魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

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冒険者の血統

予想外の護衛

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 森の中を抜ける一本の比較的大きな道を、高い木の上から見詰めていると、やがて北側から一台の荷馬車がやってきた。
 荷馬車には手綱を握る髭面の御者が一人と、後ろ向きで荷台に腰掛ける二人が確認出来る。
 事前の情報通り三人で間違いないようだ。時間も大体予想通り。

 南側に目をやると、予定通り商人を装ったトータルが待機している。
 そして森の西側の茂みにヤンマが潜み、東側の大きな木の陰にはアンナが潜んでいる。
 準備は万端。俺達の作戦を開始する。
 先ずは北から来る商人の馬車が予定ポイントに到達した辺りで、トータルが大きく手を振って馬車に呼び掛ける。
 
「おーい! 旅の人。ちょっと手を貸してくれないか?」

 すると馬車が止まり、荷台に乗っていた二人が何事かと降りてきて、トータルに歩み寄って行く。
 一人はターバンを巻いた小太りな男で、もう一人はフードローブを着ていて顔も体格も分からない。
 俺はゆっくり弓を引き絞り、木の上からフードローブを纏う者に狙いを定めた。

 小太りはどう見てもただの商人だし、髭面の御者も特に問題ないだろうが。フードローブの者は少し怪しい。ローブの隙間から剣の様な物が見え隠れしているのだ。
 北方大陸の剣持ちは危険だと聞いた事がある。
 
「どうかしましたか?」小太り男がトータルに話し掛けた。

 それを見計らって、アンナとヤンマがそれぞれ森から飛び出す。

「動かないで!」とアンナは、手綱を握る御者の首元にナイフの先を突き付けた。
 ヤンマは、小太り男とフードコートの背後から迫る。
 気配を感じたのか、小太り男とフードの者が後ろを振り向いた所ですかさず──ノーマークになったトータルが、懐からナイフを取り出して小太り男の背中に押し付けて言う。

「おっと、動くとブスッといくぜぇ」

 ここまでは計画通り。
 残りはフードローブただ一人。俺が引き絞っていた弓を放つと、矢は木々の枝葉をすり抜け、高速でフードローブの者の右足首目掛けて飛んだ。
 俺達のポリシーは基本〝殺さず〟である。
 場合によってはやむを得ない時もあるが、殺しが目立つと後々面倒だ。

 矢は寸分違わずフードローブの者の右足首を射抜く、はずだったが。

「なに!?」──外しただと?

 奴はこちらには気付いていなかったはずなのだが、寸前で身体を動かされ、矢は地面に勢いよく刺さった。
 偶然か? いや、違う! 奴は寸前で交わしたのだ。
 奴のフードが脱げて、少し若い感じの男の顔が露になった。その視線は鋭く。確実に矢を見切った奴の眼だ。

 しかし、俺の矢が万が一外れた時にも備えて、ヤンマは既に動いている。ヤンマが腰のシミターを抜いてフードローブに襲い掛かる。
 だが。
 ヤンマの目の前から男が消え、一瞬でヤンマの後ろに廻っていた。そしてヤンマのシミターは、男の剣により宙に飛ばされた。

「ちっ……」──やはり剣士だったか。

 俺は直ぐに次の矢を取り出したが、さっきの一発で居場所を特定されたらしく。男は俺の方を見上げこちらに向かって剣をひと振りした。

 なんだ? っと思った次の瞬間──激しいかまいたちが発生して、俺の足場だった太枝がスッパリと切断されたのだ。

「くそ! まずい……」

 俺はバランスを崩しながら落下した。そして落下の最中。俺目掛けて男が走り込んで来るのが見えた。
 咄嗟に俺は着地と同時に、地面から跳ね返る様にバク転してその場を離れ。直ぐに体制を整えて男に向けて弓を引き絞る。
 
「シュウ!」アンナが叫んだ。
「お前、なかなか良い動きするな」男が俺に呟く。

 その時には既に男の腕の中にヤンマが捕らえられ、ヤンマの首には剣を当てられていた。
 男はヤンマに剣先を近付け、命令する。

「早く商人達を解放しろよ」
「お前こそ、ヤンマを離せ」

 俺も負けじと、弓を引き絞る。
 暫く互いに動く事は無かった──いや。動けなかった。が……その時。南側から激しく地面を叩く様な音が聞こえてきた。

 馬が走って来る音? それも複数か。
 タイミングが悪い────動く事も出来ずにいると、直ぐにその場に八人、それぞれ馬に乗った者達が辿り着き、俺達を囲んだ。
 辺りに響き渡る叫び声。

「全員武器を下ろしなさい!」

 ん?女の声?
 声の主は黒髪の可愛い女(おそらく隊長だろうか?)が全員に向けて続けて声を張った。
 
「これは、何事なの?」彼女の蒼く綺麗な瞳が全員を見る。

 よく見れば、騎乗する全員が同じデザインの革の鎧を来ている。鎧に付いている紋章は確か──ヴェロスのギルド隊だ。
 
「我々はヴェロスに魔鉱石を運びに行く途中でして。そこを今しがた、この賊共に襲われていたのです」身振り手振りで、そう答える小太りの男。

「それは危ない所でした。今、あなた達を出迎えに行く所だったのです」女は申し訳無さそうな顔で言う。

 なんてこった────どうやらこの商人は、ヴェロスのギルドへの仕事を請け負っていたのか。
 厄介なのに手を出した。
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