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お悩み相談所

女性ならでは? 2

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蘆花は奥にいるはずの彼に声をかける。
「あの紅葉こうようさんお客さんが入られたのでお相手お願いします。」
すると僕は身長176cmくらいあるのだがそれより10cmくらい小さいが出てきた。
「あら、そうなの。じゃあ行ってくるわ。ああ、そうだわ今回どんなお悩みかしら。」
そういう言葉を発する声は女性に近い声をしているが男性の声だ。
「恋愛相談だそうですよ。」
「あら、久しぶりに楽しいお悩み相談になりそうね。」
と言い彼女は表に出て行った。
彼女は正しくは女性ではなく、男性なのだ。彼の名前は久遠音紅葉くおんねこうよう。いわゆるトランスジェンダーと言われる方の一人だ。僕は彼がどういう境遇で育ってきたかは知らないがそう恵まれた環境じゃなかったことがわかる。なぜならここにいる従業員全員、家がないとか捨てられたとか言う不運な境遇の人間の集まりだからだ。僕は彼(彼女と言った方が正しいのかよくわからない)に会って、初めて話した時にこの人は綺麗だと思った。物理的にも綺麗な容姿だけど心が綺麗だと思った。なぜなら彼女にはきちんと芯が通っている。誰に迫害されようが誰になんと罵られようが『私は私だ。』と言い張れることが僕にとってはかっこいいことだった。そんな回想を頭の中で流している間に紅茶が入れ終わった。くまの柄の入ったメルヘンチックで可愛いカップにコースターを添える。このデザインはこの店の女性諸君で考えてもらった。このコースターは持ち帰れるためコレクションする方もいる。今回は鬼のキャラクタの入った濃い水色と薄い水色のストライプが背景の可愛らしいコースターだ。この鬼のモデルは紅葉さんと一緒にいる小鬼のカエデだ。今日は紅葉さんが紫陽花の着物ということもあり、カエデもお揃いの着物を着ている。紫陽花の簪もさしているので結構癒し系な感じだ。可愛い。そうこうしている間に個室前についてしまった。中からは楽しそうに話す声が聞こえる。こんなにも早く打ち解けてしまえるなんてやはり紅葉さんはすごいです。
コンコン
「失礼します。キャンディーのフルーツティーをお持ちしました。」
するとそこではなんとも楽しく、来た時とは別人かと思うほど明るい笑顔でお話しされるお客様の姿がございました。
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