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冒険者の血統
空白の記憶
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◇◇◇
あれ?──何処だここ?
少し可愛らしい雰囲気の部屋の中だ。そんな見た事のない部屋のベットで俺は寝ていた。
「俺……何してたんだっけ?」
確か、森での奇襲作戦に失敗して、ヴェロスのギルド隊に捕まったのだ。それから数日を牢屋で過ごして────ああ。記憶の所々が曖昧だ。
ここは牢屋では無さそうだが、そういえばアンナは? トータルは? ヤンマは? みんな無事だろうか……と、考えていると。
部屋のドアが開いた。
「あ! 目が覚めた?」
「な、何でお前がここに!?」
部屋に入って来たのはギルド隊の女だ。確か名前はローズと言ったか?
彼女は手に食事の様なものを持っているが、全く状況が掴めない。
そういえば、アールヘイズの帝都に送られると聞いた──ならば、ここはレクスマイアの牢屋なのか?
随分とアットホームな牢屋だ。まるで、自宅にいるような雰囲気じゃないか。なるほど。そして、丁度今は飯の時間に違いない。
「そうか……そういう事か。俺はいつの間にここに?」
「あなたが倒れてから、もう二日経つわね」
彼女は少し憂いを帯びた瞳で答えた。
なんという事だ。どうやら俺は情けない事に、牢獄生活で倒れてしまったようだ。
自分では身体は丈夫な方だと思っていたが、これでは脱獄どころの話ではなかったわけだ。それにしても────
「レクスマイアの牢屋は随分と綺麗だな。まるで、普通の家じゃないか。どうせ魔法結界は張り巡らされているのだろうけどな」
「ここが牢屋に見えるの?」
「なに、違うのか?」
「違うに決まってるじゃない。ここは私の家よ」
「家? ──家だと? お前の家か!?」
ローズは「はあ」と溜め息を一つ吐いて俺を見る。やがてテーブルの上に食事を置くと、俺に言った。
「取り敢えずこれ食べて……自分のは、また作るし」
「ああ。俺の食事じゃ無かったのか……寝てる俺を見ながら飯を食らうつもりだったとは。お前、なかなか悪趣味だな」
「はあ!? 馬鹿な事言わないでよ! 一応、これでもずっとあなたの事を看病してたんですけど!?」
俺の軽い冗談にローズは本気で怒ったようだが、それ以上に看病という意外な言葉に、俺の方は若干の戸惑いを覚える。
「看病だと? 何故お前が──さては、俺の身体が目当てか? そうなんだな、このビッチが! まさか囚人で性欲処理してるとは……驚かせされたぞ」
「な、な、な! この変態!」
ローズは顔を真っ赤にして部屋から出て言った。
なるほど。冗談の通じないタイプのようだ。
兎に角。改めてよく見れば部屋には普通に窓がある。いつでも脱出出来る状態であり、つまり──ここは、本当にただの家のようだ。
食事を口にする。うん、普通に美味しい。つまり──本当に囚人用の飯では無いのだろう。
食事を終えた頃。
再び部屋のドアが開きローズが現れた。普通に脱出すれば良かったのだが、何故か俺は悠長に食事をしてノンビリしてしまっていたのだ。
ローズが黙って食器を引き上げようとする。一応、礼くらい言わないとダメだろうか。
「えーと──ありがとな」
「別にいい。それより……何も覚えてないの?」
ローズは何処か気まずそうな感じで目を剃らした。やはり、俺は何か大事な事を忘れているようだ。
「ああ……やっぱり俺達、エッチしちゃったのか?」
「それはない! そうじゃなくて……あなたの仲間の事とかよ」
「あいつらも何処かに送られたのか?」
「それは────ごめんなさい」
何故謝るのかと思ったが、その後ローズが語った事で俺は漸くその意味を知った。
アンナ、トータル、ヤンマの三人がレティマというギルド隊の男に殺された事。レティマは帝国の『ギルド統治反対派』と呼ばれる派閥の人物であるという話だった。
そして俺は今更のように思い出したのだ。
あの時──牢獄を出て俺は、一人の男に出会った。そしてその男は言った。俺の仲間達は無駄死にだったと……
俺は確かに仲間に助けて貰った筈だったのだ。故に、にわかには信じられず確認しに戻った。そして俺は、奴の言った事が真実だったと知ってしまったのだ。
そこからは──本当に記憶が無かった。
ローズの話では、俺は自我を失い魔力を暴走させたらしい。俺には生まれつき、魔力なんて殆んど無い筈だが……
兎に角、魔力の暴走に耐えられなかったらしき俺は意識を失い。仲間を殺したレティマという男に連れていかれる所を、ルシアンという男に助けられたらしいのだ。
じゃあ。牢獄から俺を助けたのは仲間達の『幽霊』だったのか──それとも、俺自身が現実を受け止めきれず造り出した『幻覚』だったのだろうか?
