供養部屋

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供養①陽キャ×陰キャ

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続きを書くか分からない小ネタを供養をかねて投下しました。駄文にも満たない走り書きですのでご容赦ください……

陽キャ×陰キャ


パターン①


「っ、わっ!!」

突然、ヌッと横から伸びてきた大きな掌。
それに驚いた直後、バクッと口元を覆われ、声も出せずに体ごと背後から抱かれたままズルルッと空き教室に引き込まれてしまった墨は、驚きに目を見開いたまま、バタンッと目の前で閉まる無機質な扉を見た。


──昼休みで賑わう校舎のざわめきが、どこか遠くで聞こえるような、しんとした空間。

その中で後ろからすっぽりと覆う大きな体にバクバクと心臓を慣らし顔を引きつらせた墨だったが、ふわりと香る匂いやそんな事を自分にしてくる人物に心当たりなど一つしかなく、……急すぎてびっくりした。と墨は息を吐きながらも、くたりと後ろの体へともたれた。

「すみ……」

ぼそりと呟かれた声は低く、けれどとても甘くて、堪らずとろんと蕩けた表情をした墨。
そして口元を覆っていた手が離れ、愛しげにぎゅっと背後からきつく抱き締められた墨は、筋肉質な腕にそっと自身の小さな手を添えながら、顔を上に向けた。

「真白くん」

自分を羽交い締めるかのように抱き締めてくる人物こと、恋人である大木真白の名前を呼び、見上げた視線の先。そこには真白の綺麗な顎のラインが見えて、ふふっと眉を下げ墨は笑った。

「墨が足りなくて死にそうだった」
「っ! な、なに言ってるの……」
「墨、会いたかった」

そう言ったあと、くるりと体の向きを変えられ、正面から見下ろしてくる真白。
その淡い瞳や縁取る睫毛の美しさに、本当にいつ見ても宝石みたいだ……。と墨は感嘆の息を吐きながら、見つめてくる真白にポッと頬を真っ赤に染め上げた。

「……墨、可愛い」
「う……、」
「すぐ真っ赤になるの、ほんと可愛いな……」

可愛いと言われ、ボンッと耳まで真っ赤になってしまった墨を見て、屈託なく真白が笑う。
その笑顔が綺麗で格好良くて、さらりと揺れた綺麗な髪ですら美しく、墨はまたしても何も言えずただただ見惚れてしまうだけだった。


──小川墨と大木真白。この二人は全てにおいて正反対だが、正真正銘、歴としたカップルなのである。

真白は生まれも育ちも日本だが、隔世遺伝で外国人のような見目をしており、美しい顔に滑らかな肌、そしてアッシュブロンドの髪に琥珀色の瞳と、誰もが振り返り見惚れるほどの美しい美貌を持っている。それに加え高身長で頭も良く、正しくカースト最上位に位置し常に人々の輪の中心に居るような男なのだ。
それに対して墨は男にしては小柄で細く、髪の毛も瞳も真っ黒で、鼻に浮いたそばかすが少しだけ特徴的なぐらいの、どこにでも居る平凡な男である。

そんな、見た目も付き合う友達も全くもって接点のない二人なのだが、そんな二人が付き合ったのは、今から約一年前。
一年の時に同じクラスだった真白から、唐突に墨が告白されたのがきっかけだった。


一年の時に同じクラスだったとはいえ、それまで真白と喋ったのはほんの数回の会話のみで、こちらから話しかけるなんて絶対に出来ないほどの圧倒的な真白の一軍オーラに、一生関わることのない人だと思っていた墨。
そんな真白から突然告白され、青天の霹靂とばかりに驚いた墨だったが、その後、なるほどこれはきっと何かの罰ゲームだな。と思ったほど、二人はこれまで親しい会話もしたことなど、なかった。
それから、ごめんなさいと断れば振るなんて生意気だと殴られそうだし、オーケーすれば影から見守っているのだろう陽キャ集団に笑われてホモだとからかわれる毎日が待っているのだろうその二択に、な、なんで僕がこんな目にッッ……!!と泣きそうになってしまった墨だったが、殴られる方がマシだ! と腹を括り、断った。
けれども影から誰かが出てくる事もなく、怒鳴られ殴られる事もなく、意気消沈しただけの真白に、んん?? と墨は首を傾げたのだ。
そして、『でも俺、諦めないから』だなんて言い切った真白から、その日以降、何度も何度も告白をされ続けた墨。
そして、どこか怖い人だと思っていた真白の優しさやその熱いまなざしに墨が陥落し、告白を受け入れたのが、二年の秋頃、文化祭の夜の日だった。

