものだ。画面の恵の文字を指でなぞったりして、出るまで楽しんだ。
……はぁぁ…
思い出は時に残酷。
あの日が薔薇色であればある程、今この現実が悲惨に思えてくる。そして、そこから抜け出す為に、もがけば疲れはピークに達し。
たった一日で、俺の寿命は10年縮んだ様な気がする。
ひとりの部屋に戻ると、恵が出張で居ない日の事を思い出す。
たまの一人暮らしに、少しだけ心が騒いだ。
ビデオを観たり酒を飲んだりして、独りを満喫した事もあったな……
いったい、恵はいつになったら戻る気になるんだろう。野嶋さんの事でこんなに歪んでしまうなんて、思ってもいなかった。
むしろ、俺の方がヤキモチを妬いていたはずなのに。
俺と恵が女性の事で険悪なムードになるなんて想像できなかった。もしなるとしても、それはノーマルだった恵にオンナの影が見えた時。
そう、この前の様に帰宅の遅い日が続いた時は、俺も疑った。
呼び出して問い詰めたくなる程に……。
ふて寝をする様にベッドに入った俺は、モヤモヤしたまま朝を迎える。
いつもの様に会社へ着くと、エレベーターの前で恵と会うんじゃないかと待ってみるが、一向に来る様子は無く。
仕方なしに自分のフロア迄上がって行った。
「あ、おはようございます。ちょっと問題がありまして…」
デスクに向かう俺を見つけると声を掛けられて、同じ部署の後輩の顔を見た。
「山下、おはよう。…どうした?ヤな話か?」
朝っぱらから青ざめた顔の後輩に訊ねると、カレは「はぁぁぁ一」と深い溜息をついた。
「なんだよ、なんかしでかした?」
取り敢えず机の上に鞄を置くと訊いてみた。
「名古屋の案件、反故になりました!」
「………あ?」
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どういう事だ?俺の頭の中は一瞬で真っ白になってしまった。
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