魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

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冒険者の血統

古代の魔法

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「ちょっと待ってくれ親父! 俺は親父の子供じゃなかったのかよ? 俺の記憶には親父の事しかないし、母ちゃんの事は……まあ、全く覚えてないけど、親父の事は……」

「俺はお前を託されたんだ────クラウンに。 信じられないだろうから、まあ。聞けや。 クラウン・ヴェロスって奴は相当に規格外の魔法使いでな。 聞いた事あるか? 〝プシュケスフィア〟って呼ばれる、魂を封印するインチキみたいな魔法の事を」

「な! プシュケスフィアですって?」ローズが突然大声をあげた。

「どうやら、そっちのお嬢さんは知ってるみたいだな。シュウ……お前は──まあ、知らなさそうだな。 いいか。今から言う事は真実だ、今から二〇年前。俺は亡霊に出会った……そう。もはや亡霊であるクラウン・ヴェロスにだ────」

 親父が語った話は俺にとって衝撃の事実だった。
 結論から言えば、俺は確かにクラウン・ヴェロスの息子であり。俺の母は、親父(カザス・セイラル)の妹、ルリア・セイラルだと言うのだ。
 クラウンは何百年も昔、レイティア・セイラルという女性との間に一人の子供を授かった。
 レイティアとは、親父の先祖であり。クラウンが現役時代にチームを組んでいた六人の仲間の一人でもあった。

 クラウンとレイティアは互いに想いを寄せていて、ヴェロス立ち上げの後に結婚して。二人の間に一人の男の子が出来た。
 しかし、クラウン不在の時。
 生まれた赤ん坊を何者かに誘拐され、それを守ろうとしたレイティアは命を奪われてしまったと言う。
 その事件をきっかけに、クラウンはヴェロスの街を当時のギルド長であり仲間だった男に託して。本人は街から姿を消した。 
 以後、ヴェロスはギルド統治になったらしい。
 
 しかし、今から二〇年前────
 親父の妹、ルリア・セイラルが一人の男を連れて来たのだと言う。それがクラウン・ヴェロスだった。
 因果とは恐ろしきもので何百年経った後も、クラウンは潜在的にセイラル家の女性と恋をしたのだという事だ。
 そして、二人の間に生まれたのが俺らしい。
 
 しかし。俺の母、ルリアは俺が生まれて間も無く病で倒れた。
 そして、クラウンはその悲しみに打ちひしがれた。
 二度も最愛の者を無くした苦しみは、クラウンには耐え難いものだったのだ。 クラウンは親父、カザスに俺と共に一つの水晶玉を渡した。
 その水晶こそがプシュケスフィアで封じた己の魂だったという。
 プシュケスフィアは魂を閉じ込める事によって、肉体を不死にする禁断の魔法。 それまでクラウンは、何百年もの間その魔法の力によりヴェロスを見守っていたのだ。
 それを託せる者を残せた事と、既に精神的に限界だった事もあり。ルリアを失ったと共に、自分にけじめを付ける事にした────
 と、いうのが大体の話だ。

「なあ。シュウ。 いつかは話そうとは思っていたが、お前はヴェロスの街を継ぐ者だ。少し早いとは思うが、これも何かの縁かもしれん。けど、これだけは伝えておく。 お前の本当の親父──クラウンは、それを強制しないと言っていた。 だから、どうするかはお前が決めろ」

 親父は、喉のつっかえが取れた様にスッキリした顔をしている。
 だが、俺にはどうも実感が湧かないのだ。

「俺には出来ねぇよ。 そんな力は無いし……」
「力か……。 それなら、お前の魔力は生まれて直ぐにクラウン自らが封印した。巨大な魔力を持つ者は狙われる──曾ての、クラウンの子供みたいにな」

「その魔力が暴走したのですね……」ローズが口を挟み、更に続けた。
「ねぇ、シュウ。 もし、あなたがその気ならギルド長に会ってみない? きっと、あなたの支えになってくれると思うわ」

「その気に……って。 俺はまだ、どうしたらいいのか分からねぇよ。それにこんな話、誰が信じるんだよ」
「私は信じる……」

 ローズの顔は真剣そのものだ。
 美人に、そんなに見詰められると恥ずかしい。

「────そんな顔されてもな。ってか、ローズは何故そこまでするんだ? ヴェロスの為に……とか、思ってるのか?」
「私はヴェロスの為じゃなくて、シュウ──あなたの為に動くの」

 この女、今。『あなたの為』とか、サラッと言ったぞ!
 ものすごく御高く留まってる女だと思ったが、急に何処かの騎士ナイトみたいな事を言われても、逆に戸惑う。

「お、おう。 そうか……そんなに俺の事を?」

「────! ちょっと、勘違いしないでよね! あなたの為ってのは、別にあなたが好きとかじゃないわよ。単純にそれが私の使命……そう、使命だからなのよ」
「別に……『好き』とか聞いてねぇよ。 勘違いしてるのはローズの方だろ?」

 こっちだって、こんな美人に好かれるなんて思ってないし。
 最初から彼女は自分で言っていたのだ──『俺を正しく導き、協力するのが、代々自分の家に伝えられてきた家命』とか何とか……
 自分で言ったくせに何を慌てているのだろうか。
 どうもローズは、最初に見たクールな印象から日々かけ離れていく気がする。
 
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