そこから二人はお付き合いをスタートさせたものの、学校一のモテ男である真白が男と、しかもこんなちんちくりんな奴と付き合っているなんてバレたら殺される。と、『秘密にしよう?』という墨の願いから、二人が付き合っているのは二人だけの秘密だった。
真白は初めこそ、どうして付き合ってると言っちゃ駄目なのかと不満げだったが、可愛らしく上目遣いで(真白視点)、お願い。だなんて言われてしまえば


ここまで書いて途切れてます。

パターン②



「あ、あのっ、良かったら、連絡先教えてください!!」
「無理です」

顔を真っ赤にしながら必死に見つめてくる女の子に、普段はもう少し配慮した物言いをするのだが、しかし今はそんな事をして会話のラリーを続けられるのは困る。とたった一言だけでバッサリと拒絶を示した真白が、時間を取られた。と数分前に話しかけてきた目の前の子をもう見ることもなく、すたすたと歩き出す。
そんな真白のさらりと揺れる綺麗なアッシュブロンドの髪の毛が早朝の太陽を反射させ、その煌めきにたった今雑に振られたばかりの女の子はそれでも、去っていく大きな背にポーッと見惚れてしまうばかりだった。



大木真白、十七歳。
都内の高校に通う、男子高校生である。
百八十をゆうに超えるモデルのような等身、作り物のような端正な顔、そしてドイツ人の祖父からの隔世遺伝によりアッシュブロンド色をした髪の毛さえ似合っていて美しい、まさに完璧な美貌を持つ真白。
そしてブレザーの制服を着崩し、耳にじゃらじゃらとピアスをしているのも様になっていて、高校生とは到底思えぬほどの危うい色香を存分に放っている真白はしかし、朝も早い時間から学校へと向かうべく、急ぎ足で歩いていた。


この、どこからどう見てもスクールカーストの、いや社会においても頂点に君臨するだろう真白が、わざわざこんな朝早くに学校へと向かう理由は、ただ一つ。
学校の校門を抜け、足早に中庭に入り四角のような隅へと真白が隠れたその瞬間、向こうからホース片手にお目当ての人物がせっせとプランターに水をまこうとしているのを見て、小さく唇を弛ませた。

そう、真白がこうして今学校に随分と早く登校している理由は、こうして好きな子をこっそりと眺める為、である。


二年二組の、小川墨。
その人物こそ真白が一年ほどずっと片思いをしている子であり、男だが女子と変わらぬほど小さい身長と細い体に、墨という名前を表すような艶々とした黒髪と同じく綺麗な黒い瞳を持っている、とびきり可愛い男の子である(実際にはどこにでも居る平凡な見目の男子学生なのだが、真白の目にはそれはもうとびきり可愛く見えているらしい)
しかし真白と墨はつるむグループはもちろん、ほぼほぼ会話などもしたことがない。
そんな、何一つ接点も共通点もない墨を、しかし真白はあっという間に好きになってしまったのだ。


──真白が墨を知ったのは、入学したばかりの頃。
常に誰かが纏わり付いてくるその息苦しさに、真白がひっそりと中庭の隅で隠れていた時。
少しだけ調子のずれた鼻歌が聞こえ、そっと四角から覗いてみた人物、それが墨だったのだ。
最初の印象は、パッとしない中学生みたいな奴だな。というだけだったが、何が楽しいのか熱心にプランターに水をあげているのが、どこか印象的で。
だが、その時花に優しく語りかけている声がとても柔らかく穏やかで、真白は思わず目を見開いていた。

『今日も綺麗だね』

だなんて囁く声は、本当にどこまでも澄んでいて。
その何の下心も思惑もないそのまっさらな声は、常日頃恋慕であったり嫉妬であったりと様々な欲が滲んでいる声を浴びせられてきた真白にとって、まさに衝撃だったのだ。

純粋無垢で、清らかで、美しい。

まさにそんな言葉がぴったりのその声に、その日真白はただただ呆然とするばかりで。
そしてその声の持ち主が、まさかのまさか今まで気付きもしなかったが同じクラスだったらしい小川墨だと知ったのは、翌日の事だった。

