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面倒だけど。俺、本気出しますね
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「こら!ルシアン。あまり深追いしない!」
「そっちに一匹行った。早く倒してくれ」
「うわぁ!こいつ俺の魔法食らっても死なない!」
「何してる。そんなのに構うな」
森の中で先生を含めた総勢十六名はバタバタの戦闘を繰り広げていた。
冷静に戦えてる奴が何人いるかわからない。殆どが実戦不慣れだから仕方ないのだが……
「ルカ、お前先頭に行けよ。後ろには殆ど敵回ってこないんだしよ。前の方が戦力必要だろ」
「後ろだって何があるかわからないよ」
「いや、大丈夫だろ。俺のヘナチョコ風魔法でも殺れてるし、ビスマル君もいるしさ」
ビスマル・スージーは、今まさに炎魔法で一体のイノシシみたいな魔物を燃やしていた。
彼も俺の事をバカにしているムカつく奴だが、魔法の腕前はなかなかだ。
「そうだよルカさん。ここは僕一人で十分さ」
「だってさ。俺も要らない感じだぜ」
「う、うん……そっか。わかった」
一々鼻につく奴だが放っておく。
こいつは多分ルカが好きなのだ。見てればすぐ分かるくらい、ルカの前で格好をつける。
女子と一緒な体育館で部活の練習とかになると、やたら張り切る中学生みたいな奴だ。
そしていつも俺の側にルカがいるから気に入らないのも態度で分かっていた。
とりあえず周りの雑魚は片付いた。殆どカッコつけマンのビスマルが葬ったのだが。
先頭の方もルカが行ってから素早く片付いたようだ。先生があまり手を出していないのは、これが一応訓練生の実戦経験になるからだろう。
「おい。ルシアン。お前、今日何体倒した?」
「あ、えーと。三体くらいかな?」
「何だそんな程度か。全く僕の仕事を増やさないでくれよ。精神力が尽きてしまうだろ」
頼んでもないのにバッカバッカと派手な魔法を使うから精神力が尽きるのだ。格好ばかりつけてるから、いつもオーバーキルなのだ。
本当に強い魔物に当たった時の顔が見物だ。
「お、おう。悪いな……後さ……。後ろのやつも任せていいかな?」
「ん?お、おう……仕方ないな」
ビスマルの後ろに大きなクマが立っている。さっきのイノシシとは大きさが違う。もちろん、そこそこ強いのだが……ビスマルなら大丈夫だ。
案の状、派手な炎魔法でアッサリ倒した。彼は火の適正を持つ魔法使いなので炎魔法が大得意。
だが、森で炎魔法は本来避けるべきなのだ……その理由が現れた。
「後ろ!静かに前に来なさい!」
先生が緊張感のある声を発したので訓練生は一瞬でビクッとなった。
後方にいつの間にか現れたのは緑色の髪を靡かせた人間の少女だが目には眼球が無い。不気味な少女の正体は精霊、ドリアード。森で派手に炎を連発すると森を護る為に現れる。
見れば横にも何体か見える。
(山火事注意の地域防災団体か……不味いな)
何が不味いって、強さ的にはビスマルやルカでも勝てる。問題は団体さんだって事なのだ。
森には沢山の木がある。それら全てに精霊は宿っていると言われている。
その全てが襲ってくるとは言わないが十分に数の暴力だ。既に囲まれていた。
「ふん!こんな奴。僕の相手じゃないさ。木の精霊なら僕の得意分野じゃないか」
ビスマルが派手な炎魔法でドリアードを一体燃やし尽くす。それを引き金にして他のドリアードがそれを倍にするかの如く一斉に風魔法を放って来た。
(ちっ!余計な事しやがって!)