どちらにしろ。
冷静になった今は現実を理解出来た。そして自分の力不足に涙が止めどなく溢れてきた。
ローズは何も言わずに部屋を立ち去った。
それから数分して────ドンドンっと遠くで扉を叩く音が聞こえた。誰かが家に訪ねて来たようだ。
俺は部屋の中から聞き耳を立てて、そのやり取りを伺う。
「──ローズ・ウィルヘイム隊長。あなたが盗賊の少年を連れ帰ったという噂があるが、誠か?」
「これは帝国の魔法士殿が直々にどうしました? 何故私が、そのような事を? それよりレティマは見付かりましたか?」
内容を聞いて、俺は咄嗟にカーテンの隙間から窓の外を覗く。
外には数名の魔法士がいるようだ。衣服から、帝国の宮廷魔法士だと分かる。
どうやら俺は逃亡犯扱いのようだ。しかしローズは何故、俺の存在を隠しているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら俺は、万が一の場合は逃げ出す心構えをして息を潜めていた。
あれ?──何処だここ?
少し可愛らしい雰囲気の部屋の中だ。そんな見た事のない部屋のベットで俺は寝ていた。
「俺……何してたんだっけ?」
確か、森での奇襲作戦に失敗して、ヴェロスのギルド隊に捕まったのだ。それから数日を牢屋で過ごして────ああ。記憶の所々が曖昧だ。
ここは牢屋では無さそうだが、そういえばアンナは? トータルは? ヤンマは? みんな無事だろうか……と、考えていると。
部屋のドアが開いた。
「あ! 目が覚めた?」
「な、何でお前がここに!?」
部屋に入って来たのはギルド隊の女だ。確か名前はローズと言ったか?
彼女は手に食事の様なものを持っているが、全く状況が掴めない。
そういえば、アールヘイズの帝都に送られると聞いた──ならば、ここはレクスマイアの牢屋なのか?