そこから何となく墨の事が気になり、こっそりと墨を盗み見る生活が始まった真白の目に映る墨は、いつもとても眩しかった。
クラスの隅っこで友達と楽しげに話している姿や、授業中ウトウトとしてはハッとし、健気に頑張って起きようとする姿は、ひどく可愛くて。
そしてどうやら美化委員らしく、火曜日と金曜日はいつも朝と昼休み、そして放課後に場所を変えながら色々な所の植物に水をあげては、花に綺麗だねと声をかけている。
その任された仕事を真摯に、かつ楽しみながらしている姿は本当に愛らしくて、そんな墨をただただいつも遠くから眺めては小さく笑っていた真白だったが、ハッキリと恋をしていると気付いたのは、ある日の放課後だった。



「大木ってまじでうぜぇわ」
「それな。自分が一番だと思ってる感じ、まじでムカつくわ。女もなんであんな自己中そうな男が良いんだよ」

だなんて、名前も覚えていない同じクラスなのだろう奴らが僻みを垂らしているのを聞いた、あの日。
なぜわざわざ真白が放課後まで残っていたのかというと勿論金曜日だったからで、放課後水やりをしている墨をこっそり見ていたからである。
そして終わったのを見て、自分も帰ろうと鞄を教室に取りに来たその時、タイミング良くそんな声が聞こえたのだ。
それに真白は、そんな事も直接言えねぇお前らの方がうぜぇよ。だなんて毛ほども気にしていなかったのだが、しかし不意に廊下の向こうから同じく帰ろうと鞄を取りに来たのだろう墨が見えて、固まってしまった。

窓から差し込む夕陽に照らされて、艶々と輝く黒髪や、細い体。

それに訳もなくごくりと真白が唾を飲み固まったままでいれば、墨も気付いたのか真白を見て、しかしそれから廊下からでも分かるほど大音量で響く真白への悪口に、驚いた表情をしたのが分かった。

瞬間、キラリ。と太陽を走らせる黒い瞳が、美しくて。

そして、真正面からこんなにもハッキリと墨の顔を初めて見た真白は、まさに頭の中が真っ白になってしまった。

……え、うわ、やば、可愛い……。

だなんて頭の悪い感想を抱きながら固まる真白に何を勘違いしたのか、悪口を言われ傷付き教室に入れないと思ったのだろう墨が、すぐに近寄ってきては真白の腕を取った。

触れられた手首から伝わる、温かな体温。

そして、近付いた瞬間ふわりと香るバニラのような良い匂いに、真白はまたしてもごくりと唾を飲み込んでしまった。

「あ、あの、大木君、こっち、」

だなんてあの柔らかな声で名前を呼ばれ、見上げてくる心配げな黒い瞳。
それら全てに脳がショートしていれば、こっち。と墨が廊下の角まで優しく真白の手を引いてゆく。
そしてそれから、「だ、大丈夫ですか?」だなんて声をかけてくる墨に、真白はキャパオーバーになりながら、頷くだけが精一杯で。
そんな真白を見て、傷付いていると勘違いした墨は悲しげに表情を曇らせたあと、教室へと一人向かってしまった。

……は、え……? だなんてあまりの可愛さと触れられた熱さ、そして匂いに圧倒され呆けていた真白の耳に聞こえてきたのは、ガラガラと響く扉の音と、そして、「ろ、廊下まで聞こえてました!! あのっ、クラ、クラスメイトの事をそんな風に言うのは、やさ、優しくないと思います!!」だなんて、吃り裏返りながらも叫ぶ墨の声だった。

その声にまたしてもフリーズしてしまった真白だったが、しかし注意された事が恥ずかしかったのか、僻みを言っていた奴らのからかう声が聞こえ、真白はすぐに駆け出した。

「はぁ? 何お前、つうか誰?」
「それな」
「や、優しくないと思います! だってよ」
「ぶはっ!! ちょ、おまえ、似すぎ」
「陰キャ君が俺らに説教とか何様なんだよっつう話なんだけど」
「ほんとほんと。つかまじだせぇなお前」

だなんてゲラゲラと不愉快に笑っている声に、真白は今までの人生で感じたことのないほどの怒りに目の前が真っ赤になるような感覚を覚えながらも、しかし教室の入り口で体を震わせ顔を青ざめさせている墨を見て、何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸した。

「──人にそんな事言えるなんて、お前らこそ何様なんだよ」

精一杯抑えた、しかし怒気が含む声で真白が墨の前に立ちながら、教室の奥に居る奴らを睨む。
そうすれば、まさか真白が居るなんて思ってもいなかった二人は途端に表情を引きつらせた。

