オリンピック選手金メダリストが転生後、最高の武器屋のマスターになった

【第8話】──第四炉「信頼の試練」、その一振りを君に

ギルド本部・最上階。
これまでの炉とは異なり、そこには鍛冶場ではなく**「訓練場」**が広がっていた。

「ここが……最後の試験会場？」

隼人が目を凝らすと、中央に待っていたのは、甲冑を纏った騎士たち。
そして、ギルドマスター・ベイルが現れる。

「第四炉――“信頼の試練”。
　鍛冶師は孤独に打つ職人であると同時に、戦士にとっての“相棒”である。
　今回は、お前に“ある戦士”を託す」

そして、ベイルが指差したのは――

「……おい」

隼人の隣に立っていたのは、かつて街の傭兵ギルドで少しだけ会話を交わした、
口数の少ない長身の男、**ギルド最強の実戦騎士《クロード＝ザン》**だった。

「……お前と組むのか」

「うん。俺も思ってなかったけどな」

ベイルが言い渡す。

「お前の任務は、“クロード専用の武器”をこの場で作ることだ。
　ただし――彼の一言だけで、設計・素材選定・構造すべてを読み取れ。
　つまり、“信頼”と“理解”がなければ何も始まらん」

（マジか……言葉一つで、相手に最適な武器を作れって……）

クロードが、静かに口を開いた。

「一言だけ言う。“速さ”」

それだけだった。

「それ以上は話さない。俺は戦場で語る騎士じゃない。言葉ではなく、“結果”で語れ」

隼人は目を細める。

（……そう来るか）


【制作開始】

制限時間：2時間。
素材選定は自由。ただし使用数に制限あり。

隼人が手に取ったのは、
• 魔法を通す軽量金属《ルミナ鋼》
• 音を吸収・放出する《響導石》
• 風の魔素を含んだ《翡翠の羽》

（“速さ”って言葉には、いろんな意味がある。移動速度か？ 攻撃速度か？ いや、違う――）

（クロードは“間合い”で戦う騎士だった。あの沈黙と間、歩幅と呼吸……彼の速さは、“絶対の一撃を届かせるための”速さ）

隼人は、剣ではなく、槍を選んだ。
しかし、ただの槍ではない。

――刃は短く、柄はしなる。
――風の流れを纏い、踏み込みと同時に空気を爆ぜさせる。
――“攻撃”と“瞬間移動”を一体化させる武具。

「完成だ。“翔穿槍・閃牙”」


【実戦テスト】

クロードが武器を手に取り、訓練場の試験兵士3体に突進する。

ギュンッ――！！

槍を構えたまま、彼は風と共に消えた。

次の瞬間、3体の盾兵が、突風に貫かれて吹き飛ばされる。

「な……なんだ！？ 今の突進は！？」

「目で追えなかったぞ！？ 槍の踏み込みに風の反動が……！」

クロードが、ただ一言つぶやく。

「……完璧だ」

【槍武器：翔穿槍・閃牙（★5）】
【効果：突進時に一瞬の加速ブースト＋空中回避】
【適合者：クロード＝ザン】
【技能開花：「魂に応える鍛冶師」】

審査員たちは静まり返り、そして一斉に起立した。

「――風見隼人。
　第四炉、そして全炉試験、完全通過をここに認定する！」

その瞬間、ギルド本部の天井が開き、巨大な鐘が鳴る。

それは、王都が新たな“武器屋マスター”の誕生を告げる音だった。


エピローグ：

ギルドの称号を得た隼人は、自らの店を王都に構えることとなる。

店の名は――
「風ノ炉（かぜのろ）」

静かに、しかし熱く燃える鍛冶の炉。
その隣には、クロードやリリィ、ライバル鍛冶師のアーティらの姿もあった。

「さあ――次は、素材集めだな」

隼人の目が、世界地図の奥に向けられる。


◆次章スタート！

素材集め編：世界を旅する武器屋マスター

伝説の素材「龍の骨」「雷晶樹」「星喰いの牙」などを求め、仲間と共に世界を巡る冒険が始まる。
狩猟ギルド、迷宮、空中都市……
武器屋で終わらない、武器屋だからこその旅が、ここに広がる！