俺は身を屈めたが、その必要無く。その風魔法が俺やビスマルに影響する事は無かった。
辺りにそれより大きな風のバリアが張り巡らされた。予想はしてたが先生を見ると杖を振りかざしている。なかなかカッコいい杖だ。
ちなみに俺は父の装備は借りて来なかった。何故ならダサいから。普通にほぼ普段通りの服装で来たのだ。
もちろん先生には怒られたし、他の奴には白い目で見られた。ただでさえ無能のくせに……と。
「前方に道を開くわ。全員走りなさい!」
先生の強力な風魔法。
バリアとして覆っていた風は、そのまま前方のドリアードを吹き飛ばす勢いで吹き流れた。
それに追従するように全員が走りだした。
ドリアードは炎魔法で攻撃しなければ反撃してこない。しかし、ビスマルがやらかしたせいで戦争になったわけだ。
「くそ!ビスマル!振り向くな、早く走れ!」
俺の前を行くビスマルが遅い。普段から身体を鍛えないからそうなるのだ。
こいつを置いていけばいいのだが、さすがにそれは躊躇われる。
(ちくしょう!先生の風の魔法が消える!)
道を作っていた一筋の風の流れが消えた。俺とビスマルは置いていかれたのだ。
風の道が消えた途端、周りは多くのドリアード。逃げ道は無い。慌てたビスマルは、またもやらかす。
「くそ!くそ!くそ!こいつら!」
「バカ!やめろ!」
炎魔法で一体や二体消滅させても解決しないのだ。その倍の風魔法が鋭い刃となって襲い掛かって来て、二人の身体の至る所を切り刻む。
「ひ、ひぃぃ!痛い!痛いよぉ!」
パニックを起こしたビスマルは地べたに座り込み頭を抱えて塞ぎ込んでしまった。
(ちっ!バカが。お前はそうやって目を閉じてろ)
普段通りの姿で来た俺だが、一つだけ普段と違う物を身に付けていたのでソレを抜いた。
腰に装着していた一本の変わった形の杖。俺的にはダサいスーパーゼウスに比べたら圧倒的にナウいのだが……訓練生達には「何だそれ」と笑われた。
本当にセンスの欠片もない奴らだ。
しかしそれは杖ではなく鞘だった。そこから抜かれたのは細身の剣。所謂、仕込み杖だ。
俺はチラリと足元を見た。
相変わらず何かブツブツと口ずさみながら、ガタガタ震えて頭を抱えている『無能』がいる。
(何で俺がこんな奴の為に……ヤレヤレだな)
俺は服の袖を捲り上げ剣を構えた。
「そっちに一匹行った。早く倒してくれ」
「うわぁ!こいつ俺の魔法食らっても死なない!」
「何してる。そんなのに構うな」
森の中で先生を含めた総勢十六名はバタバタの戦闘を繰り広げていた。
冷静に戦えてる奴が何人いるかわからない。殆どが実戦不慣れだから仕方ないのだが……
「ルカ、お前先頭に行けよ。後ろには殆ど敵回ってこないんだしよ。前の方が戦力必要だろ」
「後ろだって何があるかわからないよ」
「いや、大丈夫だろ。俺のヘナチョコ風魔法でも殺れてるし、ビスマル君もいるしさ」
ビスマル・スージーは、今まさに炎魔法で一体のイノシシみたいな魔物を燃やしていた。
彼も俺の事をバカにしているムカつく奴だが、魔法の腕前はなかなかだ。
「そうだよルカさん。ここは僕一人で十分さ」
「だってさ。俺も要らない感じだぜ」
「う、うん……そっか。わかった」
一々鼻につく奴だが放っておく。
こいつは多分ルカが好きなのだ。見てればすぐ分かるくらい、ルカの前で格好をつける。
女子と一緒な体育館で部活の練習とかになると、やたら張り切る中学生みたいな奴だ。
そしていつも俺の側にルカがいるから気に入らないのも態度で分かっていた。
とりあえず周りの雑魚は片付いた。殆どカッコつけマンのビスマルが葬ったのだが。
先頭の方もルカが行ってから素早く片付いたようだ。先生があまり手を出していないのは、これが一応訓練生の実戦経験になるからだろう。
「おい。ルシアン。お前、今日何体倒した?」
「あ、えーと。三体くらいかな?」
「何だそんな程度か。全く僕の仕事を増やさないでくれよ。精神力が尽きてしまうだろ」
