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この世界の理は俺には当てはまらない
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俺は五歳の時、あまりに無情なお告げを受けた。
それから俺は魔法を嫌いになったのだ。この世界での魔法は必然。しかし、俺には才能も魔力も無かったのだから。
俺がこの世界に転生した当初は、夢と希望に期待を膨らませて毎日を過ごしていたものだ。
両親の間に産まれた瞬間から、俺は言葉も文字も理解出来たし前世の記憶も残っていた。さらには目の前で日常的に魔法を繰り出す父と母。
直感的に異世界転生だと理解した。
それから魔法を使える日を楽しみに成長していった俺は、三歳くらいから両親の部屋に忍び込み、魔術書を読み漁る日々を過ごしていた。
だが、そんなある日気付いてしまったのだ。
俺には魔力が無い事を。
ご丁寧に魔術書には『魔力は生まれた時から誰しもがある』と書いてあった。そして、それを使って子供でも出来る魔法の使い方も。
しかし俺には出来なかった。
その細やかな魔法すら、その後何度試しても出来ない――――今でもだ。
俺は己の身体を理解し、それから剣術に目覚めた。
理由は単純だ。魔法がダメなら剣だというのがファンタジー世界の俺の中での絶対的ルールだったから。
最初は家にあった壊れたクワから『クワ』の部分を取り外した棒きれでの素振りから始まった。
剣術がこの世界では無意味なんて事は書物に散々書いてあったが、魔法だって俺には無意味だ。
だったら、武器を持つしかないと行き着く。
五歳の神事でやっぱり無能だとハッキリした俺は、ますます剣術に入れ込んだ。虫みたいな弱い魔物を、自前の木刀で狩るようになった。
本当に攻撃すらあまりしてこないような雑魚狩りだ。
俺はある程度、自分の剣術に自信を持ち出した。
そして六歳の時に剣を手に入れた。正確には家から持ち出したのだが。
この世界には刃物なんて、料理をする為の物くらいしかないと思っていた。だが、剣は存在するのだ。
それは格式張った式典等で、飾りとして身に付けるような物でしかない。
下手をしたら、大きな魚を捌く時に思い出した様に持ち出されて以後は棄てられたりと可哀想なものだ。
両親は魔法士をしていたので、式典用の剣を物置小屋に眠らせていた。ゴテゴテと派手な装飾の施された、実用性皆無のムダに重い剣。
だが、それが俺を大きく鍛えたのかもしれない。
一応刃も付いているので武器として十分使える。それで俺は森に行くようになり、更なる修行も兼ねて重い剣を降り続けた。勿論、隠れてコッソリだ。
見付かったらバカにされるだけだから。
だが、昼からは幼馴染みのルカがよく遊びに来ていた。
なので森には午前中だけ行き、昼からは小屋の中で自分で重さを増した杖を振る修行に明け暮れていた。
万が一、ルカに見付かっても魔法の練習をしてるようにしか見えないからだ。
『ルシアン君、いつも杖振ってるのね』
そんな事を言われた時もあった。
そんなある日。俺は杖を振っただけで衝撃波を発生させて、小屋の棚を破壊したのだ。
『ルシアン君!今の風魔法だよね!?』
ルカの問いに俺は咄嗟に頷いた。
いつの間にか重い杖でも、小枝を振るように軽く振れるようになっていたのだ。
これなら魔法を使えるフリが出来ると考えた。ある意味で剣術はムダではなかったのだ。
それから俺はますます剣術に打ち込んだ。
時が過ぎ。
俺はクソ重たい飾りの剣すらも、目に見えない程の速度で振れるようになっていた。
そして、一層剣術が楽しくなり。森の魔物も気が付くと、楽に一撃で倒せるようになっていて自信が持てた。
俺は強い――――
それは間違いなかった。
その事実だけが俺を支えた。
だが、この世界では魔法を使えない者は、周りには認められない。風魔法が少し使えても、日常的な簡単な魔法も使えないから。
俺は『無能』などと呼ばれるようになった。
両親やルカだけは俺を信じてくれたが、殆んどは俺をバカにするようになる。
俺は悔しさを晴らす為、更に剣術に打ち込んだ。
