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44 何度でも引き合うよ 3

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 いったい誰が来たというのだろう.........

少し首をひねってみるが見当もつかない。俺はそのままパソコンの中から資料を開くと仕事を始めた。
が、暫くしてふと森田さんの顔が頭に浮かぶと、ハッとなってパソコンの画面から目を離す。

前に一度、蕎麦屋で恵と昼飯を食べている時に出くわして相席になった事があった。
会社の人間以外で森田さんが親しそうに話すって云ったら.....、ひょっとして恵が俺を訊ねてきたのか?

まさかな、.......。

気になりだしたらどうしても訊いてみたくなって、俺は資料を閉じるとそのまま隣の部署の森田さんの元へと向かった。何と言って聞き出そうかと思いながら、焦る気持ちをなんとか落ち着かせて彼の席の辺りを確かめる。
が、丁度席を外しているのか見当たらなかった。

「あの、森田さんは?」
隣の席に座る社員に訊ねる。

「え?ああ、.....多分上のフロアの会社に。何か借りるものがあるとか云って....。伝言ありますか?戻ったら顔出す様に云いますけど。」

「ああ、ありがとう。いいや、また来るから。すいません、お邪魔しました。」

「いいえ、.....。」

慌ててきたのに、ちょっと拍子抜けしてしまう。
しかし、上のフロアの会社に行ったと訊いて余計に恵との接点を確信した。外部の人間で俺を訊ねてくるとして、まず直接会社に来る人はいない。何らかのアポイントを取ってから来るのが普通だし、森田さんと共通の顔見知りと云ったら恵の事しか頭に浮かばなかった。

どうしよう、恵はメールでも電話でもなく、直接俺に何か話したいと思ってきたんだろうか。
しかも朝いちで。いつもなら恵の方が出社時間は遅いはず。よほど大事な話なのか............。

結局ひとりで悶々としながら午前の休憩時間を待った。
森田さんはタバコ休憩をする人。きっとフロアに設けられている喫煙ルームに居るのだろうと、タバコを吸わない俺が喫煙ルームに顔を出す。

「あ、山代くん。」
「....どうも、.....今朝、俺の所に来てくれました?」

森田さんはタバコに火をつけた所で、丁度顔を覗かせた俺と目が合って声をかけてくれた。
今朝の事を訊いてみると、「そうそう、行ったんだけど」と云いながら森田さんは煙草の煙をふぅーっと上向きに吹き上げた。

「旭日化学の中谷さん。カレがキミを待っててさ、事務所の前に居たものだから席に案内したんだ。けど、今朝は遅かったんだね、まだ出社していなくて少し話してた。」

爽やかな笑顔で云われると、平常心を保とうとしている俺の顔が恵の名前を聞いた途端ニヤケていないかとグッと息を呑み込んだ。

「そうですか、すみませんでした。......で?」

「......あぁ、仕方ないから前に行ったことのある営業先の話になって、担当が一緒でさぁ。」

「.....はい、......?」

なんとなく話が長くなりそうな予感。恵が何の用事で俺を訊ねて来たのかを訊きたいってのに......。



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