魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
53 / 79

ヴィルゼフ・ヨハネでの【M ・I】

しおりを挟む
 女性二人を担いで迷宮を戻る。
 やがて階段を登ると玉座の間へと出てきた。ここまでは特に問題は無い。
 問題は、この玉座の間から出る方法だった。と、言っても扉は一つ。その扉から出る以外には無いのだ。
 迷宮から、どこか別の場所に出る道がある可能性も考えた。しかし直ぐにそれは頭の中で却下した。

 そんなルートがあるなら、わざわざ魔将であるワングに玉座の間を守らせる必要が無いからだ。
 つまり俺は、どう考えても隠せない女性二人を担いだまま、ワングと対面する必要があった。それは超絶不自然極まりない。

 ワングには見付かってはいけない。
 俺は考えた。この城の構造。ワングの行動パターン。その他、何らかの手段。
 まず、この玉座の間。入り口は確かに一つしかないが、その壁の向こうが何も無いわけではない。
 ポツンとこの部屋だけが存在するわけがないのだから。
 ならば、壁の向こうは城の外か。もしくは別の部屋だ。

 答えは簡単だった。
 なんせ、この玉座の間の右隣が魔王の部屋。つまりは俺が案内された場所だ。単純に右の壁をすり抜ければ、魔王の部屋へ行く事が出来る。
 魔王の部屋から出れば、廊下越しにワングが立っているのは見えるのだが、出口はワングが立っている場所とは反対方向だし、どうとでもなる。
 ルカとベネットを街の外に連れ出す時も、そこまでは何とかなったわけだし。

(ってか、どうやって壁を抜けるんだよ……)

 名案だと思ったが、いきなり詰んだ。
 ぶち壊すのは簡単だが、俺の剣術を持ってしても全く無音で壊すのは無理がある。さすがに中で激しい音がしたら、ワングが飛び込んで来るだろう。
 やはり奴をどうにかしなければならない。
 だがワングは二十四時間、扉を離れない気がする。人間じゃないから、トイレにもいかないだろうし。簡単には玉座の間の扉を放置しない。

 ところが最初、俺がここに来た時。
 ワングが迷宮の奥まで俺を案内した。あの時は交代の兵士がいたのだ。
 それが今はいないという事は。あれは、俺が来る事を見越しての事前の対応だったのだろう。

 何か、あの時のようなイレギュラーはないか?と、暫し考えた。だがどれだけ脳内でシミュレーションを繰り返しても、玉座の間では扉を開かれただけでアウトだ。
 やはり、ここで何をしてもダメだと結論付けた。
 
 そして一時間後――――。
 俺は一人。玉座の間の扉を豪快に開き、そこにいるワングに問う。

「異常は無いか?」
「これは魔王様。地下の方で何か音がした気はしましたが、ここは何人たりとも通っておりません」
「うむ。お前がここを守っておれば安泰だ。我は部屋に戻る」

 隣の部屋に入り、俺は鍵をかけた。
 もちろん部屋の壁が壊れている事はない。ただ、俺は部屋の端に鎮座する巨大なベットを動かす。それはキングサイズ……いや、魔王サイズか。
 とても大きいが、動かせない事はない。
 そしてベットの下にある小さな穴を広げる様に、床を剥がしていく。すると人が通れる程の穴が開いた。

 俺が飛び降りると。そこは、先程まで居た迷宮の行き止まり部分だった。
 そして俺は、その端の方に寝かせていた女性二人を一人ずつ担ぎ。煉瓦を部分的に抜いた壁の部分を、梯子の様に使い。上の部屋へと上げた。
 そう。俺は考えた結果。
 玉座の間の壁では無く、下から魔王の部屋の床に向けて。天井を破壊したのだ。念のためベットのあった辺りを狙ったのは、異変があっても気付かれ難いからだ。
 半分賭けに近い行動だったが、成功だ

(俺、イーサン・ハントになれるんじゃね?正にコレはミッションインポッシブルだなぁ)

 女性二人を部屋に上げてから、俺も悠々と穴から部屋に戻る。
 後は穴の開いた床に板でも置いておく。下の瓦礫は処分しておいたから、迷宮から天井を見られても暗くて穴が開いてるとは分からないだろう。
 最悪の場合の避難ルートも確保出来たし、後は何事もなかったかの様に、ベットを戻す。
 これで、万が一部屋に入られても穴があるとは気付かれない。

 我ながら惚れ惚れする程に完璧な仕事だった。
 ――――と、俺は思っていた。

 ところが、突然。
 いる筈のないワングの声が背後から聞こえたのだ。俺はビクッと後ろを振り向いた。ワングが立っている。

「何をしてるのですか?魔王様」
「は?何で?鍵は?」

 あまりに不意な状況に、俺は思わず魔王様的言い回しすら忘れて問い掛けていた。
 ワングは顔色一つ変えずに答えた。

「鍵なんて私には意味が無いと、知っている筈ですが?」
「そ、そうか。お前、扉の警護はどうした?」

 既に状況はどうしようもないが、せめて何とか場を取り繕えば何とかなると判断し。俺は逆に問い詰めた。
 しかし、次の瞬間。
 これがそもそもの間違いだったと諦めさせられる言葉をワングが吐いた。

「私があの扉を警護した事なんて、今まで一度も無い。魔王様……
 いや。ブライト国王と呼ぶべきか?
 私が見張っていたのは誰の侵入でも無い。おまえの行動だよ」

 頭が真っ白になった。
 今まで俺がやっていた芝居は何だったのかと考えると、とても恥ずかしくなってくる。どうやら俺はコイツらを甘く見ていたようだ。

 そしてワングは、俺の事をブライト国王と呼んだ。魔王とブライト国王は同じじゃないのか?という疑問も頭をよぎるが、今はそれどころではない。
 最初から疑われていたなら、ルカとベネットを逃がしたのもバレている可能性がある。ここから何とか挽回して隙を作り一刻も早く街に行きたいところだ。
 
(コイツがどこまで知ってるか探るか……)

「最初から知ってたのか?じゃあ何で泳がせた?」
「おや?どうやら記憶は戻っていないようだな。魔王の記憶もブライトの記憶も……
 その様子では、未来を読む能力は何処かに置き忘れたのか。
 閣下の心配も、まるで無用だったようだ。
 さそがしお喜びになるだろう」

(未来を読む?空気なら読めるが?まぁ、俺はブライトなんかじゃないけどな)

 空気を読むのも、都合良く未来を展開させる能力という意味では、軽い未来予知並のチートだろうが。
 あからさまな未来予知なんて、そんな能力があったなら今頃こんなピンチに陥っている筈が無い。
 
 何か勘違いはしているようだ。だからといって、打開策は思い付かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...