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冷やし『無双』始めました
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城の上空まで来ると、エレベーターで降りるように飛竜は垂直に高度を下げて行く。内臓が持ち上がる感覚が気持ち悪い。
そして城の屋上周辺は、突然の巨大な飛竜登場に慌ただしくなっているのが分かる。
「おじいさん、ありがとうございました!――――ルカ達は街の方に降りてくれ。魔法士が動くまで無理するなよ。最悪逃げろ」
それだけ言い残し、直ぐ俺は城の屋上へと四メートル程の高さを飛び降りた。
再び垂直に上昇する飛竜の腹を見送る。その間に、さすが対応が早いサラン王国の魔法士達によって俺は囲まれていた。
「動くな!何者だ!」
(まぁ、そうなりますよねぇ~)
「俺はゼクルート王国魔法士団のルシアン!今すぐ国王様に会わせていただきたい!」
「なに?ゼクルートの魔法士だと?」
開幕から嘘八百である。こうでもしないと話も聞いてもらえないからだ。
狙い通りに辺りはざわめき立ち、俺は数人の魔法士に囲まれ一つの部屋に案内された。もちろん、信用されたわけではないと思う。
待っていたのは切れ長な目に細身のメガネ。黒髪ロングの知的で美人なお姉さんだった。
「貴殿がゼクルートの魔法士か。飛竜で現れたとか……わざわざ城の上に降りるとは大胆にも程があるが……礼儀を知らないのではあるまい?」
「礼儀として先ずは名乗らせて頂きます。俺はルシアン・ルーグ。あなたが国王?ではないですよね」
逆手に取った……つもりだったが、知的美人は少しも表情を変えない。
「申し遅れた。私はレイバン・サルート。サラン王国魔法士団の団長をしている。これで失礼はチャラだな。要件は何だろうか?」
「こんな形で申し訳ありません。ただ事態が急を要するものなので。もうすぐここに魔王軍の軍団が来ます!」
単刀直入が過ぎたのか、レイバンは少し眉をしかめた。
しかし、直ぐに別の魔法士に外の様子を見てくるように伝える。念のため他の部隊に警戒させる命令も忘れない。
なかなか、慎重かつ行動力がある人間だと伺える。
ここは魔法だけの世界だけあり、力は関係ない。故に女性が上の立場にいる事が多いのが【マジックイーター】
まぁ……それは俺の好みだ。
「魔王軍?ゼクルートに現れたのは噂に聞いた。しかし、何故それが我が国に来ると?」
「飛竜の上から確認済みだからです。数は五百以上」
それしか言えない。
だが逆にこの世界でその事を知る手段なんて、それ以外には無いと思う。飛竜で現れた事を知っている相手ならば、立派な根拠になる。
こんな時スマホでもあればガーゴイルを写メしておく事も出来るが。この世界でそれはムリな話だし。
「それが本当ならば急がねばならん。だが、貴殿を信用するにはまだ早い。暫しそこで待たれよ」
そう告げると、レイバンは俺に見張りをつけて部屋を出た。
その僅か数分後には城の中がバタバタし始め、さらに数分を経て扉が開き戻って来たレイバンが俺に言う。
その言葉遣いも少し柔らかくなっていた。
「一旦信じる事にしましょう。ただ、貴殿は私の監視下に置きます。ついてきてください」
踵を返すレイバンに俺は黙って従った。
城の中腹にある、屋外の広場へと出てきた。そこは城下町を一望出来る絶景の場所だった。
既に城門の内側では魔法士が、数十人単位で隊を成している。
上から見ていると、その隊が徐々に集まり一つの大きな部隊になっていく様は圧巻だった。
(こう見るとシュミレーションゲームみたいだな。神にでもなった気分だ)
「団長!展望塔から連絡です。大きな影がこちらに近付いており、間も無く城下町上空に侵入すると!」
「よし。相手は空を飛んでいるハエ共だ。各隊準備。各自の判断で攻撃を開始しろ」
「了解です!」
「さて。どうやら話は本当だったようですね」