「え、あ、大木!?」
「いや、えっと、これは、その、」

先ほどまでの威勢はどこへやら、挙動不審になりながらしどろもどろに焦る二人。
その態度の露骨さに舌打ちをし、真白は怒りで青筋を浮かせたまま、口を開いた。

「言いたい事あんなら直接俺に言えよ」
「えっ、あ、いや、その、違くて、」
「それと、コイツを馬鹿にするなら、どうなるか分かってるよな」
「っ、じょ、冗談だって! 冗談!!」
「そうそう!! 冗談」
「……はぁ、もういいわ。消えろよ」

これ以上話しても今度こそ本当に手が出てしまいそうだと、ガリガリと首の後ろを掻きながら真白が吐き捨てる。
そうすれば慌ただしくすぐさま教室を出てゆき、真白と墨の二人だけが残された教室は、途端にしんと静まり返った。

沈みかける夕陽が煌々と燃え、長く長く、影を伸ばしている。

その静寂のなか、突然どさりと座り込む音がし、真白は慌てて振り向いた。

目の前には、放心状態のまま腰を抜かしてしまった墨の姿があって。
それに決まり悪そうな顔をしながら、真白も腰を落とした。

「……大丈夫?」
「っ、は、はい!! すみません、みっともなくて、」
「そんなことないから。ていうか、俺の方こそ、ごめん。怖い思いさせて」
「へ」

普段の墨を見ていても分かるように、こういう争い事や揉め事とは無縁で生きてきたのだろう。
それなのに巻き込んでしまったと申し訳なくなりながら真白が呟いたが、墨は一度ぱちくりと瞬きをしたあと、ぶんぶんと首を振った。

「おおお大木君が謝る事なんて一つもないよ!!」
「っ、」

全身を使って否定するそのあまりにも可愛い仕草と、またしても愛らしい声で紡がれる自身の名前に、真白が堪らず息を飲む。
何故だかズキズキと心臓が痛み、呼吸もままならなくなる真白を他所に、墨はというと震える足に力を入れて立ち上がり、真白に笑いかけた。

「助けてくれてありがとうございました! えっと、それじゃあ、また、明日!」

だなんて言っては自分の鞄を素早く机から取り、墨が颯爽と教室を出ていく。
残された真白はというと、慌てて立ち上がったものの声をかける事も出来ずに取り残されてしまい、暫くその場で固まってしまった。

それから暫くし、あの震え裏返りながらも叫んでいた声や、去り際の笑顔、それからふわりと香った甘くて優しいバニラのような良い香りを思いだした真白は、踞りガリガリと頭の後ろを掻いた。

「……天使じゃん」

だなんてぽつりと呟かれた真白の声は誰に拾われるでもなく、暗くなりかけた教室の静けさの中に沈んでいくだけだった。




──そうして、墨をずっと観察したりしていたくせ無自覚だった真白がようやく恋心を自覚したその日以降、けれどもそれ以来二人が話すことはなく。
何度か話しかけようと試みたものの、いざ話しかけようとすると動悸息切れ目眩に襲われままならず、そしてどことなく墨の方も自身を避けているような気がした真白は、ついぞ二年になるというのに話しかける事が出来ずにいた。
そして二年に上がりクラスすらも離れてしまったと悲しみに暮れつつも、墨がこうして美化委員を続投している事に気付いた真白は、今日もストーカーよろしく墨をこっそり見続けながら、可愛い。天使。大勝利すぎる。だなんて心底頭の悪い感想を抱き、見つめていたのだった。





[newpage]


「あはっ、まじだぁ。真白君、おはよぉ」
「はよ。え、なんで俺の席に座ってんの」

愛しの墨をこっそり眺め堪能したあと、自分のクラスへと向かった矢先、何故か自分の席に座っている同じクラスの女子を見て、真白は不思議そうな顔をした。

「真白君の事待ってたの。火曜日と金曜日は朝早くに登校するってほんとだったんだね~。なんで?」
「何ででもいいじゃん。てか、なんで名前呼び? そんな仲良くないよね、俺ら」
「え~ひどい~」
「あはは」

席に近寄ってくる真白に、立ち上がった女の子がしなを作りながら甘い声で笑う。
それに真白も愛想笑いをしては、温いままの椅子が気持ち悪いなと思いつつ、座った。

「ね、真白君って、華奢で色白で黒髪ショートの子がタイプなんでしょ?」
「……あーうん、そうだね」
「じゃあ今とかどう? 髪の毛染めて切ってみたんだけど」
「あはは、どうってなに」
「も~、放課後、気持ち良いコトしない? って誘ってるんだけど」
「……あー、なるほど」

そう呟いた真白の上に無遠慮に乗ってきては、女の子が細い腕を首に絡ませてくる。
その距離の近さにされど一切動じず、重いな~。なんて失礼な事を思いながらも、真白は好きにさせてやった。

