魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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悲しき魂の解放を目指せ

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 ベルに突き立てた剣を抜き俺は考えていた。
 放っておいても死ぬ者に、ここまでする必要があったのだろうか……と。
 これでは、レイチェルを怨霊化させたコイツと同じではないのか……と。

 レブン王都の外れの静かなこの場所は、一層の静けさを取り戻していた。どれくらいの時が流れたのか。
 気付けばベネットは傷だらけのルカの治療に入っていた。

「ルシアン……レイチェルのアレは何?」

 不安が滲み出た瞳でルカが俺を見た。ベネットの瞳も同じ様に俺に真実を求めている。
 俺は全てを話した――――


 全てを話終えた後。再び場に沈黙という静けさが漂っていたが、王都の方から勢いよく空気を裂く様な音が聞こえてきて、全員が王都の方角のを見ていた。

「アレは……サラン王国の飛空艇か」

 俺がゲームを作る際。絶対取り入れたかったのは飛空艇だ。
 広大な世界を便利に移動するには、ワープポイントの要素を使うか、航空手段を使うかと問われれば迷わず空を選ぶ。
 やはり空への憧れは大きい。
 ある程度ゲームを進めるとサラン王国を始め、所々の国で飛空艇の開発最終段階に入る。

 既にかなり前から開発を進めていたのはサラン王国という設定だったが、ゲームでは王国が半壊していて復興に専念していた。
 俺がサラン王国を救った事で、その流れを変わったのか。飛空艇の完成が早まったのだろう。
 ならば、アレに乗っているのは――――

「街の方に行こう!」
「何なのアレ?」
「凄く大きい船みたいですけど?飛んでますね」

 重い空気は途端に空に散った感じがした。
 あまりに物珍しい物体が、空からゆっくりと王都の中心に降りてくるのだから。

 近くに行くと、大きなプロペラの音と風圧で飛ばされそうになる。普通は気球みたいな空気を入れて飛ぶような物をイメージするが、俺の想像の中ではヘリコプターの様なプロペラ式だった。

 大きな船体から階段が現れ。レブンの土地に数人降りてくる。
 その一人が俺に気付いた。

「おぉ。ルシアン殿!」
「レイバンさん!レブンの復興支援ですか?」
「ん?何故それを?」

 ゲームではレブン王国はサラン王国に助けを求める。
 レブンの復興をサランが助ける条件で、いずれはサランとレブンが一つとなり【サランブーム共和国】が誕生する……
 予定だった――――

 実はそれを実装する前に、俺は【マジックイーター】を売却してしまったので、それが実装されるかどうかは分からない。

「ここにサランの人が来るなんて、それしかないかなぁ……と思ってまして。あははぁ……」

 咄嗟に誤魔化したがレイバンはニッコリ微笑む。

「さすが、貴殿は鋭い洞察力をお持ちだ。
 もちろん、復興に来たが。支援ではありません。
 この土地は既にサラン王国の領土。
 レブン国王はサランに国の全権を渡した。今日はその土地の様子を見に来たのです」

(マジで!?随分と話が変わってるじゃねーか!ってかレブン国王も意外と無責任だなぁおい)

「そ、そうですか。こんな時にアレですが、一つお願いがあります!」
「どうしました?そんなに改まって。貴殿は我が国の英雄。遠慮などいりません。何なりと申してください」
「ゼクルートまで僕らを運んで欲しいのです」

 驚いた様子のレイバンだったが、直ぐに飛空艇の者達に号令をかけた。

「予定を変更するぞ!再び離陸準備!」
「そんな簡単にいいんですか!?」
「貴殿の頼みだ。きっと急用なのだろう。話は上で聞きます、とりあえず乗ってください」

 俺達は大きな飛空艇に乗り空へと舞い上がった。
 まだ旅の仲間である、ルカにもベネットにも何の許可も確認もとっていない。
 レイバンと共に、ルカとベネットも交えて俺の考えを話した。

 俺の目的は一つ。
 怨霊化したレイチェルを止める事だ。彼女は間違いなくゼクルートに向かったに違いない。自分の宝玉を求めて。
 俺に責任がある。彼女を中途半端に助けようとして、結局守る事も出来なかった。
 後、出来る事は、ゼクルートにあるレイチェルの宝玉を割って。彼女の魂を解放するしかない。

 話を聞いてルカとベネットが頷いた。

「そうだね!レイチェルの為にも」
「私も頑張りますよ!」
「ありがとう!二人共。大変だが必ず何とかしよう!」

 三人の意思が固まった所で、黙って聞いていたレイバンがそこに割って入ってきた。

「私も協力させてもらうぞ。我が王国での恩を返すチャンスだからな!よし!―――――全速力だ、お前ら!ゼクルートへ少しでも早く到着させるぞ!」

 レイバンが号令をかけると一層プロペラの風を切る音が激しくなり、飛空艇の速度が増した。
 飛竜程では無いにしろサラン王国の飛空艇は、この巨体からは想像も出来ぬ程に速い。
 これなら、おそらく明日の朝には到着出来るだろう。

 レイチェルの怨念はかなり早いので、ゼクルートが襲われる前に到着するのは無理だろうが。十分に加勢出来る筈だ。
 ルカに剣への魔法をかけてもらえば、怨念が相手でも斬る事が出来る。
 何とか国王の所へ行き、宝玉の事を伝えなければならない。レイバンもいるし、少しは話を聞いてもらえる可能性はある。
 僅かな期待を胸に飛空艇はゼクルートへと向かう。

 ――――――――――

 レイバンに、少し寝ておくように言われたが。結局さほど寝る事も出来ず朝を迎えた。
 雲一つない空の上。
 まぶしい朝日を目に受けながらも、うっすらと久し振りの故郷、ゼクルートの姿が見えてきた。

「ゼクルートの城から煙が上がってます!」

 船員の誰かが叫んだ。
 やはり既に始まっていた。幾つかの黒い霧が飛び回っているのが遠目にも見えてきた。
 そして激しく幾つも放たれる魔法。自体は一刻を争っていた。

「ルカ!魔法を頼む!」
「分かった。ルシアン……絶対、ムリはしないでよ」
「あぁ。もちろん。ルカは俺に付いてきてくれ。ベネットは怪我人の治療を優先して頼む」
「任せてください!ルシアン様」

 やがて飛空艇は、激戦が繰り広げられる城の上空へと到着した。隣ではレイバンと、他何人かのサランの魔法士が待機している。ここからが本番だ。
 
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