随分とアットホームな牢屋だ。まるで、自宅にいるような雰囲気じゃないか。なるほど。そして、丁度今は飯の時間に違いない。
「そうか……そういう事か。俺はいつの間にここに?」
「あなたが倒れてから、もう二日経つわね」
彼女は少し憂いを帯びた瞳で答えた。
なんという事だ。どうやら俺は情けない事に、牢獄生活で倒れてしまったようだ。
自分では身体は丈夫な方だと思っていたが、これでは脱獄どころの話ではなかったわけだ。それにしても────
「レクスマイアの牢屋は随分と綺麗だな。まるで、普通の家じゃないか。どうせ魔法結界は張り巡らされているのだろうけどな」
「ここが牢屋に見えるの?」
「なに、違うのか?」
「違うに決まってるじゃない。ここは私の家よ」
「家? ──家だと? お前の家か!?」
ローズは「はあ」と溜め息を一つ吐いて俺を見る。やがてテーブルの上に食事を置くと、俺に言った。
「取り敢えずこれ食べて……自分のは、また作るし」
「ああ。俺の食事じゃ無かったのか……寝てる俺を見ながら飯を食らうつもりだったとは。お前、なかなか悪趣味だな」
「はあ!? 馬鹿な事言わないでよ! 一応、これでもずっとあなたの事を看病してたんですけど!?」
俺の軽い冗談にローズは本気で怒ったようだが、それ以上に看病という意外な言葉に、俺の方は若干の戸惑いを覚える。
「看病だと? 何故お前が──さては、俺の身体が目当てか? そうなんだな、このビッチが! まさか囚人で性欲処理してるとは……驚かせされたぞ」
「な、な、な! この変態!」
ローズは顔を真っ赤にして部屋から出て言った。
なるほど。冗談の通じないタイプのようだ。
兎に角。改めてよく見れば部屋には普通に窓がある。いつでも脱出出来る状態であり、つまり──ここは、本当にただの家のようだ。
食事を口にする。うん、普通に美味しい。つまり──本当に囚人用の飯では無いのだろう。
食事を終えた頃。
再び部屋のドアが開きローズが現れた。普通に脱出すれば良かったのだが、何故か俺は悠長に食事をしてノンビリしてしまっていたのだ。
ローズが黙って食器を引き上げようとする。一応、礼くらい言わないとダメだろうか。
「えーと──ありがとな」
「別にいい。それより……何も覚えてないの?」
ローズは何処か気まずそうな感じで目を剃らした。やはり、俺は何か大事な事を忘れているようだ。
「ああ……やっぱり俺達、エッチしちゃったのか?」
「それはない! そうじゃなくて……あなたの仲間の事とかよ」
「あいつらも何処かに送られたのか?」
「それは────ごめんなさい」
何故謝るのかと思ったが、その後ローズが語った事で俺は漸くその意味を知った。
アンナ、トータル、ヤンマの三人がレティマというギルド隊の男に殺された事。レティマは帝国の『ギルド統治反対派』と呼ばれる派閥の人物であるという話だった。
そして俺は今更のように思い出したのだ。
あの時──牢獄を出て俺は、一人の男に出会った。そしてその男は言った。俺の仲間達は無駄死にだったと……
俺は確かに仲間に助けて貰った筈だったのだ。故に、にわかには信じられず確認しに戻った。そして俺は、奴の言った事が真実だったと知ってしまったのだ。
そこからは──本当に記憶が無かった。
ローズの話では、俺は自我を失い魔力を暴走させたらしい。俺には生まれつき、魔力なんて殆んど無い筈だが……
兎に角、魔力の暴走に耐えられなかったらしき俺は意識を失い。仲間を殺したレティマという男に連れていかれる所を、ルシアンという男に助けられたらしいのだ。
じゃあ。牢獄から俺を助けたのは仲間達の『幽霊』だったのか──それとも、俺自身が現実を受け止めきれず造り出した『幻覚』だったのだろうか?
どちらにしろ。
冷静になった今は現実を理解出来た。そして自分の力不足に涙が止めどなく溢れてきた。
ローズは何も言わずに部屋を立ち去った。
それから数分して────ドンドンっと遠くで扉を叩く音が聞こえた。誰かが家に訪ねて来たようだ。
俺は部屋の中から聞き耳を立てて、そのやり取りを伺う。
「──ローズ・ウィルヘイム隊長。あなたが盗賊の少年を連れ帰ったという噂があるが、誠か?」
「これは帝国の魔法士殿が直々にどうしました? 何故私が、そのような事を? それよりレティマは見付かりましたか?」
内容を聞いて、俺は咄嗟にカーテンの隙間から窓の外を覗く。
外には数名の魔法士がいるようだ。衣服から、帝国の宮廷魔法士だと分かる。
どうやら俺は逃亡犯扱いのようだ。しかしローズは何故、俺の存在を隠しているのだろうか?
そんな疑問を抱きながら俺は、万が一の場合は逃げ出す心構えをして息を潜めていた。
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