魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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ブライトは云う。未来を見たのだと……

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 正直、仲間割れで同士討ち的な展開は、一番楽な終わり方だと考えていた。
 ここでワングが死ねば、後の残り一体を始末すれば難なくこの窮地は終わりを向かえるのだから。
 しかし、俺は何故か奴を助ける為に動いていた。
 一振りでガーゴイルの剣を弾き飛ばし、二振り目でガーゴイルを縦に裂いた。

 ワングの考えは全く分からない。
 俺も何故助けたのか正直分からなかったが、最後の一振で俺はボロボロ。立ってるのもシンドイくらいだ。

 しかし、まだかろうじて息をしてる奴がいる。
 そいつが本当に最後の一体、デモンズ。
 悪魔でも急所はあるのだと妙な事を考えてしまう。こんな相手でも油断さえしていればダガーでれるのだから。

 デモンズも、まさか自分の部下に命を奪われるとは思ってもいなかったろう。俺ですら想像も出来ない展開だった。

「ぐぅ……答えろ。ワング……、貴様……」

 デモンズは、ほぼ虫の息だ。だが、怒りを具現化した様に更に赤みを増した瞳で、ワングを睨み付けていた。
 ワングはガーゴイルに弾かれたダガーを拾い上げ、デモンズに静かに近付き呟いた。

「まだ気付かんのか……?」

 その言葉に、一瞬戸惑い。直ぐに悪魔は初めて分かりやすい驚きの表情を見せた。

「ま、まさか。貴様、ブライト……」

 ルカ達は何の事か全く分からない感じだが。俺はきっとデモンズと同じくらい驚いた顔をしているのだろう。
 デモンズの言葉に軽く口角を上げ、ワングは答えた。

「デモンズ。お前が初めて俺を見付け出した時から、俺はワングでは無かったのだ。
 ベルは俺が見付ける前にお前に見付かってしまったがな。
 しかしワングのスコタディはあの時既に、俺がプシュケスフィアで封じ込めていた。この身体をワングだと思わせる為にな」

 ブライトは転生した身体で、先ずワングから始末したという話だろう。その後ワングに成りすまし、デモンズと出会い。
 そのまま、魔王軍を内側から根刮ぎ狩る機会を伺っていたというわけだ。

「ならば貴様は何故、魔王様復活の手伝いをした?」
「手伝うというよりも魔王の魂が復活するのは、既に運命により決まっていたのだ」 
 
 ブライトは言った。未来を見たのだと。
 彼は当初、魔王のスコタディを封印した事で長い戦いの歴史が終わったと思ったそうだ。
 その後、宿命を終えたように彼は、今までとは全然違う平和な世界へと転生したらしい。
 しかし、その世界でも彼は見たのだ。

 自分がプシュケスフィアで封じた筈の魔王は復活し。世界を恐怖へと陥れる未来を。
 だがブライトは諦めなかったという。
 その未来を変える方法を、さらに先の未来まで予知して考え続けた。

 ブライトによると。過剰な未来予知は結局、その能力に精神が耐えられないらしく、直ぐにその記憶を失っていく事になるという。長すぎる未来は徐々に薄れ消えていく。
 夢の様な儚いものへと変わってしまう事は分かっていたのだ。

 それでもブライトは未来を、魔王を再び封印する未来を予知し続けたという。いつか自分が再びこの世界に転生した時の為に、少しでも導きとなるように。
 やがて彼は再び死を迎えた。それは一度に多くの未来予知を駆使した事による精神の崩壊だったという。あまりに早い死だったそうだ。
 そして運命のいたずらか、神の力か、再びブライトはこの世界に転生する事になったのだ。

「デモンズよ。俺は復活した魔王も含め、全てを終わらせる為。お前に取り入ったのだ」
 
 何という執念の輪廻なのか。
 こんな事を何代も繰り返して来たのかと思うと、ブライトのポースと魔王のスコタディは、永遠に終わらない戦いを続けるのかとすら思える。

 話を聞いて、デモンズが一瞬悔しそうな表情を浮かべた気がするが。血反吐を吐きながら、デモンズは意味深な言葉を呟いた。

「俺も封じるつもりだろうが、お前の未来予知は鈍ったようだな……」
「どういう意味だ?」

 ブライトが眉をしかめる。
 その時、俺の身体が自分の意識を無視して動いた。
 剣を抜き放ち、目にも止まらぬ速度でブライトの肉体を斬ったのだ。
 一呼吸置き。ブライトの腹の部分に横一文字に血の川が流れて、彼は崩れ落ちた。
 それを見てデモンズは大笑いする。

「ぐ、ぐははぁ!お前が何をしようと、魔王様は既に覚醒しておるわぁぁ!」

 発狂したように叫んだデモンズだったが。最後に派手に大量の血を吹き出して地べたに突っ伏した。そのままピクリとも動かなくなってしまった。
 一方で俺は、自分の身体が制御できなくなった。
 剣を持つ手に力がこもる。俺はそれを必死で抑えようとするが、抵抗しようとする程に激しい頭痛が襲う。
 デモンズに脳内に記憶を送られた事で、魔王のスコタディが覚醒したと考えるべきだろう。

「落ち着いてよ、ルシアン!」
「ルシアン様!」

 ルカとベネットの声は認知出来ているが、俺は彼女達に向かって剣を振るった。
 その人並み外れた力に風圧だけで、二人は吹き飛んだ。
 そしてブライトは、腹から大量の血を流しながらも、苦痛に歪む顔で叫ぶ。

「奴はもはや魔王だ!完全に支配される前に殺せ。もはや俺にもプシュケスフィアを使う余裕は無い。
 肉体だけでも殺さねば、取り返しがつかんぞ」

 それはもちろんルカやベネットに向けられた言葉だろう。
 だが、俺の心に別の感情が沸き上がってきた。

 ゛あんな小娘共に我を止められる筈が無かろう ゛

 魔王に思考まで乗っ取られ始めていた。
 もはや、魔王のスコタディに支配される寸前だと悟った。それでも、俺は抵抗を続ける。

「ルシアン!しっかりして!」

 ゛やめろ! ゛とうとう自分を抑えきれず、近付いて来たルカに向けて俺の剣は伸ばされた。
 間一髪ルカが体を反らして急所は外したが、ルカの左肩を真っ直ぐ貫いた。
 その光景を見て俺の頭痛が更に酷くなる。思わずルカに刺さった剣を手離して、彼女から離れるように後退りして跪いた。
 正に頭が割れるようだった。

「ルカ様!大丈夫!今すぐ助けますよ!」

 ベネットがルカを助けようとしているのだろう。
 声は耳に……脳に、届くのだが。もはや視界は見えなくなってきていた。
 自分の中で、何かが激しくぶつかり合っているような感じを受け、意識は失われていったのだ。
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