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序章-4
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リヒトさんが被害者の確認、私が部屋の調査を始めてから、数十分。
リヒトさんが真剣な表情で被害者を調べているのを横目に、私は発見した日記をめくっています。筆まめな人だったのでしょう。ほぼ毎日、その日の出来事を書いています。
関係ありそうな記述といえば、一週間前。村長の息子が、珍しい本だと、分厚い、難しそうな本を持って帰ってきたそうです。ほぼ同時期、物忘れが激しくなってきたと言う記述もあります。もう歳か、引退するべきかもな、なんて、ご夫婦で語り合っていたそうです。
さて、リヒトさんの方はどうでしょう。顔を上げると、ほぼ同じタイミングで彼も顔を上げ、思いがけず目が合ってしまいました。リヒトさんが安心したように笑っています。何があなたを安心させたのか知りませんが、そのほにゃんとした笑顔、とっても可愛いですよ。
「えっと、マリウス。何か分かった?」
「ええ、まあ。そちらはどうですか?」
「ええとね。たぶん、眠ってからはそんなに経ってないよ。一日くらいかな。命に関わることもないと思う。このまま眠り続けたら、分からないけど」
「やはり、魔法ですか?」
「うん。この人たちから魔力の気配がするし、魔法だと思う」
「さすがですね」
魔法関係は全く分からない私からすると、そういう事がわかるというのは羨ましいです。せっかく転生したなら、私も魔法を使ってみたかったのですが、残念です。
ともかく、この事件は魔法災厄、ということで間違いなさそうですね。今のところ、私の知っている展開と大きな差はなさそうです。
「マリウスの方は?」
「そうですね。この村の村長の息子が、珍しい本を持って帰ってきたそうです。一週間前ですね」
「そうなんだ。その本が魔道書?」
「可能性は高いかと。それから……本を持って帰ってきたのと同じくらいの時期に、物忘れが激しくなった、と書かれてるんですよね。関係あるかは分かりませんが……」
「物忘れ?」
「はい。今回の魔法災厄は眠ってしまうことだと思ってたんですが。違うのでしょうか」
「うーん、見た感じ、そっちに変な部分はなかったと思うけど。でも、俺医療方面はちゃんと学んだわけじゃないからなあ」
「そうですか。まあ、それは回収してからでいいですね」
これまでも、とりあえず回収してからどんな魔道書、魔法具か確認するなんてのはよくありましたからね。そもそも数日の調査でそんな細かいところまで分かるはずがないんですよ。
「じゃあ、村長の家、だっけ。行ってみる?」
「そうですね。増援を呼ぶかを判断するためにも、行ってみましょう」
ゲームでは、確かこのまま回収する流れだったでしょうか。チュートリアルですし、何故か攻略対象も出てこない章ですからね。あっさり終わったはずです。プレイ時間は一時間もかからなかったような。二週目からはほぼスキップでしたし。
早くここを終わらせないと、リヒトさんと攻略対象の顔合わせすら見られません。さて、さっさと終わらせてしまいましょう。
村長の家は、村の奥にある、大きな屋敷でした。他の家の二倍は大きいです。ここまでの案内はリヒトさんです。
「何となく、こっちの気がする!」
と引っ張っていった先に、本当にありました。何となくって言ってますけど、魔力たどってるんじゃないですかね。無意識なんでしょうか……?
