魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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幼馴染みは戻らない

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 ルカは軽い頭痛を感じて頭を押えた。
 湿った空気の匂いは、自分が洞窟内にいる事を脳に認識させていたが。辺りの風景は、少し前と全く異なる物だった。
 まるで違う場所に来たような感覚すら覚える。

 思えば少し前――――
 ルカは第七の洞窟に入ってひたすら、敷いてある木の板の上を辿るように歩いて来ただけの筈だったのだ。
 だが、何故か行き止まりに辿り着いてしまった。
 ベネットは確かに、木の板の上を歩いて行くだけで泉に到着した……と言っていたのだ。
 それが何故か行き止まりになってしまったのだから、戸惑うのも仕方なかった。

 ただ、問題はその後だ。 
 突然の眠気に襲われて抵抗も出来ず、ルカの瞼は強制的に閉じられた。それはまるで、催眠魔法をかけられた様な感覚。
 そして今。目覚めたのだ。

「あれ?こんな所、歩いてたっけ?」

 そもそも、周りの壁が違った。
 洞窟の壁はゴツゴツした岩肌が剥き出しの壁だった筈。しかし、今見えている壁は朽ちていて、汚れた赤茶色をした煉瓦。
 つまりはここは自然に出来た洞窟では無く。人工的に作られた建物の中の様だった。
 もしくは迷宮と呼ばれる所か。
 第六の泉のあった場所が丁度こんな雰囲気だったのを思い出す。

「ひょっとして私、木の板を踏み外して落ちちゃったのかな?でも、確か下は水脈だって言ってたしなぁ……」

 辺りを探索しながら、不安を誤魔化すようにルカはわざと声に出して現状を把握しようとした。
 実は元々ルカはかなり臆病だった。
 これまで数々の冒険を乗り越えてこれたのは、ルシアンが側に居たからに過ぎないのだ。
 そんなルカの不安を更に高めるように、奥の暗闇にうっすらと何かが見える。思わずルカの身体は硬直した。

 怖いもの見たさで近付いて見ると、そこには牢獄の様な鉄格子の部屋があった。
 何かと思い鉄格子に近付くと、中には二人の女性が横たわっていた。
 死んでいるのか、生きているのか分からないが、ルカは思わず「ひぃっ!」と声をあげた。
 その直後。
 後ろから突然声がかけられ、ついさっきまで出していた自分の声すら呼吸と共に止まってしまった。

「漸く目覚めたか。あまりウロウロするな。大事な人質に勝手に死なれては困るのでな」

 声の方を振り向き、ルカの顔は恐怖に染まった。
 そこには身長二メートルは、ありそうな大きな人が立っている。
 いや。それは人の形をしているが人ではない。
 その者の頭には四本のつのが生えていた。眼球は赤黒く、口元は犬の様に前に突き出て、横にも裂けるような大きな口。
 上半身裸の背中からは、黒い羽の様なモノが生えている。

 一目で『悪魔』という言葉が浮かんだ。
 少なくとも友好的な感じではない。寧ろ、ハッキリとその者は口にしていたのだから。
 ゛大事な人質 ゛と。
 つまり、これはヤバイ状況だ。
 ドラゴンを前にしても立っていられたルカも、目の前の悪魔の姿には腰が抜け、その場に尻餅をついた。

「な、なに?悪魔……た、助けて……」

 その悪魔は、怯えるルカに不気味な笑みを浮かべた。


 ――――――――――

 
 二十分程前だろうか。
 ベネットの言葉で、俺達は領主館に向かった。
「ルカ様遅いですね」と、何気ない一言だったが。その時、既に三時間が経過していたのだ。
 確かに遅いと思った俺達は、既に戻っているかも?という考えでここに来たのだ。
 丁度、その領主館の前で一人の魔法士に出くわした。

「あれ?ルカはまだですか?」

 その魔法士はルカを洞窟入り口まで送った者だった。
 しかし、俺の質問に質問で返ってくる。

「やはり戻ってないですか?あのお嬢さん。全然出て来ないので、僕が用を足してる間に洞窟から出たのかと思って。それで、一度確認に戻って来たんですが」

(ようするに、コイツは立ちションしてたのか……それで戻ってくるとか結構、無責任な奴だな)

 洞窟までは往復一時間。
 ベネットは二時間で戻って来たので実質、洞窟なんて一時間かからない。まして、ベネットより歩くのが早いルカが、さらに遅い事は考えられなかった。

「ルカ様に何かあったんですかね?」

 ベネットの言葉に不安を感じて、俺は洞窟へ様子を見てくる事にする。
 一人しか入れないので、ベネットには領主館で待っててもらう事にして、俺と魔法士は再度洞窟に向かった。
 
 鍵を開けてもらい、俺は洞窟に入る。
 地面は少し柔らかい。しかし、別に不思議な事では無い。下は岩では無く土だし自然な事だ。
 でも、一応俺は木の板の上を歩いて行く。すると、途中の分かれ道で木の板も二方向に分かれて敷いてある。

 ベネットからは分岐は無いと聞いていたのだが、とりあえず俺はルカを探してしらみ潰しに歩く事にしたので、両方とも行ってみる事にする。
 一方の道は泉まで直ぐに辿り着いた。
 しかし、もう一方は暫く進んで行き止まりとなったのだ。

(アイツどこ行ったんだ?どっかで入れ違いになったか?)

 洞窟内部での入れ違いはあまり考えられない。だが、洞窟までの道はルートによってすれ違う可能性はある。 
 俺は一旦外に戻って待ってる魔法士に問うが、やはり誰も出て来ていないと言う。
 洞窟に来るまでにすれ違った可能性を考え、一旦街に戻る事になった。

 ――――――――――

「洞窟にいない?既に街の何処かに戻っているのでは?」

 ルカの事を伝えた俺に、ランドは首を傾げた。

「いや。街にはいませんでした。後は洞窟内で床が崩落した可能性も考え、注意深く足元も見てたのですが。そんな形跡も無かったんですよね……」

 隣では、ベネットも天を仰ぎ考えを巡らせていた。

「おかしいですね。道は一つしかないのに……」
「ベネット。本当に分岐は無かったのか?」

 ベネットはキョトンとした顔をする。
 直ぐに「無いですよ」と、俺の質問に答え。泉までは、行き止まりも無かったと言う。
 何か釈然としないながらも、ルカが入れ違いで俺達を探してる可能性を考え、もう暫く領主館で待ってみる事にした。
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