魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
42 / 79

不安を抱えて目指す第八の泉

しおりを挟む
 ◇◇◇

 ――――旧レブン王国・王都――――

 元、レブン国王。ランド・アズカバ・デュルハーブ六世は、己の首に触れる鋭いナイフの冷たさを感じながら、目の前の玉座に座る悪魔を睨み付けた。
 どす黒い炎の様な色で不気味に光る眼球に、冷静さを奪われながらも。嘗てこの国を納めていた者としての威厳は忘れまいと、威勢よく言い放った。

「この国は既にサラン王国に譲り渡した!お前達が支配したとしても、直ぐにサラン王国の軍勢が押し寄せるぞ!」

 ランドは国民の命を考えてレブンの地をサラン王国に全て委ねた。しかし、寛大なサラン王国の国王は、この土地の統治は今まで通りランドに委ねてくれたのだ。
 勿論、サラン王国の街という扱いにはなるが。
 それでも、これまでレブンを築きあげてきたランドにとっては、大変ありがたい話だった。

 しかし、今。目の前にある嘗ての玉座に座っているのは、レブンを滅ぼした魔王軍の最高司令者である。
 圧倒的な恐怖を辺りに漂わせる存在感。そのおぞましき姿は、嘗てレブンの城を落としに来た、意外にも美しい女性とは全く異質な存在であった。
 
「サラン王国がどうした?奴等にこの魔王軍から再びここを奪還するだけの力があると思っているのか?」
「あそこには神の如き力を持つ英雄がいる!お前達も以前、その者によって退けられたと聞いておる」

「ふん。そうだな……だからこその取引だ。それに、忘れるな。対価にしてるのは元、レブン国王……お前の命では無い。お前の妻や娘の命だという事をな」

 ランドは何も言えず、ただ。悔しさに唇を噛み締めた。
 そこに一人の小柄な男が霧の様に突如現れ、玉座に座る者に近付き何やら小声で話かけた。
 圧倒的な恐怖を司る玉座の悪魔は、相応たる不気味な笑みを浮かべ呟いた。

「そうか!なるほど……そういう事か。ならば話は早い」

 魔王軍の中で何かが大きく進歩したのだと感じた。
 今まで殆んど表情を変えなかった、その悪魔は喜悦の表情と共に立ち上がり。
 声高々に叫んだ。

「今宵は最高の気分だ。故に我は約束しよう。お前がもし、私の言う通りに出来たならば。お前の娘は勿論の事、この国には今後一切手を出さないと誓おうではないか」

 悪魔がそんな約束を守るとは到底思っていない。
 だが、ランドには選択肢が無かった。
 愛する妻や愛娘を守る為には……と。


 
 ◇◇◇


 ベネットは上機嫌で鼻歌を歌って歩いている。
 俺達はそんな彼女について歩く。
 目的地は勿論、ベネットのおじいさんの所だ。

 やがて、飛竜の独特な鳴き声が微かに耳に届き。そして大きな煉瓦造りの建物が見えてきた。
 特に建物が壊れているとかは無いし、飛竜の鳴き声が危機的な感じでも無い。
 少なくとも何かに襲われている事はなさそうだ。

「ベネットちゃん?飛竜ってさ。もしも、おじいさんが失くなったら誰が世話するの?」

 ルカがあっけらかんと、もしも話を繰り出した。

「お、おい!ルカ、不謹慎な事言うなよ!それは死亡フラグに近いぞ!」
?」
「大丈夫ですよ、ルシアン様。おじいさんだって、もうかなり高齢だし。私だってそれくらいは分かってますから」

 ベネットは明るく笑ってみせる。俺にとってはあまり笑えない話なのだが、二人はそんな事を知る由も無いだろう。

「飛竜は寿命が短いので、おじいさんより先に亡くなるのは飛竜だと思います。コアちゃんは特に、もう飛竜の中では高齢だし末代になるので」
「そうなんだぁ……何か可哀想だね」

 可哀想な事になるのが、ベネットやおじいさんかもしれないと思っている俺にとっては今だに緊張感が拭えない。
 そして、おじいさんのいる丸太小屋が見えた。

「おじいちゃん?また飛竜頼みたいんだけど……あれ?」

 中におじいさんは居ないようだ。
 否応なしに俺の心臓の鼓動は早くなった。

「飛竜の所に行ってみよう!」
「え?あ、うん。そうですね……そっちにいるのかも」
「ルシアン。何をそんなに焦ってるのよ?」
「いや。別にそんなつもりは無いけど」

 俺達は煉瓦造りの建物の中に入って行く。
 相変わらずバカでかい飛竜、コアーアイがそこに鎮座していて、俺達を見るなり一声嘶いた。

「コアちゃん、おはよう。おじいちゃん何処行ったの?」

 飛竜を撫でながらベネットが尋ねる。
 もちろん飛竜に人の言葉が分かる事は無いと思うが……
 
「おはよう。ここにおるぞ!」

 飛竜が答えた……わけではなく。裏から、おじいさんがヒョッコリと顔を出した。
 なんて事ない元気なおじいさん。
 なんとも言えない安堵のタメ息が俺の口から漏れた。

「心配しておったぞ。まぁ、サランが無事なのを知ったので、きっと大丈夫だとは信じておったがの。ところで、また何処かに行きたいのかの?」 

(心配したのはこっちだよ、じいさん)

「サラゲスト山脈の頂上までお願いしたいのです」

 おじいさんは自分の髭を撫でながら「なぜそんな所に?」っと考え込む。
 確かにあの場所に泉がある事を知る者は少ない。
 ロッククライミングで挑戦して、大半は滑落死するからだ。
 生きて帰った者自体が少ないので、殆んどおとぎ話級の情報しか残っていない。

 しかし、俺の話を信じておじいさんは飛んでくれる事になった。考えてみればゲームでは、おじいさんもベネットも死んでしまうので、自分で飛竜を飛ばす事になったのだが。
 結局ここまで何も無かった。

(やっぱ、カリザリスを事前に殺したのが良かったか?)

 原因は分からないが、おじいさんとベネットが死ぬイベントは無くなったようだった。
 おじいさんの操縦で飛竜は空高く舞い上がる。
 第八の泉の洞窟、サラゲストの竜の巣までは直ぐそこ。
 名前通り、そこは果てしなく大きな『ドラゴンの巣穴』だった。

 死亡イベントが無くなったとしても、誰かが死ぬかもしれない状況なのは変わらない。
 ひたすら大きな巣穴の外周に沿って、足場の悪い場所を螺旋階段の様にグルグル下りて行く事になるとは、ルカもベネットも知らないのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...