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3章~幻の摩天楼事件~
幕間
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探偵ルインは凪のような静けさの中で本棚と相対して立っていた。
四方八方を無垢の色に覆われた空間に置かれてある本棚。そこにある本は全て彼の一生を綴った伝記である。
本と本棚以外に、ウッドチェアが置かれている。そこに一人の大人の女性が深く腰掛けている。彼女は謎に満ちており、摩訶不思議のオーラが溢れ出ている。しかし、彼はそこには言及しなかった。いや、するタイミングを持ち合わせていなかった。
そこに一冊の本が光り出す。
その本は手を伸ばしてようやく届く範囲にあった。
手を伸ばして引き抜いた本は『二十六歳――幻の摩天楼』と書かれていた。
彼が覚えている内容がこの世界に映像として流れていく。
どこかの会社の社員と思われるスーツ姿の男性と少しラフな格好の男性がいる。それに対して、反対運動を行っている人々がいた。その人たちが公民館に一同に集まっていたのだ。対立の雰囲気が漂うその場から出ると、遠くに目を奪う建物群がそびえ立っていた。
それは黒の黄金郷とでも言えば表せるだろうか。輝かしい程のオーラを放つビル群。摩天楼の景色が広がっていた。
しかし、その付近へと着いた時にはその摩天楼は消えて無くなっていた。どこを見渡してもビルなどどこにも見つからないのである。
そんなイメージが共有された。
それを知った彼女が近づいてきた。
長い髪が揺れる度に良い香りが放たれる。背は低いものの、大人の上品さが際立っている。
「やはり、その事件に関わるのですね。」
何かを知っているかのような素振りだ。
意味深長なその言葉がその場にのっしりと佇む。
「何か知っているのですかな?」
「ええ。直接関わってはいないのですけど、この件については姉から詳しく聞いていますので。」
ゆっくりと空を見つめると静かに言った。
「ですけど、私からはこの事件を詳しく言うことは出来ません。やはり、これを言ってしまうとフェアではないですので。私にはどちらかを贔屓することはできません。」
その人物は誰か、それを突っ込むことは出来なかった。それには突っ込んで欲しくないという雰囲気を感じ取ったからだ。
「ただ、少しだけ。少しだけですが、きっと大事になる情報を教えましょう。これぐらいなら問題ない程度の情報です。」
それは誰かに言い訳をするような言葉だった。
「以前『龍の宮』によって焼失させられた会社を覚えていますか?」
「確か……建築会社のリュウダでしたよね?」
「はい。そのリュウダの火事における被害者が、これから変えるべく事件の手がかりとなるはずです。特に三人の亡くなられた被害者を覚えておいて損はないと思うのです。」
彼女の瞳が潤いはじめた。
ゆっくりと悲しげな口調で言い始めていく。
「その三人とは、リュウダの社長の雉鼻竜也と雉鼻巳香。社長夫妻に加えて、フランス人のウルソン・ベルナール。この三人がこれから起きる事件の解決を手伝ってくれる鍵になるはずです。」
閉じた瞳。そして、開けられた瞳。
小さく「ご武運を」と言うと、ゆっくりと椅子に戻った。
手に持った光り輝く本。
その本を開き、右手で頁に触れた。瞬く間にその過去へと吸い込まれるように消えていった。
四方八方を無垢の色に覆われた空間に置かれてある本棚。そこにある本は全て彼の一生を綴った伝記である。
本と本棚以外に、ウッドチェアが置かれている。そこに一人の大人の女性が深く腰掛けている。彼女は謎に満ちており、摩訶不思議のオーラが溢れ出ている。しかし、彼はそこには言及しなかった。いや、するタイミングを持ち合わせていなかった。
そこに一冊の本が光り出す。
その本は手を伸ばしてようやく届く範囲にあった。
手を伸ばして引き抜いた本は『二十六歳――幻の摩天楼』と書かれていた。
彼が覚えている内容がこの世界に映像として流れていく。
どこかの会社の社員と思われるスーツ姿の男性と少しラフな格好の男性がいる。それに対して、反対運動を行っている人々がいた。その人たちが公民館に一同に集まっていたのだ。対立の雰囲気が漂うその場から出ると、遠くに目を奪う建物群がそびえ立っていた。
それは黒の黄金郷とでも言えば表せるだろうか。輝かしい程のオーラを放つビル群。摩天楼の景色が広がっていた。
しかし、その付近へと着いた時にはその摩天楼は消えて無くなっていた。どこを見渡してもビルなどどこにも見つからないのである。
そんなイメージが共有された。
それを知った彼女が近づいてきた。
長い髪が揺れる度に良い香りが放たれる。背は低いものの、大人の上品さが際立っている。
「やはり、その事件に関わるのですね。」
何かを知っているかのような素振りだ。
意味深長なその言葉がその場にのっしりと佇む。
「何か知っているのですかな?」
「ええ。直接関わってはいないのですけど、この件については姉から詳しく聞いていますので。」
ゆっくりと空を見つめると静かに言った。
「ですけど、私からはこの事件を詳しく言うことは出来ません。やはり、これを言ってしまうとフェアではないですので。私にはどちらかを贔屓することはできません。」
その人物は誰か、それを突っ込むことは出来なかった。それには突っ込んで欲しくないという雰囲気を感じ取ったからだ。
「ただ、少しだけ。少しだけですが、きっと大事になる情報を教えましょう。これぐらいなら問題ない程度の情報です。」
それは誰かに言い訳をするような言葉だった。
「以前『龍の宮』によって焼失させられた会社を覚えていますか?」
「確か……建築会社のリュウダでしたよね?」
「はい。そのリュウダの火事における被害者が、これから変えるべく事件の手がかりとなるはずです。特に三人の亡くなられた被害者を覚えておいて損はないと思うのです。」
彼女の瞳が潤いはじめた。
ゆっくりと悲しげな口調で言い始めていく。
「その三人とは、リュウダの社長の雉鼻竜也と雉鼻巳香。社長夫妻に加えて、フランス人のウルソン・ベルナール。この三人がこれから起きる事件の解決を手伝ってくれる鍵になるはずです。」
閉じた瞳。そして、開けられた瞳。
小さく「ご武運を」と言うと、ゆっくりと椅子に戻った。
手に持った光り輝く本。
その本を開き、右手で頁に触れた。瞬く間にその過去へと吸い込まれるように消えていった。
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