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4章~怪盗《ℋ𝑜𝓇𝓈𝑒》参上~
幕間
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ただの空間でしかない無から一冊の本が誕生した。その本は他の本と同様の形を模している。タイトルは『二十七歳――大怪盗エーワン』と題されていた。他の本と比べるならば比較的薄めだが、それでもそれなりの厚みはある。
ルインにはその出来事について何も思い当たる節がなかった。薄らと思い浮かぶこともなく。一切関わりのない出来事だと判断された。
「大怪盗……。風の噂でなら耳に挟んだことがなくはないけど。はっきり言えるのはその怪盗と関わることはなかったね。」
無の空間が広がる世界。そこにぽつりと存在している図書館。そこに存在している椅子に腰を据えていた女性が立ち上がった。彼女――徠凛も同じようにその存在を薄らとだけ知っていたようだ。
「中学生の頃に風の噂で聞いたことがありまして、確か難攻不落のセキュリティの中でも予告状で宣言した通りに宝を盗むという。さらには、その姿を見たものはいない神秘的な稀代の大怪盗と聞いています。私が覚えている範囲で、その時は、何とかの絵画だったり有名な土器だったりを盗んだみたいな噂を聞いた覚えがありますわ。」
心当たりのない事例に戸惑いを感じながら本を見た。その本を手に取る。
手に持った本が光り出すと共に、存在しないはずの記憶が頭の中へと入ってきた。そして、それがどのような現象なのかを把握する要因ともなった。
「これは追加された記憶です。今までの過去を変えたことによって新たに加わった出来事。」
つまり、小さな変化の積み重ねにより現れたバタフライエフェクトが新たな事実を作り上げたのである。
断片的に現れる映像。
それをこの場にいる二人で共有していく。
濃緑色の制服に身を包む背の高く瞳が細い金髪の男性が、腕を組んでこちらを見ている。何やら自分は空港に置かれた包型の検査機械のような物の中に入っている。
とある部屋の中。部屋の中の真ん中にある装置は天井から床まで繋がっている。真ん中だけ硝子張りとなっており、そこから色鮮やかな緑色に輝く、だのに透明度が高く透き通るようなダイヤモンド型の宝石が置かれている。
その部屋にいる三人の男女。難いの良い元気の良い濃緑色の制服を着た男性。気の強そうなサバサバしていそうな三十代ぐらいの濃緑色の制服を着た女性。そして、ひ弱そうな優しい風貌の中年男性。その三人に視線が当たっている。
真っ暗闇の中、突然、一つの壁に丸いライトが照らされる。その中にあるのは――いや、いるのは帽子を被った男性のシルエット。すぐにそれが怪盗エーワンなのだと悟るには容易かった。
それぞれの断片的記憶が追加されたが、この出来事の全貌は分からなかった。
「分からずとも、挑戦するしかありませんね。」
彼は少しだけ唇を緩めていた。
光り出す本を開き、手を重ねる。
彼は光の中へと吸い込まれていった。
ルインにはその出来事について何も思い当たる節がなかった。薄らと思い浮かぶこともなく。一切関わりのない出来事だと判断された。
「大怪盗……。風の噂でなら耳に挟んだことがなくはないけど。はっきり言えるのはその怪盗と関わることはなかったね。」
無の空間が広がる世界。そこにぽつりと存在している図書館。そこに存在している椅子に腰を据えていた女性が立ち上がった。彼女――徠凛も同じようにその存在を薄らとだけ知っていたようだ。
「中学生の頃に風の噂で聞いたことがありまして、確か難攻不落のセキュリティの中でも予告状で宣言した通りに宝を盗むという。さらには、その姿を見たものはいない神秘的な稀代の大怪盗と聞いています。私が覚えている範囲で、その時は、何とかの絵画だったり有名な土器だったりを盗んだみたいな噂を聞いた覚えがありますわ。」
心当たりのない事例に戸惑いを感じながら本を見た。その本を手に取る。
手に持った本が光り出すと共に、存在しないはずの記憶が頭の中へと入ってきた。そして、それがどのような現象なのかを把握する要因ともなった。
「これは追加された記憶です。今までの過去を変えたことによって新たに加わった出来事。」
つまり、小さな変化の積み重ねにより現れたバタフライエフェクトが新たな事実を作り上げたのである。
断片的に現れる映像。
それをこの場にいる二人で共有していく。
濃緑色の制服に身を包む背の高く瞳が細い金髪の男性が、腕を組んでこちらを見ている。何やら自分は空港に置かれた包型の検査機械のような物の中に入っている。
とある部屋の中。部屋の中の真ん中にある装置は天井から床まで繋がっている。真ん中だけ硝子張りとなっており、そこから色鮮やかな緑色に輝く、だのに透明度が高く透き通るようなダイヤモンド型の宝石が置かれている。
その部屋にいる三人の男女。難いの良い元気の良い濃緑色の制服を着た男性。気の強そうなサバサバしていそうな三十代ぐらいの濃緑色の制服を着た女性。そして、ひ弱そうな優しい風貌の中年男性。その三人に視線が当たっている。
真っ暗闇の中、突然、一つの壁に丸いライトが照らされる。その中にあるのは――いや、いるのは帽子を被った男性のシルエット。すぐにそれが怪盗エーワンなのだと悟るには容易かった。
それぞれの断片的記憶が追加されたが、この出来事の全貌は分からなかった。
「分からずとも、挑戦するしかありませんね。」
彼は少しだけ唇を緩めていた。
光り出す本を開き、手を重ねる。
彼は光の中へと吸い込まれていった。
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