「開けますね」
「う、うん。気をつけて」
剣を構えて、扉を開けます。……何事もない、ように思いますが。リヒトさんが顔をしかめたのが気になります。
「うわ、何これ。マリウス、これ大丈夫?」
「と言われても、私は特に何も感じませんが」
「あ、そっか。マリウスは分からないんだっけ。ここ、すっごく魔力が濃いよ。さっきの宿も結構濃かったけど、ここはもっと濃い。ここ、絶対何かあるよ」
「なるほど。ここに魔道書があるのは間違いなさそうですね。気をつけていきましょう」
「う、うん!」
「ちなみに、その魔力の中心ってどこか分かります? こっちの方がより魔力が濃いとか」
「んーとね、下! 下が濃い。地下があるのかな?」
「探してみましょう」
村長宅だけあって、この屋敷は結構広いです。単独行動は危険なので、二人で地下へ行く方法を探して屋敷内を歩くことになります。……さて、地下の階段、どこにありましたかね。一人称視点だとさっぱりです。
「おっきいお屋敷だねえ。王都の家よりも大きいよね」
「そりゃ、仮にも村長の家ですからね。一般市民の家よりは大きいでしょう」
「そっかー。大きい家に住めるっていいよね」
「その分責任も伴いますけどね」
雑談をしながら、屋敷を巡ります。まるで冒険です。これだけ大きな家なら村長とその息子だけでなく、使用人もいそうなものなんですが、誰ともすれ違いません。皆さん、眠っていらっしゃるんでしょう。光の加護を持つリヒトさんが「すっごく濃い」というくらいの魔力のただ中にあって、魔法使いでもない一般人が抗えるとも思えませんし。
「あ! やっと見つけた!」
廊下にはなさそうだと、それらしい扉を片っ端から開け始めて五つ目。ようやく地下へ続く階段を発見しました。
「行こう、マリウス!」
「気をつけて下さいね。宿主か、もしかしたら本体が登場するかもしれません」
「宿主? 本体?」
「ああ……そうでした。説明していませんでしたね」
宿主とは、魔法災厄を起こすくらい強力な魔道書や魔法具の使用者のことです。たいていは、力を使うより力に振り回されているので、寄生されている、という意味でそう呼ばれているらしいですね。
本体は、宿主のいる魔道書・魔法具のことです。要は、回収対象のことですね。
「んー、つまり、本体を回収して宿主さんを助ければいいんだよね!」
「そういうことです」
素直でよろしい。お兄さんは嬉しいです。同い年ですけど。
そういう素直な態度は喜ばれますよ。特にひねくれた性格の人とか、ツンデレの人とかに。喜ばれるというか、圧されているのかもしれませんけどね。
「じゃ、宿主さんを助けに行こう、マリウス!」
「本体には気をつけて下さいね」
「うん!」
ここまで来れば、あとは魔道書を回収するだけ、です。リヒトさんの初任務完了まであと少し。私は最後まで見守りますからね!
リヒトさんが真剣な表情で被害者を調べているのを横目に、私は発見した日記をめくっています。筆まめな人だったのでしょう。ほぼ毎日、その日の出来事を書いています。
関係ありそうな記述といえば、一週間前。村長の息子が、珍しい本だと、分厚い、難しそうな本を持って帰ってきたそうです。ほぼ同時期、物忘れが激しくなってきたと言う記述もあります。もう歳か、引退するべきかもな、なんて、ご夫婦で語り合っていたそうです。
さて、リヒトさんの方はどうでしょう。顔を上げると、ほぼ同じタイミングで彼も顔を上げ、思いがけず目が合ってしまいました。リヒトさんが安心したように笑っています。何があなたを安心させたのか知りませんが、そのほにゃんとした笑顔、とっても可愛いですよ。
「えっと、マリウス。何か分かった?」
「ええ、まあ。そちらはどうですか?」
「ええとね。たぶん、眠ってからはそんなに経ってないよ。一日くらいかな。命に関わることもないと思う。このまま眠り続けたら、分からないけど」
「やはり、魔法ですか?」
「うん。この人たちから魔力の気配がするし、魔法だと思う」
「さすがですね」
魔法関係は全く分からない私からすると、そういう事がわかるというのは羨ましいです。せっかく転生したなら、私も魔法を使ってみたかったのですが、残念です。
ともかく、この事件は魔法災厄、ということで間違いなさそうですね。今のところ、私の知っている展開と大きな差はなさそうです。
「マリウスの方は?」
「そうですね。この村の村長の息子が、珍しい本を持って帰ってきたそうです。一週間前ですね」