「……まぁ、いいけど」
「えっほんと!? 今までどんだけ誘っても無理って言ってたのに! そんな黒髪ショートが好きなの? うけるんだけど」
「バックからしか無理だし、声出されるの嫌いだから、喘がないでくれるとありがたいんだけど」
「え~、ちょう注文つけてくんじゃん。まじ自己中過ぎ~」
「無理ならしなくて良いよ」
「えっうそうそ。何でも良いから~! 真白君セックスめっちゃ上手いって噂だし、真白君とセックス出来るとか自慢出来るしさ~、ね、機嫌直してよ~」
「はは。うん、じゃあ放課後」

そんな事がなぜ自慢になるのかと呆れつつ、話終わりならどいて。と圧をかける真白。
それに女の子が渋々ながらどき、じゃあまた放課後ね~! だなんて言っては教室を出て行く。
その後ろ背を眺め、同じクラスでもなかったのか。とあまりクラスメイトの顔すら把握していないのを露呈しつつ、真白は窓の外を見た。

……あーあ、馬鹿げてる。

なんて、心の伴わない性行為など虚しいだけだと分かっていながらも、そうする事でしか正気を保てなくなりそうなほど飢えている事が情けなく、真白は一人早朝の教室のなかで小さく乾いた笑いを溢した。

長い髪の毛や、柔らかに曲線を描く体、無駄に甘ったるい声。
その女性特有の性にこれといって今まで強く惹かれた事もなかったが、かといって男性に惹かれた事もなく。
しかし見目麗しい真白の側には常に女性が居り、そして行為自体はそれなりに気持ちが良く発散になるからと、来るもの拒まず去るもの追わず。の生活を続けていた真白。
けれど、墨に恋心を抱いていると自覚したその日の夜。いつものように溜まり場で女の子に上に乗っかられていた真白は、……これが小川だったら。だなんて思ってしまったのだ。

女性的ではないが、抱き締めれば簡単に折れてしまいそうなほど華奢な体。
透き通るような白い肌。
漆黒の艶やかな髪に瞳。
薄く小さな唇。

そんな、間近で見たせいで簡単に思い出せてしまうその質感に、真白は堪らず妄想に耽ってしまった。

あの華奢な体の奥を暴けば、どんな反応をしてくれるのだろうか。
艶やかな黒髪を乱して、可愛い顔を快楽に歪ませて、綺麗な声を震わせ喘ぎながら自分の名前を呼んでくれるのだろうか。

そんな事を思ってしまえばそれだけで果ててしまいそうなほど興奮してしまった真白は、女の子の体を抱きながら頭のなかで墨を激しく抱いたのだ。

それからはもう、華奢で色白、黒髪ショートの子。を代わりに抱くという日々を過ごしていて。
自分でも本当に最低だと分かっているが、どれだけ望んだとしても相手は同じ男で、ましてや真白を選ぶ訳がないと、痛いほど分かっている。

そんな虚しさを抱えたまま日々を悶々と過ごしている真白は、早く昼休みにならねぇかな。だなんてこっそり眺められる時間を待ち遠しく思いながら、机に突っ伏したのだった。




***



昼休み、いつもつるんでいる奴らから逃れ、校庭が覗けるひっそりとした階段の踊り場へと向かった真白だったが、しかしどれだけ待ってみても墨が校庭の花に水やりをしに現れる事はなく。
今まで一度もそんな事などなかった為、不思議に思いながら真白が墨のクラスである二組の前をわざと通りかかれば、机に伏せている墨の姿があって。
もしかして体調が悪いのか!? と心配し焦った真白だったが、しかし突然声をかけられる訳もなく。連絡先も勿論知らないためどうする事も出来ずに、真白は結局気が気でない状態のまま、その場を後にした。


──そうして、真白にはどうしようもないまま放課後を迎えてしまい、しかし女の子とした約束なんてものすらもすっかり忘れ、真白は墨の様子を見ようと二組へと向かった。
しかしもうホームルームも終わり人もまばらな教室に、墨は居らず。
鞄だけが残されている事に真白は、体調が悪いのに水やりをしているのか!? と焦りながら、



ここまで書いて途切れてます。


なんとなく陽キャ×陰キャの話が書きたいな~と思って少しだけ書いた二人。
まだまだ設定も定まってないので色々パターンで違っていますし、誤字脱字も見直してないのできっとひどいですが、イケメンが陰キャにメロメロなの好きだな~~と……
いつかこの二人もちゃんと書いてあげたいです。


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