考えてみれば、これまで魔法世界の常識に自分を溶け込ます事に精一杯だった気がする。だが、この世界の理に従う事が自分にとってどれだけの価値があるのか。
今、俺の隣には【魔法絶対主義世界】の【非常識】に驚いている女性がいる。彼女はこの後、おれをバカにするだろうか。
この剣を振るい、魔法が使えぬ愚者を…………答えは『否』だろう。
何故なら彼女の目の前にいる無能は彼女より有能である可能性が高いのだから。
そんな単純な事に気付けたのはルカのお陰かもしれない。結局いつだってルカが俺を励ましてくれていた。
(そういえばアイツ大丈夫かな?ガーゴイルは城を狙って来てるっぽいが……)
「レイバンさん!ここはもう大丈夫ですよね?俺は街の被害を見に行きたいので、そちらに行きます」
「あ。あぁ。――――って!貴殿は私の監視下……」
レイバンが何か言っていたが、既に俺は飛び回るガーゴイルを次々斬り落としながら城の外階段を下りて行った。
辺りを見るとサラン王国の魔法士も距離さえ取れれば、十分に健闘出来ている。
既に半分開かれている正門の前には今だ大量のガーゴイル。そして大量の死体。それはガーゴイルも……魔法士もだ。
俺はガーゴイルの群れに突っ込み、斬り捨てながら道を切り開く。
辺りの魔法士が驚いた表情をしていたが、やがて俺の無双っぷりに大きな歓喜の声を上げる。これは正直かなり気持ちいい。
その勢いに乗って俺は正門を飛び出した。
(何だこれ……城だけが狙いじゃないのか!)
阿鼻叫喚とはまさにコレだった。一般の者達も入り乱れてガーゴイルと戦っている。
そして死体。死体。死体。
もちろん街の人達のだ。
そしてその奥に、一際派手な戦闘を繰り広げている場所がある。
幾つもの叫び声と共に、王国の魔法士が数人空に打ち上げられた。吹き飛ばされたと表現するべきか。
そこには、ガーゴイルとは比べ物にならない魔王軍の強敵の姿が見え、俺は驚愕した。
「か、カリザリス――――何で四魔将のアイツが!?」
そして、それに対峙しながらも魔法士に回復魔法を施すベネットと、それをサポートするルカの姿があった。
これは運命なのか――――そう思うよりなかった。
それから俺は魔法を嫌いになったのだ。この世界での魔法は必然。しかし、俺には才能も魔力も無かったのだから。
俺がこの世界に転生した当初は、夢と希望に期待を膨らませて毎日を過ごしていたものだ。
両親の間に産まれた瞬間から、俺は言葉も文字も理解出来たし前世の記憶も残っていた。さらには目の前で日常的に魔法を繰り出す父と母。
直感的に異世界転生だと理解した。
それから魔法を使える日を楽しみに成長していった俺は、三歳くらいから両親の部屋に忍び込み、魔術書を読み漁る日々を過ごしていた。
だが、そんなある日気付いてしまったのだ。
俺には魔力が無い事を。
ご丁寧に魔術書には『魔力は生まれた時から誰しもがある』と書いてあった。そして、それを使って子供でも出来る魔法の使い方も。
しかし俺には出来なかった。
その細やかな魔法すら、その後何度試しても出来ない――――今でもだ。
俺は己の身体を理解し、それから剣術に目覚めた。
理由は単純だ。魔法がダメなら剣だというのがファンタジー世界の俺の中での絶対的ルールだったから。
最初は家にあった壊れたクワから『クワ』の部分を取り外した棒きれでの素振りから始まった。
剣術がこの世界では無意味なんて事は書物に散々書いてあったが、魔法だって俺には無意味だ。
だったら、武器を持つしかないと行き着く。
五歳の神事でやっぱり無能だとハッキリした俺は、ますます剣術に入れ込んだ。虫みたいな弱い魔物を、自前の木刀で狩るようになった。
本当に攻撃すらあまりしてこないような雑魚狩りだ。
俺はある程度、自分の剣術に自信を持ち出した。
そして六歳の時に剣を手に入れた。正確には家から持ち出したのだが。
この世界には刃物なんて、料理をする為の物くらいしかないと思っていた。だが、剣は存在するのだ。
それは格式張った式典等で、飾りとして身に付けるような物でしかない。
下手をしたら、大きな魚を捌く時に思い出した様に持ち出されて以後は棄てられたりと可哀想なものだ。