「そうなんだ。その本が魔道書?」
「可能性は高いかと。それから……本を持って帰ってきたのと同じくらいの時期に、物忘れが激しくなった、と書かれてるんですよね。関係あるかは分かりませんが……」
「物忘れ?」
「はい。今回の魔法災厄は眠ってしまうことだと思ってたんですが。違うのでしょうか」
「うーん、見た感じ、そっちに変な部分はなかったと思うけど。でも、俺医療方面はちゃんと学んだわけじゃないからなあ」
「そうですか。まあ、それは回収してからでいいですね」
これまでも、とりあえず回収してからどんな魔道書、魔法具か確認するなんてのはよくありましたからね。そもそも数日の調査でそんな細かいところまで分かるはずがないんですよ。
「じゃあ、村長の家、だっけ。行ってみる?」
「そうですね。増援を呼ぶかを判断するためにも、行ってみましょう」
ゲームでは、確かこのまま回収する流れだったでしょうか。チュートリアルですし、何故か攻略対象も出てこない章ですからね。あっさり終わったはずです。プレイ時間は一時間もかからなかったような。二週目からはほぼスキップでしたし。
早くここを終わらせないと、リヒトさんと攻略対象の顔合わせすら見られません。さて、さっさと終わらせてしまいましょう。
村長の家は、村の奥にある、大きな屋敷でした。他の家の二倍は大きいです。ここまでの案内はリヒトさんです。
「何となく、こっちの気がする!」
と引っ張っていった先に、本当にありました。何となくって言ってますけど、魔力たどってるんじゃないですかね。無意識なんでしょうか……?
「開けますね」
「う、うん。気をつけて」
剣を構えて、扉を開けます。……何事もない、ように思いますが。リヒトさんが顔をしかめたのが気になります。
「うわ、何これ。マリウス、これ大丈夫?」
「と言われても、私は特に何も感じませんが」
「あ、そっか。マリウスは分からないんだっけ。ここ、すっごく魔力が濃いよ。さっきの宿も結構濃かったけど、ここはもっと濃い。ここ、絶対何かあるよ」
「なるほど。ここに魔道書があるのは間違いなさそうですね。気をつけていきましょう」
「う、うん!」
「ちなみに、その魔力の中心ってどこか分かります? こっちの方がより魔力が濃いとか」
「んーとね、下! 下が濃い。地下があるのかな?」
「探してみましょう」
村長宅だけあって、この屋敷は結構広いです。単独行動は危険なので、二人で地下へ行く方法を探して屋敷内を歩くことになります。……さて、地下の階段、どこにありましたかね。一人称視点だとさっぱりです。
「おっきいお屋敷だねえ。王都の家よりも大きいよね」
「そりゃ、仮にも村長の家ですからね。一般市民の家よりは大きいでしょう」
「そっかー。大きい家に住めるっていいよね」
「その分責任も伴いますけどね」
雑談をしながら、屋敷を巡ります。まるで冒険です。これだけ大きな家なら村長とその息子だけでなく、使用人もいそうなものなんですが、誰ともすれ違いません。皆さん、眠っていらっしゃるんでしょう。光の加護を持つリヒトさんが「すっごく濃い」というくらいの魔力のただ中にあって、魔法使いでもない一般人が抗えるとも思えませんし。
「あ! やっと見つけた!」
廊下にはなさそうだと、それらしい扉を片っ端から開け始めて五つ目。ようやく地下へ続く階段を発見しました。
「行こう、マリウス!」
「気をつけて下さいね。宿主か、もしかしたら本体が登場するかもしれません」
「宿主? 本体?」
「ああ……そうでした。説明していませんでしたね」
宿主とは、魔法災厄を起こすくらい強力な魔道書や魔法具の使用者のことです。たいていは、力を使うより力に振り回されているので、寄生されている、という意味でそう呼ばれているらしいですね。
本体は、宿主のいる魔道書・魔法具のことです。要は、回収対象のことですね。
「んー、つまり、本体を回収して宿主さんを助ければいいんだよね!」
「そういうことです」
素直でよろしい。お兄さんは嬉しいです。同い年ですけど。
そういう素直な態度は喜ばれますよ。特にひねくれた性格の人とか、ツンデレの人とかに。喜ばれるというか、圧されているのかもしれませんけどね。
「じゃ、宿主さんを助けに行こう、マリウス!」
「本体には気をつけて下さいね」
「うん!」
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