「言った通りでしょ。俺も加勢します」
そう言って俺は腰から剣を抜いた。
ソレを見て、今まであまり表情を変えなかったレイバンの表情に大きく驚きが滲み出た。
「貴殿、魔法士ではないのか?そんな剣で何をするつもりか」
「それは今、お見せします。嘘をついたのを、今のうちに謝っておきますが。俺は魔法士じゃない。すいません」
「貴殿は何を……」
レイバンは訝しげな顔を俺に向けた。だが、その瞬間ガーゴイルは到着した。
城の上空を覆わんばかりのガーゴイルの群れ。その下半身は――――しっかり履いている。上半身は裸だが。
(まったく。良かったやら、良くないやら……)
公然猥褻じゃないのは良いが。それはつまりガーゴイルの種類がゼクルートに来た奴より強いという事だった。
そしてレイバンが呟いた。
「これは数が多すぎる……」
あちこちで一斉に魔法攻撃が始まった。隣にいるレイバンも大きな魔方陣を自分の頭上に展開して、そこから無数の雷が辺りに放電された。
雷魔法は水と風の適正を持つ者の上位魔法。
さすがに団長をしているだけの事はあって俺は圧倒されてしまった。だが、それで全て殺れる数ではない。
怒った蜂のように数十体纏めて俺とレイバンの元にガーゴイルが襲いかかってくる。まるで空からガーゴイル模様の天井でも落ちてくるように。
だが俺は慌てない。
今までのように魔法を使う『フリ』は、もう必要ないからだ。
例えるならばそれは。
夏まで販売してはいけない雰囲気に絆される中華屋さんの冷やし中華の様に、これまで晒せなかった剣術。
今、俺は遠慮なく剣術を繰り出せばいい。
俺は剣を一太刀振る。
そのまま慣性に任せて八の字を描く様に何度も高速で剣を往復させた。それだけで次の瞬間にはポッカリとガーゴイル模様の天井は消え失せて青空が見えた。
群がって来たガーゴイルは全て死体となり、周辺にボタボタと落ちたのだ。
「――――――な……なん……」
今、レイバンの顔をまともに見たらきっと俺は笑ってしまう。
それくらいさっきまでの知的美人が、俺の隣で何とも言えない間抜けな顔をしていたのだから。
そして城の屋上周辺は、突然の巨大な飛竜登場に慌ただしくなっているのが分かる。
「おじいさん、ありがとうございました!――――ルカ達は街の方に降りてくれ。魔法士が動くまで無理するなよ。最悪逃げろ」
それだけ言い残し、直ぐ俺は城の屋上へと四メートル程の高さを飛び降りた。
再び垂直に上昇する飛竜の腹を見送る。その間に、さすが対応が早いサラン王国の魔法士達によって俺は囲まれていた。
「動くな!何者だ!」
(まぁ、そうなりますよねぇ~)
「俺はゼクルート王国魔法士団のルシアン!今すぐ国王様に会わせていただきたい!」
「なに?ゼクルートの魔法士だと?」
開幕から嘘八百である。こうでもしないと話も聞いてもらえないからだ。
狙い通りに辺りはざわめき立ち、俺は数人の魔法士に囲まれ一つの部屋に案内された。もちろん、信用されたわけではないと思う。
待っていたのは切れ長な目に細身のメガネ。黒髪ロングの知的で美人なお姉さんだった。
「貴殿がゼクルートの魔法士か。飛竜で現れたとか……わざわざ城の上に降りるとは大胆にも程があるが……礼儀を知らないのではあるまい?」
「礼儀として先ずは名乗らせて頂きます。俺はルシアン・ルーグ。あなたが国王?ではないですよね」
逆手に取った……つもりだったが、知的美人は少しも表情を変えない。
「申し遅れた。私はレイバン・サルート。サラン王国魔法士団の団長をしている。これで失礼はチャラだな。要件は何だろうか?」
「こんな形で申し訳ありません。ただ事態が急を要するものなので。もうすぐここに魔王軍の軍団が来ます!」
単刀直入が過ぎたのか、レイバンは少し眉をしかめた。
しかし、直ぐに別の魔法士に外の様子を見てくるように伝える。念のため他の部隊に警戒させる命令も忘れない。
なかなか、慎重かつ行動力がある人間だと伺える。