両親は魔法士をしていたので、式典用の剣を物置小屋に眠らせていた。ゴテゴテと派手な装飾の施された、実用性皆無のムダに重い剣。
だが、それが俺を大きく鍛えたのかもしれない。
一応刃も付いているので武器として十分使える。それで俺は森に行くようになり、更なる修行も兼ねて重い剣を降り続けた。勿論、隠れてコッソリだ。
見付かったらバカにされるだけだから。
だが、昼からは幼馴染みのルカがよく遊びに来ていた。
なので森には午前中だけ行き、昼からは小屋の中で自分で重さを増した杖を振る修行に明け暮れていた。
万が一、ルカに見付かっても魔法の練習をしてるようにしか見えないからだ。
『ルシアン君、いつも杖振ってるのね』
そんな事を言われた時もあった。
そんなある日。俺は杖を振っただけで衝撃波を発生させて、小屋の棚を破壊したのだ。
『ルシアン君!今の風魔法だよね!?』
ルカの問いに俺は咄嗟に頷いた。
いつの間にか重い杖でも、小枝を振るように軽く振れるようになっていたのだ。
これなら魔法を使えるフリが出来ると考えた。ある意味で剣術はムダではなかったのだ。
それから俺はますます剣術に打ち込んだ。
時が過ぎ。
俺はクソ重たい飾りの剣すらも、目に見えない程の速度で振れるようになっていた。
そして、一層剣術が楽しくなり。森の魔物も気が付くと、楽に一撃で倒せるようになっていて自信が持てた。
俺は強い――――
それは間違いなかった。
その事実だけが俺を支えた。
だが、この世界では魔法を使えない者は、周りには認められない。風魔法が少し使えても、日常的な簡単な魔法も使えないから。
俺は『無能』などと呼ばれるようになった。
両親やルカだけは俺を信じてくれたが、殆んどは俺をバカにするようになる。
俺は悔しさを晴らす為、更に剣術に打ち込んだ。
考えてみれば、これまで魔法世界の常識に自分を溶け込ます事に精一杯だった気がする。だが、この世界の理に従う事が自分にとってどれだけの価値があるのか。
今、俺の隣には【魔法絶対主義世界】の【非常識】に驚いている女性がいる。彼女はこの後、おれをバカにするだろうか。
この剣を振るい、魔法が使えぬ愚者を…………答えは『否』だろう。
何故なら彼女の目の前にいる無能は彼女より有能である可能性が高いのだから。
そんな単純な事に気付けたのはルカのお陰かもしれない。結局いつだってルカが俺を励ましてくれていた。
(そういえばアイツ大丈夫かな?ガーゴイルは城を狙って来てるっぽいが……)
「レイバンさん!ここはもう大丈夫ですよね?俺は街の被害を見に行きたいので、そちらに行きます」
「あ。あぁ。――――って!貴殿は私の監視下……」
レイバンが何か言っていたが、既に俺は飛び回るガーゴイルを次々斬り落としながら城の外階段を下りて行った。
辺りを見るとサラン王国の魔法士も距離さえ取れれば、十分に健闘出来ている。
既に半分開かれている正門の前には今だ大量のガーゴイル。そして大量の死体。それはガーゴイルも……魔法士もだ。
俺はガーゴイルの群れに突っ込み、斬り捨てながら道を切り開く。
辺りの魔法士が驚いた表情をしていたが、やがて俺の無双っぷりに大きな歓喜の声を上げる。これは正直かなり気持ちいい。
その勢いに乗って俺は正門を飛び出した。
(何だこれ……城だけが狙いじゃないのか!)
阿鼻叫喚とはまさにコレだった。一般の者達も入り乱れてガーゴイルと戦っている。
そして死体。死体。死体。
もちろん街の人達のだ。
そしてその奥に、一際派手な戦闘を繰り広げている場所がある。
幾つもの叫び声と共に、王国の魔法士が数人空に打ち上げられた。吹き飛ばされたと表現するべきか。
そこには、ガーゴイルとは比べ物にならない魔王軍の強敵の姿が見え、俺は驚愕した。
「か、カリザリス――――何で四魔将のアイツが!?」
そして、それに対峙しながらも魔法士に回復魔法を施すベネットと、それをサポートするルカの姿があった。
これは運命なのか――――そう思うよりなかった。
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