魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

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冒険者の血統

シュウの父親

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 話合いは終わったようだ。
 扉が閉じられる音が聞こえたので、再び窓の外を覗き見ると数名の魔法士達が去っていく。
 直ぐに部屋のドアが開き。ローズが、手に持つ布切れを俺に放り投げてきた。

「これは……?」

 見るとフード付きのローブだ。これを見ると、あの商人の護衛を思い出すのだが同じ物では無い。
 そういえば、あの商人護衛が俺を助けたルシアンとかいう男だとか。礼を言う間も無く去って言ったらしいが、あの男のせいで奇襲が失敗し、今に至るのだ……

「それを着て。 出掛けるわよ」
「ち、ちょっと待てよ。何処に行くんだ? 俺はお前に付き添う理由が無いぞ」
「理由はあるのよ。あなたの親に会いたいの、何処にいるの? それに私の名前はじゃなくて、ローズよ」
 
 全く、随分と強引な女だ。しかし、そう簡単に言うことを聞くわけにもいかない。

「おま……いや、ローズ。言ってる事分かってる? 俺は盗賊だ。ギルド隊の人間をアジトに連れて行けるわけないだろ」
「呆れた……あなた、家族も盗賊なの?」

「悪いかよ? お前みたいに裕福な家柄に育った奴ばかりじゃないんだ。俺達は魔法の才能もない落ちこぼれだ。 だが落ちこぼれには、落ちこぼれなりのプライドがあるんだよ。俺達は魔法に頼らずに生きて来たんだ」

 ローズは最初こそ呆れ果てた顔をしていたが、突然その表情に陰が落ちた。

「裕福な家庭? 私の事を言ってるなら酷い勘違いだわ。私は別に裕福な家庭でもないし、あなたが思ってる程、魔法の才能なんて立派なものじゃないのよ。 あなたには色々と、話しておいた方が良さそうね」

 それからローズは自分の事を語り出した。
 家庭の事やギルド隊の事……そして、俺を何故庇うのかと言う話だ。
 正直。
 一気に全てを整理出来る内容では無かった。だが、彼女の言ってる事が本当ならば、それを俺も確認する必要があったし────確認しなければならない。


 ヴェロスからそこそこ離れた場所。帝国領でも端の方に位置する小さな村『ゲッコウ』 そこの中心にある大きな屋敷は、表向きは村長の家だが。実際にはセイラル盗賊団のアジトでもあった。
 いや。もはやこの村全てが盗賊団のアジトなのだ……

 コンコン……と、扉をノックすると中から「はいれ」と、野太い声が聞こえた。
 俺はその扉を開けると、燃える様な赤い髪の大男がラグの上にあぐらをかいて座っている。
 その大男こそが俺の親父であり、盗賊団の頭領カザグ・セイラルだ。

「遅かったなシュウ。ヘマしたってのは聞いていたが、心配はしてねーぞ。ヴェロスの牢くらい、お前なら簡単に脱出出来るとは思ってたからな」
「ああ。まぁ……」

 言葉を濁す俺をローズがチラリと見た。そして、そんなローズを見て親父は言う。

「なんだ? 遅いと思ったら、ヴェロスで嫁でも捕まえてたのか? お前はアンナとくっつくと思ってたがな。ガハハ」
「そうだな。彼女の名前はローズ。俺の身体を狙って俺を部屋に連れ込んだ勇者だよ」
「ちょっ! その紹介の仕方おかしいでしょ!」

 ローズのツッコミに再び親父はガハハと笑う──が、実際には笑って話せない事が多すぎる。

「親父。大事な話があるんだ……」

 俺は真剣な顔でヴェロスで起きた事を話した。
 捕まった時の事から、アンナ、トータル、ヤンマが殺された事。そして俺が魔力を暴走させて、その後の面倒を背負ってくれたのがローズだと言う事まで。

 親父はまず、アンナやトータル、ヤンマの事を悔しがった。当然だろう。親父にとっても仲間は家族なのだから。
 しかし、その後で全てを見越していたかの様に親父は言い出した。
 俺にではなくローズに。

「こいつが狙われたのは、やはりが原因なのか?」
「そう──やはり、あなたは分かっているのですね? では単刀直入に伺いますが、シュウの──彼の、本当の両親はどなたですか?」
「ふん……俺じゃねーって事は分かるみたいだな。 信じられねぇかもしれねぇが、こいつの親は『クラウン・ヴェロス』本人だよ。母親は亡くなった。 ……黙ってて悪いなシュウ」

 俺は唖然とした。
 しかし心構えはある程度していた。 何故なら、ローズが家で俺に話していたからだ。 嘗てヴェロスを築いた冒険者王の血を引いている者がおり、それが俺である可能性が高いという話を。
 
 長年、クラウンの血縁者は残っていないと言われていたが、実は存在するという噂が最近になって、秘密裏に出回っていたようだ。
 その噂の血統者が俺である可能性を、レティマは知っていたという。だから俺は襲われたのだとローズは言った。

 クラウンの血統と言うだけで、それはとてつもない災いに発展する可能性があるらしい。その力を自分の手元に置いておきたい者達の戦争の火種になるのだ。
 故に。
 それを正しく導き、協力するというのが、代々ローズの家に伝えられてきた家命らしいのだが。
 勿論。本当かどうかは、俺も信じてはいない。
 と、言うか──クラウンって何百年前の人だっけ? それの息子が俺って事が、そもそもおかしい。
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