ここは魔法だけの世界だけあり、力は関係ない。故に女性が上の立場にいる事が多いのが【マジックイーター】
まぁ……それは俺の好みだ。
「魔王軍?ゼクルートに現れたのは噂に聞いた。しかし、何故それが我が国に来ると?」
「飛竜の上から確認済みだからです。数は五百以上」
それしか言えない。
だが逆にこの世界でその事を知る手段なんて、それ以外には無いと思う。飛竜で現れた事を知っている相手ならば、立派な根拠になる。
こんな時スマホでもあればガーゴイルを写メしておく事も出来るが。この世界でそれはムリな話だし。
「それが本当ならば急がねばならん。だが、貴殿を信用するにはまだ早い。暫しそこで待たれよ」
そう告げると、レイバンは俺に見張りをつけて部屋を出た。
その僅か数分後には城の中がバタバタし始め、さらに数分を経て扉が開き戻って来たレイバンが俺に言う。
その言葉遣いも少し柔らかくなっていた。
「一旦信じる事にしましょう。ただ、貴殿は私の監視下に置きます。ついてきてください」
踵を返すレイバンに俺は黙って従った。
城の中腹にある、屋外の広場へと出てきた。そこは城下町を一望出来る絶景の場所だった。
既に城門の内側では魔法士が、数十人単位で隊を成している。
上から見ていると、その隊が徐々に集まり一つの大きな部隊になっていく様は圧巻だった。
(こう見るとシュミレーションゲームみたいだな。神にでもなった気分だ)
「団長!展望塔から連絡です。大きな影がこちらに近付いており、間も無く城下町上空に侵入すると!」
「よし。相手は空を飛んでいるハエ共だ。各隊準備。各自の判断で攻撃を開始しろ」
「了解です!」
「さて。どうやら話は本当だったようですね」
「言った通りでしょ。俺も加勢します」
そう言って俺は腰から剣を抜いた。
ソレを見て、今まであまり表情を変えなかったレイバンの表情に大きく驚きが滲み出た。
「貴殿、魔法士ではないのか?そんな剣で何をするつもりか」
「それは今、お見せします。嘘をついたのを、今のうちに謝っておきますが。俺は魔法士じゃない。すいません」
「貴殿は何を……」
レイバンは訝しげな顔を俺に向けた。だが、その瞬間ガーゴイルは到着した。
城の上空を覆わんばかりのガーゴイルの群れ。その下半身は――――しっかり履いている。上半身は裸だが。
(まったく。良かったやら、良くないやら……)
公然猥褻じゃないのは良いが。それはつまりガーゴイルの種類がゼクルートに来た奴より強いという事だった。
そしてレイバンが呟いた。
「これは数が多すぎる……」
あちこちで一斉に魔法攻撃が始まった。隣にいるレイバンも大きな魔方陣を自分の頭上に展開して、そこから無数の雷が辺りに放電された。
雷魔法は水と風の適正を持つ者の上位魔法。
さすがに団長をしているだけの事はあって俺は圧倒されてしまった。だが、それで全て殺れる数ではない。
怒った蜂のように数十体纏めて俺とレイバンの元にガーゴイルが襲いかかってくる。まるで空からガーゴイル模様の天井でも落ちてくるように。
だが俺は慌てない。
今までのように魔法を使う『フリ』は、もう必要ないからだ。
例えるならばそれは。
夏まで販売してはいけない雰囲気に絆される中華屋さんの冷やし中華の様に、これまで晒せなかった剣術。
今、俺は遠慮なく剣術を繰り出せばいい。
俺は剣を一太刀振る。
そのまま慣性に任せて八の字を描く様に何度も高速で剣を往復させた。それだけで次の瞬間にはポッカリとガーゴイル模様の天井は消え失せて青空が見えた。
群がって来たガーゴイルは全て死体となり、周辺にボタボタと落ちたのだ。
「――――――な……なん……」
今、レイバンの顔をまともに見たらきっと俺は笑ってしまう。
それくらいさっきまでの知的美人が、俺の隣で何とも言えない間抜けな顔をしていたのだから。
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