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ベネットの戦う理由は……
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結界に辿り着くまで基本逃げ切りスタイル。
特別小さいベネットは途中俺が抱えて逃げる場面もあったが、彼女は小柄なだけあってすばしっこい。回避力は天下一品かもしれない。
そこに先輩達のパーティーによる護衛もあり。無事にウェレル大空洞の入り口で全員が安堵のタメ息を吐いていた。
「しっかし敵が多かったな。お前ら何か魔物を寄せ付ける御守りでも持ってるのか?」
かなり疲労した感じの先輩は、息も絶え絶えそう愚痴る。
御守りなら普通は寄せ付けない物だろう、等と思いながらも答えた。
「あんなもんじゃないですか?」
「いや。俺達はあんな数相手にしていないぞ」
まぁ、ダンジョンなんてのは運もある。全く出ない時だってあるだろう。確かに今回、多すぎだとは思ったが。
「とりあえず先輩、ここまでありがとうございました。僕達はベネットを村まで送ります。そろそろ魔法の制限も解除されると思いますし」
「そうか……じゃあな無能」
最後にそれを言わないと気が済まないのだろうか……等と思いつつも笑顔で返す。
すると先輩は思い出したようにベネットに近付いた。いや、最初からタイミングを伺っていたのだろう。
「ありがとな。後よ……良かったら……俺達と一緒に来る気はないか?」
虫のいい話だ。散々彼女をバカにしたのだから。
ルカが横で露骨に不快な顔をして食ってかかりそうだったが、その前にベネットが普通に断った。
「ありがとうございます。でも、その話はお受け出来ません。私にも色々やりたい事があるので」
「そうか。わかった――――。じゃあな、無能。またどこかで会うかもな」
(だから!何で最後に俺に一発入れてくんだ、コイツは)
俺達は最後まで気に入らない先輩パーティーを見送ってから、ベネットをカプリコ村へと送った。
――――――――――
村に着いた時は既に辺りは暗くなっていた。
ベネットが夕食を作ってくれたのでご馳走になる事にする。彼女の自家野菜を使用したご飯は凄く美味しい。
「今日は本当にありがとうございました!」
「いいのよ。私達も助かったんだし。ところで、どうしてベネットちゃんは泉に行きたかったの?」
そういえばその理由を聞いていなかった。
だが想像はつく。何人も死なせていると思っている彼女の事だ。誰かを守れる強さが欲しかったのだろう。
それは全て君のせいでは無いのだと、伝えなければならないと思い俺は口を開いた。
「ベネット。君の回復魔ほ……」
「趣味です!」
「へ!?」
「魔力の泉って凄く神秘じゃないですかぁ~。私、神秘とか古代のなんちゃらとかに弱いんですよね。それに幻想的な景色とかぁ。だから色んな神秘や絶景を見たいんですよぉ」
(ただのパワースポット好きな女子じゃないか!しかも幻想的って……俺的には、この世界が既にファンタジーですが?)
まさかそんな理由で何人も巻き込んだとは。
死んだ方々も浮かばれないかもしれないが、自業自得と言えば自業自得だった。回復出来ない奴等ならベネットがいなければ、もっと早く死んでいたかもしれないのだし。
「そうなんだ。私も神秘とか大好きなの!気が合うね!」
「ルカ様もですか!?神秘最高ですよね!」
(バカだ。こいつらバカだわ。ってか『様』ってやめろ)
まさかルカも神秘の為に光魔法とか言ってるんじゃないだろうかと不安になってくる所だが。もちろん彼女にはちゃんとした理由があるし。セシルと婚約したくないからだ。
(あれ?その理由も結構どうでもよくね?)
いや。結婚は人生において大事な事なので、どうでもよいわけではない。だが、命を賭ける事かと言われると疑問は残る。
では、俺の理由は。
ルカをセシルに渡したくないから……そう。俺の理由も意外と軽い事に気付いてしまった。
「――――聞いてる?いいよね?ルシアン」
「え?何の話?」
「私をルシアン様とルカ様の冒険に付き合わせてください!」
話がぶっ飛んでいた。
「だって、ベネット。あいつらの誘い、断ってたじゃないか。やりたい事があるんじゃないのか?」
「私のやりたい事は冒険です」
「それなら。俺達じゃなくても強い奴等の方が安全だぞ?」
俺の言ってる事は正論だった。危険な冒険に行く相手を選ぶ権利は優秀な回復魔法使いの彼女にある。仲間選びは、自分が生きるか死ぬかを選択するのと同じ事なのだ。
「ルシアン様、私の魔法を誉めてくれたから……だから。その……良かったら…………あっ!肩の傷を治したからとか、ご飯食べさせてあげたからとか、そんな恩を売る事言ってるんじゃありませんよ!?ダメ……ですか?」
(コイツ絶対わざとだろ!)
