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カラッポ.....だゼ
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世間一般的な夏休みといえば、楽しい計画があったり、バイトに励む学生が多い中、俺はどんよりとしたもので、アタルにメールをしないまま夏休みも三分の二が過ぎてしまった。
あれから、アタルの言葉を訊く気にはなれなくて、携帯も放置したままだ。なんとか、コンビニのバイトには毎日行っていたけれど、浮き足立った学生やカップルを目にする度、腐った自分の感情を隠し切れなくなる。何もかもに嫌気がさすとバイトも辞めたくなるが、働いて気が紛れる事もあるし、お金も必要だ。
去年の今頃は、二人で目指す大学を決めて、参考書なんかを買いに行った。あのころは、同じ道を目指しているものと思っていた。俺が絵美ちゃんと付き合いだしたのも今ぐらい。
呆気なく振られて終わったと思っていたのに...
「勇人は夏の間何処にも行かないの?」
オフクロに聞かれて返事に困った。本当ならアタルのアパートに顔を出すところ。それが今年は無理そうで。
「何処も行かない。」
一言呟くと、テーブルの上の皿を片付けて2階へあがろうとした。
「あ、そういえば勇人のクラスにいた背の高い女の子。」
そう言われて直ぐ頭に浮かんだのは、菊地優香。
「なに?」
「あの娘、昨日の夜スーパーで見かけて、お母さんと一緒だったから話したのよ。綺麗になってたわぁ、モデルさんかと思っちゃった。」
ああ、やっぱりか。東京に行って、益々垢抜けてそんな風になるだろうな、とは思った。
「聞いたけど、あんたと仲良しの水沢くん、大変な目にあったらしいわね…。勇人、話してくれないからお母さん知らなくてビックリしたわよ。だから夏休みも出会えなかったのね!?」
オフクロの言ってる事が理解出来ない。
「菊地、なんだって?」
探る様に聞いてみた。
「ぼんやり歩いてて、歩道橋の階段から落ちたんでしょ!?まだ入院中って聞いたけど…。打ちどころ悪かったのかしらね…。」
「...」
心臓が凍るかと思った。
そんな事、誰も教えてくれてない。
「チョット出掛けてくる」
オフクロにそう言うと、出来るだけ静かに携帯と財布を持って玄関を出た。
ガクガク...
自転車に乗ろうと跨った途端、俺の足元は砕けそうな程震えてしまった。
...アタルに会いたい
一瞬で不信感は消え去って、新たな感情に押し潰されそうになる。
とにかく現状を知りたくて、菊地の電話番号を知る奴に掛けようと思ったら...
放置していた携帯電話の充電はとうに切れたまま。
「クソッ!!!」
携帯を握り締めると、もう一度家に戻って卒業名簿をめくった。
仕方なく、菊地の自宅へと電話を入れる。
あれから、アタルの言葉を訊く気にはなれなくて、携帯も放置したままだ。なんとか、コンビニのバイトには毎日行っていたけれど、浮き足立った学生やカップルを目にする度、腐った自分の感情を隠し切れなくなる。何もかもに嫌気がさすとバイトも辞めたくなるが、働いて気が紛れる事もあるし、お金も必要だ。
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「勇人は夏の間何処にも行かないの?」
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オフクロの言ってる事が理解出来ない。
「菊地、なんだって?」
探る様に聞いてみた。
「ぼんやり歩いてて、歩道橋の階段から落ちたんでしょ!?まだ入院中って聞いたけど…。打ちどころ悪かったのかしらね…。」
「...」
心臓が凍るかと思った。
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「チョット出掛けてくる」
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ガクガク...
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とにかく現状を知りたくて、菊地の電話番号を知る奴に掛けようと思ったら...
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