夜の獣と人と

旅立ち

ヴィレンとフィリア

結局僕も寝不足でフィリアに膝枕したまま寝てしまった。僕は９時頃に起きたフィリアに起こされて村に帰る事にした。因みにフィリアも着いて来るらしいのだが、僕が住む村は人族の国の村なのだ。これがフィリアと暮らす妨げとなる。人族は基本的に人族以外の人型種族を下と見ておりフィリアを人間とするならなる獣人も下に、なんなら獣人は人族の奴隷になる為に産まれて来たのだと言う大臣がいる為かなり人族の村でフィリアは暮らし難いのである。その為僕は引っ越す事にした。僕の村から歩いて三日の隣国ケヒアに。ケヒアは人種差別を無くす為にそれを憲法にも書く国だ。其処ならフィリアと安全に暮らせるだろう。
「と言う訳なんだ。明日の夜此処に来るから準備をして置いてくれないか？すまない。住み慣れた此処を離れる事になってしまって」
「ヴィレンとの暮らしの為なら大丈夫だよ。私は」
「ありがとう」
「それで、明日の夜に此処ね。分かったわ。夕刻位にケヒア側の標札の側に行くから此処に来なくて大丈夫だよ」
「いいの？」
「何が？」
「いや、クズな男達に話かけられるだろうから」
はっきり言ってフィリアは顔もスタイルもめっちゃ良い。出る所は出ていて引っ込む所は引っ込んでいる。推定身長１７２cmそして極め付けは超絶美人。身長が高めなのが一般的な人から見たら玉に傷だと言うのだろう。そしてこの辺りには人族しか居らず、フィリアは狼の耳が付いているため獣人と間違えられるだろう。そして奴隷にでもしようとするはずだ。
「ふふっ、変なヴィレン」
「何が？」
「もう忘れたのかな？私は古葉白狼族の族長の娘でヴィレンみたいな人間からは人狼と呼ばれるれっきとした魔物だよ」
「えっ、フィリアって族長の娘なの！？」
「そうだよ。まあ、お父さんとはちょっと喧嘩したから最近話して無いけど」
「というか」
「なぁに？」
「フィリアって人狼なの？」
「そうだよ。ただ、魔物として人間の前に現れる逸れじゃなくて単体で逸れ五体分位の戦闘能力を持つ純系の人狼だよ。だから私は人間の示す魔物に対する危険度ランクで言えばＡ＋からＳ－という所だよ。だからクズな体目当ての男が来たら殺せばいいから大丈夫だよ」
「Ａ＋って、大型都市の崩壊を起こせる位でＳ－って国で対処するレベルじゃん」
「うん。そうだよ。だから、ヴィレンが私と結婚したくないというなら私のスキルの効果を発動させて私とヴィレンを殺して新たな世界でヴィレンと結ばれるつもりだったんだよ」
「ヒェッ」
「ヴィレンが私を受け入れてくれたから嬉しかったし、やる意味も無くなったからね。でも、浮気したら、分かってるよね？」
「はっ、はい」
「そっ、なら良かった。絶対に、誰にも渡さないから、ヴィレンは私ののだから」
「それじゃあ行ってくるよフィリア」
「行ってらっしゃいヴィレン」
こうして僕は昼頃に山を降りた。フィリアとの約束を呟きながら。