魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
47 / 79

ヴィルゼフ・ヨハネにて宴は行われる

しおりを挟む
 一時間が経過してもルカは戻らない。
 洞窟が崩落したのであれば直ぐに探しに行くが、そうでは無いのだ。
 洞窟内部は確実に誰もいなかった。
 ならばルカは何処に行ったのだろうかと考えるが、もっぱら検討もつかない。勝手に何処かに行くような奴では無いと俺は分かっているし、妙な胸騒ぎだけが俺の心情を煽った。

「やはり、おかしいですね。ランドさん、僕はもう一度洞窟を探して来ます」
「いや。今日は既に外も暗い。それに洞窟には、いなかったのでしょ?ならば、少し待った方がよい……」
「そうなんですが。何か引っ掛かるんですよね……胸騒ぎがするというか。何か他にあの洞窟に隠し通路があるとか、無いですかね?」

 俺が必死でランドに尋ねると、何故か彼は少し落ち着かない様子だった。その様子を見て、本当に隠し通路でもあるのだろうか?と、俺が考えたのも当然だった。

 妙に静かな領主館の中に一層の静寂が訪れた。
 そして、俺は思ったのだ。

(なんでここは、こんなに静かなんだ?ランドさんしか住んでいないから?)

 城ではないが、ここは一応領主が住む館。
 それにしてはあまりに人の気配が無い。そもそも、彼の娘や妻。つまり、元の王妃や姫様はどうしたのだろうか。
 その疑問を何気に俺はぶつけてみた。

「え!?妻や娘?――――それは……」
「ひょっとして、以前の攻撃で亡くなられたとか……では、ありませんよね?」
「あ、あぁ。実は……そうでしてな」
「そ、それは失礼な事を聞いてしまい。すいませんでした」

 余計な事を聞いてしまったと後悔した俺だったが、横からベネットが驚いた感じで口を挟んだ。

「え!?でも、街の人は。王族の方々が無事なだけでも良かったって――――
 それにレイバン様が言ってましたよ?
 城は破壊されたが、レブンの魔法士数人が王族の方々だけは、サラン王都まで避難させに来たと……」

 俺はベネットの顔を見てから、ランドをちらり見た。
 彼は難しい顔をして黙り込んでしまった。
 何か隠している気がしたが、俺はそれ以上何も聞けなかった。
 しかし――――その少し重い空気は、二階から聞こえた大きなガラスの割れる音で破綻した。

「な、なんだ!二階だ!」

 俺は直ぐに館の二階へと駆け上がる。
 沢山ある部屋のうち。一つのドアが突然開き、そこから一体のガーゴイルが廊下へ飛び出してきた。

「な、なんでこんな所に!」

 俺は直ぐに剣を抜き、ガーゴイルを両断する。
 事態はアッサリと終息した。しかし、次の瞬間。その死体が突然霧の様に蒸発し始める。
 俺は警戒して後ずさったが、そのもやが晴れると同時に死体は消滅し。代わりに、その場所に一枚の布が残された。

 その布地を見て俺の心臓がドクンと脈打つ。
 それは、見覚えある物だったからだ。

「ルシアン様!これっ、ルカ様の服です!どうして、ガーゴイルがルカ様の服を?」

 言葉が出なかった。
 俺は何が起きているのか瞬時には理解出来なかったのだ。
 ベネットがルカの服を拾い上げると、その下の床に文字が刻まれていた。

 ゛ヴィルゼフ・ヨハネにて宴は行われる ゛

 俺は、その言葉に聞き覚えがあった。
 『ヴィルゼフ・ヨハネ』とは城の名前だ。旧レブン王国から北へ向かった先にある岬。そのさらに北。沖の方に見える島。
 その島自体が一つの国【ヴァンドルク王国】と呼ばれ。ヴィルゼフ・ヨハネ城は、その国の城なのだ。

 しかし、その国の王の姿を見た者は誰もいない。
 寧ろ、誰もその島には近付かない。その島から大陸に渡ってくる者すら、年に一人見るか見ないかという程の辺境の島である。

 その実態は……嘗て魔王が支配した国だった。
 ガーゴイルがその言葉を残した事で。その島が現在もゲームと何ら変わらない、魔王軍の本拠地だということは考えるに容易い。

「くそっ!くそっ!」

 俺は悔しさのあまり、血が噴き出す程に拳を壁に叩き付けた。硬い石の壁はボロボロと崩れ落ちていった。

 ルカが魔王軍に拐われた事は間違いなかった。
 たまたま魔王軍に遭遇しただけならば、単純に殺される筈であり、こんなこざかしい真似をする必要は無いのだ。
 これは明らかにヴィルゼフ・ヨハネへの誘導であり、完全な罠だと分かる。
 そして、それは。今まで魔王軍の魔将を葬ってきた、俺に対して送られた招待状だと確信していた。

「俺のせいかよ!」
「ルシアン様……」

 ベネットはそっと俺の手をとり、血だらけの拳に回復魔法を施していた。
 少し離れた所では、ランドが青ざめた顔で何やら口をパクパクさせている。

「おい。あんた、何か知ってるのか!?」

 俺の声は抑えられず荒々しくなっていた。
 心のどこかでランドに対して、何かを隠していると感じていた為。ここにきてそれが爆発してしまった。

「ゆ、許してくれ!仕方がなかったのだ……」

 ランドは小さく身体を震わせながら全てを自白した。
 俺達が泉を目指して来る事は、既に魔王軍に検討を付けられていたようだ。
 ランドの話はこうだった。
 魔王軍の総司令を名乗る悪魔の命令により。俺達を個別に分断させ、一人づつ洞窟に誘導するように指示されていたようだ。
 彼自身も妻と娘を人質にされているらしく、従うしかなかったのだと言う。

「じゃあ、洞窟の危険性は最初から私達を騙す為の作り話だったのですね。自分の家族を人質に取られたからって、私達を売るなんて。元国王様とは思えませんね……」

 ベネットの容赦ない言葉。同じ被害者であるランドには、少し可哀想にも思えたが。
 俺としては正直、スッキリした。
 コッソリとでも伝えてくれていれば、俺達だって別の形で協力出来たかもしれないのだから。

 俺がその場を立ち去ろうとすると、ランドがすがるような目付きで懇願してきた。

「ルシアン殿。私の妻と娘も救ってはくれまいか!?」
「勝手が過ぎるんじゃないですか?」

 俺の代わりに答えたベネットの言葉にランドは項垂れた。
 だが、俺はどちらも何とかするつもりだった。結局、自分が彼等を捲き込んだ事に違いないから。
 だが、俺は敢えて無言でその場を後にする。
 騙された事への憤りだけは、どうしても体現しておきたかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...