「いいじゃんルシアン。ベネットちゃんは神秘が好きなんだよ!即戦力だよ」
「あ、あぁ。そうだな。彼女が良いなら俺はいいよ」
「ありがとうございます!これからも、よろしくお願いします!」
何かもう女子二人に任せればいいと思い始めた。
翌朝。
俺達は三つ目の神秘……いや、魔力の泉を求めて次の目的地へと向かう事にした。
「――――へぇ~。サラン王国は御二人共初めてなのですか。サランには昨日のウェレルのような水の街の他に、断崖絶壁にある街カホンや、地中の街ドリル等、破天荒な造りの場所が多いのですよ。まさに神秘ですよね」
サラン王国の領土は詰まる所が地形に恵まれていない。
その為、破天荒な造り方をしなければならないので必然的に変わった街並みが多いのだ。
一方で俺とルカが生まれ育ったゼクルート王国は土地に恵まれている。
ここにきて漸く最初の王国の名前が出た事に戸惑いを覚える所だろうが、次に向かうのはサラン王国の首都であり、【ベインハッツ城】が聳え建つ城下町キネスモだ。
そして、キネスモにはメインクエストのイベントがある。
「ベネットちゃん。キネスモまでは長いの?」
「はい。山岳を越えるので徒歩だと二週間ですね」
「え!?そんなに?」
「大丈夫ですよ。飛竜でビューン!して、1日でパッ!ですよ」
(飛竜でビューン。1日でパッ……!?)
何食わぬ顔でベネットはルートとは違う方向に向かって歩いて行く。俺達もそれに続いた。
特別小さいベネットは途中俺が抱えて逃げる場面もあったが、彼女は小柄なだけあってすばしっこい。回避力は天下一品かもしれない。
そこに先輩達のパーティーによる護衛もあり。無事にウェレル大空洞の入り口で全員が安堵のタメ息を吐いていた。
「しっかし敵が多かったな。お前ら何か魔物を寄せ付ける御守りでも持ってるのか?」
かなり疲労した感じの先輩は、息も絶え絶えそう愚痴る。
御守りなら普通は寄せ付けない物だろう、等と思いながらも答えた。
「あんなもんじゃないですか?」
「いや。俺達はあんな数相手にしていないぞ」
まぁ、ダンジョンなんてのは運もある。全く出ない時だってあるだろう。確かに今回、多すぎだとは思ったが。
「とりあえず先輩、ここまでありがとうございました。僕達はベネットを村まで送ります。そろそろ魔法の制限も解除されると思いますし」
「そうか……じゃあな無能」
最後にそれを言わないと気が済まないのだろうか……等と思いつつも笑顔で返す。
すると先輩は思い出したようにベネットに近付いた。いや、最初からタイミングを伺っていたのだろう。
「ありがとな。後よ……良かったら……俺達と一緒に来る気はないか?」
虫のいい話だ。散々彼女をバカにしたのだから。
ルカが横で露骨に不快な顔をして食ってかかりそうだったが、その前にベネットが普通に断った。
「ありがとうございます。でも、その話はお受け出来ません。私にも色々やりたい事があるので」
「そうか。わかった――――。じゃあな、無能。またどこかで会うかもな」
(だから!何で最後に俺に一発入れてくんだ、コイツは)
俺達は最後まで気に入らない先輩パーティーを見送ってから、ベネットをカプリコ村へと送った。
――――――――――
村に着いた時は既に辺りは暗くなっていた。
ベネットが夕食を作ってくれたのでご馳走になる事にする。彼女の自家野菜を使用したご飯は凄く美味しい。
「今日は本当にありがとうございました!」
「いいのよ。私達も助かったんだし。ところで、どうしてベネットちゃんは泉に行きたかったの?」
そういえばその理由を聞いていなかった。
だが想像はつく。何人も死なせていると思っている彼女の事だ。誰かを守れる強さが欲しかったのだろう。
それは全て君のせいでは無いのだと、伝えなければならないと思い俺は口を開いた。
「ベネット。君の回復魔ほ……」
「趣味です!」
「へ!?」
「魔力の泉って凄く神秘じゃないですかぁ~。私、神秘とか古代のなんちゃらとかに弱いんですよね。それに幻想的な景色とかぁ。だから色んな神秘や絶景を見たいんですよぉ」
(ただのパワースポット好きな女子じゃないか!しかも幻想的って……俺的には、この世界が既にファンタジーですが?)
