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15 弱まる磁力 1-15

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  バーで呑むつもりが、どういう訳か俺の泊まるホテルでの酒盛りになって。
神谷くんと二人、コンビニで500ミリリットルの缶ビールとスモークチーズを購入すると、俺の部屋へとやってきた。

やっぱりビジネスホテルの部屋は狭いですね。

腰掛けたベッドの上で、部屋をぐるりと見て言う。そんな当たり前の事、俺は気にも留めていなかった。

「こんなもんだろ?シングルルームなんて。……神谷くん、何処に泊まってんの?」

「あ、オレはちょっと離れたトコで…ロイヤルガーデンホテル。」
しれっとした顔で言ってくれるが、そこはリゾートホテルだ。

「……前から気になってたんだけど、お金持ちの坊ちゃんかなにか?着てるスーツも高級そうだし、サラリーマンとは思えないんだけど。」
知り合った時にも感じていた。この神谷くんという男、外資系のサラリーマンと言ったが、それだけじゃない。きっとパトロンでもいるんだろう。

「やだな~、今回は急だったんで部屋が取れなくて、そこしか空いてなかったんで。それに、このスーツは兄貴のおさがりですよ。オレの給料幾らか言いましょうか?」
そう言って笑うが、なんだか怪しい。

「リッチな兄貴がいるって事か。」

「まあ、どうでしょう。」

ビールに口をつけて微笑む姿は、悔しいけどイケてる。だから俺も寝ちゃった訳だけど。

「そういや、狙ってる人、どんな感じ?可愛い系?」
俺は、備え付けの椅子に座ると片手にビールを持ち上げて訊く。そこは興味のあるところ。
以前訊いた話では、セフレばかりでちゃんと付き合う相手はいないって言うから。

「それが……、迷い犬のようで。」

「はあ?迷い犬!?…なんだ、そりゃ!」
思わず声が大きくなる。仔犬の様に可愛い、とかなら分かる気もするが…

「ちょっと、訳ありで…。でも、生真面目で心の綺麗な人。だから、放っておけない。」
神谷くんは、ちょっと伏し目がちになると、口元に笑みを浮かべる。その顔は、益々イケてる男の顔で。俺までクラっとなりそう。

「あ、そういえば自分はどうなの、その後。ノーマルなカレシをゲットして、調教中ですか。」
噴き出すように笑いたい所をなんとか堪えて言う神谷くん。調教中って………。

「…何の話だよ。ははは、」

俺は答えをはぐらかした。



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