魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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ゼクルート魔法士団の死闘

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 ◇◇◇

「第四班は一階。第三班は二階。
 第二、一班は三階だ。私と団長は国王陛下の護衛に回る!
 新人魔法士達は城の外に散ってる雑魚に対応しろ。
 おい、セシル!何処に行く?」

「ヴィクトリア隊長、僕も城内を!」
「命令違反は許さん。新人は外だ!おまえは外で新人の指揮をとれ」
「わ、わかりました!」

 ゼクルート魔法士団、第一士隊はこの日。城の警備当番だった。
 隊長のヴィクトリアは、まだ外も暗い明け方。眠気をとばす為、城の庭にて風に当たっていた所。空の異変に気付いた。
 それから直ぐに、不気味な黒い霧が散り散りになって城を襲って来たのだ。

 おそらくはゴーストの類いだと判断した。
 はっきりとした正体も、目的も分からぬが。城を攻めて来た敵に対してヴィクトリアの対応は早かった。
 魔法は普通に通用するし、個々の敵は決して勝てない程のモノでは無かった。だが、消しても消しても次々現れる。

 優秀な王国魔法士達は魔法による攻撃で、次々敵を消し飛ばしていくが。一向に密度は変わらない。
 個体差があり時折強いのも混じっており、精神力を多く消費する強力な魔法の使用も余儀なくされる。
 精神力を削られる消耗戦になるのは想像に容易かった。


「シバ団長!数が多すぎますね」
「それよりヴィクトリア。敵の行動がおかしい。目的は国王陛下ではないのか?」
「私も感じました。上に来る程に少ないですね。霊体ならば上階の窓から侵入して来れる筈なのに、何故か下に集中している気すらします」

 団長のシバとヴィクトリアの魔法は、絶えず広範囲魔法で多くの敵を消滅させている。
 敵は無差別に魔法をぶちかましながら、ムダに飛び回るだけだ。まるで騒ぎを大きくして、おとりになっているかの様な――――

「ヴィクトリア。これはやはり、おかしい。おまえは下に行き様子を見て来い。ここは、何とかなりそうだ」
「大丈夫ですか?」
「早く行け。手遅れになるかもしれんぞ」
「分かりました」

 ヴィクトリアは最後に一際巨大な魔法を繰り出し、辺りの敵を蹴散らした。


 ◇◇◇


「何だよコレ!城の外の方が酷いじゃないか!」

 セシルは城の外に出て絶望を見た。
 訓練学校を主席で卒業して直ぐに彼は魔法士への道を進んだ。
 その魔法才能は益々の頭角を見せ、魔法士の中でも認められるようになった彼は、当然の様に将来の士官候補として自信を持って務めていた。

 そんなセシルが見たのは空を覆う黒い闇の群れ。
 闇の中に赤く光る眼の様なものが有り。口の様なものも見える。
 魔法士見習いのセシル。だが、他の見習いとは違い慌てる事無く魔法を繰り出す。一体一体を確実に消滅させていく。それしかなかった。

「皆、慌てるな!決して強くはないぞ。落ち着いて一体ずつ始末していけ。城の中に向かうのは深追いするな!俺達の任務はあくまで溢れたゴミ掃除だ」

 敵の半分は、見習いの魔法士達を無視して窓等から城の内部に入って行く。
 奴らの狙いが何かなんて、セシルには検討もつかなかった。だが城内の魔法士が、激戦になっていく事は想像出来た。

「クソッ!少しでもここで数を減らしてやる!」

 他の者が単体を相手にする中。セシルだけは欲張る様に数を相手にしていた。
 彼は実績を欲していたのだ。
 誰よりも手柄を立てて昇格したい一心だった。
 自分では深追いするなと言っておきながら、城に向かう敵にも容赦ない魔法攻撃を仕掛けていた。

 そして、やがて敵に個体差がある事に気付く。
 雑魚だと思っていた。しかし、中には一撃で片付かない奴もいる。無差別に攻撃していたセシルに、特別強い数体の敵が目を付けた。

 敵は一同にセシルに攻撃を集中させた。
 彼は焦った。無数の霊体が一斉にセシルを襲ったのだ。まだ未熟な彼には対処出来る筈もなかったのだ。

「う、うわぁぁ!」

 一気に囲まれ、一寸先も見えぬ闇にセシルは死を覚悟した。
 その時――――
 彼の周辺の闇が晴れた。
 見れば、草色に輝く魔法の風が彼を中心に吹き荒れていた。その魔力の元は空から伸びてきているようだ。
 セシルはを見て大口を開けた。

 いつの間にか朝日が差し始めた空に浮かぶ、巨大な船。
 それは、ゼクルート王国でも開発が進められている【飛空艇】と呼ばれる物に違いなかった。
 飛空艇の上から、いくつもの強力な魔法が放たれ、辺りの闇を晴らしていく。

「あの国旗……サラン王国の飛空艇?援護に来てくれたのか?」

 救世主登場に辺りの見習い魔法士達は沸き上がった。
 もちろんセシルも心底ホッとした。
 内心は怖くて仕方なかったのだ。小刻みに震える脚が、彼の死の瞬間の恐怖を体現していた。

 飛空艇は、ゆっくりと地上に近付いて来る。
 場所的に地上に着陸は出来ないようだが、数人のサラン王国の魔法士が城の城壁の上に飛び降りる様にして、船から移動していた。
 そして城壁内側の階段を駆け降り、辺りの敵と戦い始めた。
 その後、少し遅れて更に四人程が降りて来た。
 最初の一人以外の三人は服装もバラバラだし、魔法士では無い様に見える。

 最初の一人。他の魔法士達に似た服装の、長い黒髪の者。おそらくは女性だ。
 先ほどと同じ強力な風魔法を放っている所から、自分を助けてくれた者だとセシルは感じた。

 もう一人は金髪が眩い。同じような風魔法を駆使して、辺りの闇を蹴散らしている。
 黒髪の女性程ではないが、かなり強力な魔法を使っていた。こちらも髪の長さ、シルエットからおそらく女性だろう。

 もう一人は小柄な身体で赤いショートヘアー。間違いなくまだ幼い少年か少女だと思う。
 戦闘専門では無いのか、船から降りるなり倒れている人に駆け寄っていた。回復魔法が得意なのかもしれない。

 最後の一人。身長と体格から確実に男性だと分かる。男も直ぐに階段を駆け降りた。
 だが、そこからが異常だった――――
 信じられない速度で敵に接近。赤く光る何かを振り回し、途端に霊体は四散して消える。

 確実に接近戦に特化した動きだった。
 男は見てる間に凄い速度で敵を散らしながら、数を一気に減らしていく。セシルの知らない魔法だった。
 しかし、かなりの強者だとは分かる。その鬼神の如き男は、光る何かを振り回しながらこちらに近付いて来る。

 そして、セシルは驚いた。
 その顔に見覚えがあったからだ。
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