まさかそんな理由で何人も巻き込んだとは。
死んだ方々も浮かばれないかもしれないが、自業自得と言えば自業自得だった。回復出来ない奴等ならベネットがいなければ、もっと早く死んでいたかもしれないのだし。
「そうなんだ。私も神秘とか大好きなの!気が合うね!」
「ルカ様もですか!?神秘最高ですよね!」
(バカだ。こいつらバカだわ。ってか『様』ってやめろ)
まさかルカも神秘の為に光魔法とか言ってるんじゃないだろうかと不安になってくる所だが。もちろん彼女にはちゃんとした理由があるし。セシルと婚約したくないからだ。
(あれ?その理由も結構どうでもよくね?)
いや。結婚は人生において大事な事なので、どうでもよいわけではない。だが、命を賭ける事かと言われると疑問は残る。
では、俺の理由は。
ルカをセシルに渡したくないから……そう。俺の理由も意外と軽い事に気付いてしまった。
「――――聞いてる?いいよね?ルシアン」
「え?何の話?」
「私をルシアン様とルカ様の冒険に付き合わせてください!」
話がぶっ飛んでいた。
「だって、ベネット。あいつらの誘い、断ってたじゃないか。やりたい事があるんじゃないのか?」
「私のやりたい事は冒険です」
「それなら。俺達じゃなくても強い奴等の方が安全だぞ?」
俺の言ってる事は正論だった。危険な冒険に行く相手を選ぶ権利は優秀な回復魔法使いの彼女にある。仲間選びは、自分が生きるか死ぬかを選択するのと同じ事なのだ。
「ルシアン様、私の魔法を誉めてくれたから……だから。その……良かったら…………あっ!肩の傷を治したからとか、ご飯食べさせてあげたからとか、そんな恩を売る事言ってるんじゃありませんよ!?ダメ……ですか?」
(コイツ絶対わざとだろ!)
「いいじゃんルシアン。ベネットちゃんは神秘が好きなんだよ!即戦力だよ」
「あ、あぁ。そうだな。彼女が良いなら俺はいいよ」
「ありがとうございます!これからも、よろしくお願いします!」
何かもう女子二人に任せればいいと思い始めた。
翌朝。
俺達は三つ目の神秘……いや、魔力の泉を求めて次の目的地へと向かう事にした。
「――――へぇ~。サラン王国は御二人共初めてなのですか。サランには昨日のウェレルのような水の街の他に、断崖絶壁にある街カホンや、地中の街ドリル等、破天荒な造りの場所が多いのですよ。まさに神秘ですよね」
サラン王国の領土は詰まる所が地形に恵まれていない。
その為、破天荒な造り方をしなければならないので必然的に変わった街並みが多いのだ。
一方で俺とルカが生まれ育ったゼクルート王国は土地に恵まれている。
ここにきて漸く最初の王国の名前が出た事に戸惑いを覚える所だろうが、次に向かうのはサラン王国の首都であり、【ベインハッツ城】が聳え建つ城下町キネスモだ。
そして、キネスモにはメインクエストのイベントがある。
「ベネットちゃん。キネスモまでは長いの?」
「はい。山岳を越えるので徒歩だと二週間ですね」
「え!?そんなに?」
「大丈夫ですよ。飛竜でビューン!して、1日でパッ!ですよ」
(飛竜でビューン。1日でパッ……!?)
何食わぬ顔でベネットはルートとは違う方向に向かって歩いて行く。俺達もそれに続いた。
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