変な人だけど、面白い

饂飩

文字の大きさ
5 / 5

あると様と下僕

しおりを挟む
「どうぞ、こちらが俺達の家です。」

「お、お邪魔しま~す…」

晴人くんに促されるがままに、おずおずと部屋に入る。

「やっぱりここが1番落ち着くのじゃ~」

「…あるとはヒキニートだから家がお似合いナノ…」

「な、なんじゃと!?わわ、わしがヒキニートな訳ないのじゃ!?」

「…うるさいノ。静かにしろナノ。」

「はぃはぁ~い♡喧嘩しちゃ駄目よぉ~♡ぁるとちゃんにるぅか♡」

「…ごめんなさいナノ。お姉様。」

「むっ…兄には従順なのに…」

楽しそうに喧嘩している様子を見ると、とても仲がいいんだなぁと思いほのぼのしていると、

「全く…うるさいわね。自分の家じゃないのよ。」

ぶつぶつ言いながら、美空ちゃんは私にお茶を出してくれる。

「あら、ありがとう…気が利くのね…」

「何よその反応。」

少し驚いた表情をする私が気に食わないのか眉間にしわを寄せる。

「ううん、気を悪くさせたのならごめんなさいね。」

「い、いいのよ…別に…」

素直に謝ると一瞬目を見開き、気まずそうにそっぽを向いてしまった。
不器用ないい子だったと気づき、会ってよかったと思う。

ふと、晴人くんの膝に腰掛けていたのあちゃんと目が合う。

手がすっぽり隠れた世でいう萌え袖をしたその子は袖を顎に持ってきて私を見つめながら不思議そうな顔でこてんっと顔を傾げる。

あ、あざとい…っ!

私はのあちゃんと全然話せてなかったなと思い、手で招いた。

のあちゃんはキョトンとした顔をした後、理解したのか晴人くんに何か話すと膝から下ろしてもらい、足を引きずりながら私の方に来てくれた。

「ごめんなさい…!足を怪我していたの…!?私の方から行けばよかったね…」

のあちゃんの歩く様子をみて焦った私がそう言うと、

「…だい、じょうぶ…みそらにりはびり、しなさいって言われたから…」

と、カタコトながら必死にフォローしてくれる。

この子も優しいいい子だわ、と感動した私は申し訳なさと感謝の気持ちを込めて頭を撫でた。
すると、のあちゃんは少しくすぐったそうにしながら困った様に笑った。

「のあちゃんは日本語苦手なの?」

「…ちょっとだけ…」

「あら、そうなの…これからいっぱい喋れるようになるといいわね。」

私がそう言うと何度も首を縦に振り、小さい声でよし、と呟いた。

のあちゃんの顔立ちはとても幼い。
目も大きくずっと見つめていたら吸い込まれそうだ。鼻も高くて唇も薄い。
髪もつやつやで睫毛も長くてくるんとしている。

「お人形さんみたい…って思ったんじゃないですか?」

背後からぬっと出てきた真っ黒な服を身にまとった女の子は先程までるぅかちゃんと言い争っていたあるとちゃんだった。

「本当にそう思ったわ……って口調が違う…?」

あるとちゃんの言葉にうんうんと頷きながら、口調に違和感を覚えた。

「さっきるぅかちゃんと話してた時と全然雰囲気違うけど私に気を遣わなくてもいいのよ?」

「い、いえ…そういう訳には…」

壁を作られているのかも、と不安になる私。

すると、私の前に座っていたのあちゃんが手を挙げ

「…このひと、あるとさまのしもべ…になる……」

とあるとちゃんに告げた。

「え?それってどういう…」

私の言葉はのあちゃんの袖により遮られた。

あるとちゃんの方を見てみるとギラっと目付きが変化し、勢いよく立ち上がると細い腕を組んだ。

「そうじゃったのか!!下僕しもべよ!!」

「しもべ……??」

「なりたかったのなら、そうはっきり言えば善いものの!!!」

あるとちゃんの急変に唖然としていると、のあちゃんが私の耳元で

「…なかよくなる、ためには、しもべ、にならなきゃ、いけないから、はなし、をあわせてください……」

と囁く。

なるほどそういう設定ね、と承知し、

「えぇ。挨拶が遅れてしまったわね。あると様?」

と言った。

あるとちゃ…あると様は満足そうな顔をすると私に手を差し伸べた。

「?」

「貴方は第156番目の下僕しもべじゃ!宜しくなぁ!」


と満面の笑みで私の手を小さい両手で包み込んだ。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...