魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
58 / 79

これは初めから運命だったのか?

しおりを挟む
 薄れゆく意識の中、俺は懐かしい夢を見ていた。
 それは前世の自分。一生懸命生きた坂田隼人が、意外と呆気ない最後を迎えた。平和な日本という国の夢だ。

 俺――――坂田隼人は神奈川県の外れの小さな街で、トラック運転手の父と、看護師の母の間に生まれ育った。
 そんな俺は、幼い頃から変な子供だったとよく親に聞いていたし、実際に変な子供だったと自覚もしている。
 一人遊びが過ぎるというか……子供なんて、皆そんなもんだとは思うのだが、俺は異質だった。

 誰もいない部屋で、よく一人で会話していたからだ。
 子供の頃。確かに、俺に語りかけてくる存在がいたのだ。俺はその何かとよく喋っていた気がする。
 何を話していたかは殆んど覚えていなかったが。

 そんな俺は八歳のある時。突然意識を失い病院に運ばれる事になった。
 その日から俺は半年程。病院のベットで原因不明の病と戦い続ける日々だったのだ。
 そして九歳の誕生日を迎える前。
 俺が目を覚ますと。両親や親戚がベットで眠る俺を囲っており。皆が何故か泣いていたのだ。

 俺は一度心肺停止にまで陥ったのだと聞いた。
 その後。突然息を吹き返した俺に、親戚皆は安堵の涙を流していたのだ。九死に一生ってやつだろうが……
 丁度その時から、俺の頭の中で語りかけてくる存在もいなくなった。代わりに俺の身体はスゴい勢いで回復し、一週間後には退院出来るまでに至ったのだ。

 結局あの時の病気は分からない。
 けど、それからは。家のベットで寝る度に、毎日変な夢を見るようになったのだ。
 当時はアニメも漫画も、さほど興味が無かったのに、何故かその夢は魔法使いが溢れる不思議な世界の話だった。

 それから俺はその夢に似た物語が好きになった。
 ゲームやアニメ、漫画、ラノベ。色々なジャンルでファンタジーを漁った。

 俺は小さい時から両親が不在の事が多く。所謂、鍵っ子で、ご飯も作り置き。兄弟もいないので、家に一人の事が多かった為か。暇さえあればパソコンを弄ったりしていて、そんな趣味の流れから情報系の高校、専門学校と通うようになった。
 その後はソフトウェア製作会社に勤めながらも、自作アプリを作ったりして生きていたが。

 ある時、興味で始めたのがゲーム製作。
 当時、大なり小なりゲームを自分で作って配信する流れが、主流になりつつあった事から。
 俺は初めて【マジックイーター】というゲームを作ったのだ。

 ゲームの題材は、俺が子供の頃から夢に見てきた不思議な世界の話。子供の頃とは言え、大人になっても度々見ていたので、シナリオ製作には特に苦労しなかった覚えがある。
 それが大ヒットしてから俺の生活は一変したわけだが。
 結局、その人生はつまらない最後を迎えた。

 そういえば、あのゲームを作ってる時ってのは、何かこう……使命感みたいなのを感じていたのだ。
 夢に忠実にゲーム製作をすればする程、のめり込んでいて。ご飯も食べずに作っていた事もある。
 しまいには『あなたが世界を救う……』なんて、ゲームとごっちゃになったような、謎の幻聴が聞こえてきたりしていて。
 今、思うと。あの時は、とてつもなくヤバイ状態だった。

 ゛早く……目を覚ましなさい ゛

 (――――ってそう、そう。こんな感じの脳内で響く声。
 たまに聞こえていたよなぁ。ってあれ?そう思えば、あの声は昔から度々聞こえていた気もするな……
 いつからだったんだっけ?)

 ゛目を覚ましなさい…… ゛

 今、確かに声が響いた気がした。
 そして途端に俺は息苦しくなる。まるで突然、辺りの空気が無くなったかの様に。俺は必死になって、大きく息を吸い空気を肺に取り入れようとした。
 すると――――

「ルカ様。直ぐ治りますからね」

 突然、ミュート機能を解除されたかのように。音が……声が……耳に飛び込んで来た。瞳には、パッと光が射し込んだように視界が甦る。夢から覚めたのだ。

 目の前では左肩に剣が刺さったままのルカに、ベネットが回復魔法をかけていた。
 その光は今までで見たこと無い程、激しく大きく青い光を放っている。ベネットが最大の魔力を放出して、ルカを治療しているのだ。

 そして、辺りを見れば致命傷のワング。それに、既に動かないデモンズが倒れている。
 ワング……いや、ブライトを斬ったのは俺自身であった事も思い出した。

 しかし俺の身体は意思に抵抗して少しずつ歩みを進める。
 抑えようとする気持ちと、反発する肉体。それが何処に向かっているのかというと、少しずつルカとベネットに近付いていた。

 この期に及んで全員を殺さないと、この身体は気が済まないようだ。ルカを治療していたベネットが、静かに近付く俺に気付く。

「ルシアン様……近付かないで」

 ルカへの治療を続けたまま、ベネットは震える声で懇願する。その身体はルカを抱えて、逃げようかという姿勢も見えていた。
 俺が一歩近付いた瞬間。
 ベネットはルカの腕を肩にかけて、立ち上がらせようとした。だが、それを制するように。
 俺は、ルカの左肩に刺さる剣を握って勢いよく引き抜く。

 ベネットの回復魔法により、かなり回復していたのか。
 抜いてもあまり出血はしなかったが、ルカの顔は苦痛に歪み、ベネットと二人。再び地面に倒れた。

(くそっ!抑えられない!)

「ルシアン……」
「ルシアン様!」

 二人の絶望した様な声と、顔を見ながら。俺の腕はその剣を振り上げた。

(いっそ俺の力で痛みも与えず楽にしてやるか?結局、ベネットが死ぬ運命は変わらねぇのか?しかもルカまで自分の手で殺す事になっちまうのかな?)

 最後の最後に俺は分かった気がする。
 これは最初から、ブライトの未来予知で決められた運命さだめなのだと。逆らう事がそもそもの間違いだった。
 ただ。
 俺には、一つだけこの世界の神から与えられた力がある。

 一か八か。ここに来て逆に、空気を読んでやろうと考えたのだ。ただそれは人生最大の大博打だった。
 このゲーム的にどちらがバットエンドなのか。それはきっとブライトにも予知出来ていない事かもしれない。

 だが俺は、魔王に抵抗する事をやめた。
 そして剣は容赦なく振り下ろされ――――

 ルカとベネットは真っ赤な血に染まったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...