頼んでもないのにバッカバッカと派手な魔法を使うから精神力が尽きるのだ。格好ばかりつけてるから、いつもオーバーキルなのだ。
本当に強い魔物に当たった時の顔が見物だ。
「お、おう。悪いな……後さ……。後ろのやつも任せていいかな?」
「ん?お、おう……仕方ないな」
ビスマルの後ろに大きなクマが立っている。さっきのイノシシとは大きさが違う。もちろん、そこそこ強いのだが……ビスマルなら大丈夫だ。
案の状、派手な炎魔法でアッサリ倒した。彼は火の適正を持つ魔法使いなので炎魔法が大得意。
だが、森で炎魔法は本来避けるべきなのだ……その理由が現れた。
「後ろ!静かに前に来なさい!」
先生が緊張感のある声を発したので訓練生は一瞬でビクッとなった。
後方にいつの間にか現れたのは緑色の髪を靡かせた人間の少女だが目には眼球が無い。不気味な少女の正体は精霊、ドリアード。森で派手に炎を連発すると森を護る為に現れる。
見れば横にも何体か見える。
(山火事注意の地域防災団体か……不味いな)
何が不味いって、強さ的にはビスマルやルカでも勝てる。問題は団体さんだって事なのだ。
森には沢山の木がある。それら全てに精霊は宿っていると言われている。
その全てが襲ってくるとは言わないが十分に数の暴力だ。既に囲まれていた。
「ふん!こんな奴。僕の相手じゃないさ。木の精霊なら僕の得意分野じゃないか」
ビスマルが派手な炎魔法でドリアードを一体燃やし尽くす。それを引き金にして他のドリアードがそれを倍にするかの如く一斉に風魔法を放って来た。
(ちっ!余計な事しやがって!)
俺は身を屈めたが、その必要無く。その風魔法が俺やビスマルに影響する事は無かった。
辺りにそれより大きな風のバリアが張り巡らされた。予想はしてたが先生を見ると杖を振りかざしている。なかなかカッコいい杖だ。
ちなみに俺は父の装備は借りて来なかった。何故ならダサいから。普通にほぼ普段通りの服装で来たのだ。
もちろん先生には怒られたし、他の奴には白い目で見られた。ただでさえ無能のくせに……と。
「前方に道を開くわ。全員走りなさい!」
先生の強力な風魔法。
バリアとして覆っていた風は、そのまま前方のドリアードを吹き飛ばす勢いで吹き流れた。
それに追従するように全員が走りだした。
ドリアードは炎魔法で攻撃しなければ反撃してこない。しかし、ビスマルがやらかしたせいで戦争になったわけだ。
「くそ!ビスマル!振り向くな、早く走れ!」
俺の前を行くビスマルが遅い。普段から身体を鍛えないからそうなるのだ。
こいつを置いていけばいいのだが、さすがにそれは躊躇われる。
(ちくしょう!先生の風の魔法が消える!)
道を作っていた一筋の風の流れが消えた。俺とビスマルは置いていかれたのだ。
風の道が消えた途端、周りは多くのドリアード。逃げ道は無い。慌てたビスマルは、またもやらかす。
「くそ!くそ!くそ!こいつら!」
「バカ!やめろ!」
炎魔法で一体や二体消滅させても解決しないのだ。その倍の風魔法が鋭い刃となって襲い掛かって来て、二人の身体の至る所を切り刻む。
「ひ、ひぃぃ!痛い!痛いよぉ!」
パニックを起こしたビスマルは地べたに座り込み頭を抱えて塞ぎ込んでしまった。
(ちっ!バカが。お前はそうやって目を閉じてろ)
普段通りの姿で来た俺だが、一つだけ普段と違う物を身に付けていたのでソレを抜いた。
腰に装着していた一本の変わった形の杖。俺的にはダサいスーパーゼウスに比べたら圧倒的にナウいのだが……訓練生達には「何だそれ」と笑われた。
本当にセンスの欠片もない奴らだ。
しかしそれは杖ではなく鞘だった。そこから抜かれたのは細身の剣。所謂、仕込み杖だ。
俺はチラリと足元を見た。
相変わらず何かブツブツと口ずさみながら、ガタガタ震えて頭を抱えている『無能』がいる。
(何で俺がこんな奴の為に……ヤレヤレだな)
俺は服の袖を捲り上げ剣を構えた。
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