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4章~怪盗《ℋ𝑜𝓇𝓈𝑒》参上~
大怪盗ye-one③
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《19》
都市圏内に存在するビルの地下。無機質を基調とした通路。向かった先には検査機械が置かれている。
「それではモタロー様からお願い致します。その間に、ルイン様はサインの程、お願いします。では、こちらにお名前をご記入ください。」
手渡された電子パッドに名前を記入していく。
その後、検査機の中で検査された。
前回はこのまま帰宅するのだが、今回は当日同行する警備員と面会することをお願いしていた。
部屋の一室にもてなされながら座る。
そこに二人の警備員がやって来た。
一人の警備員が懐かしき存在に気づく。「お前、琉己じゃねぇか?」
前回と同様に「もしかして、ゴリかい?」と少し微笑んで返す。
それを聞いて「久しぶりだな。中学生以来か?」と彼もまた笑顔で返した。
「そう言えば、本当の名前は琉己だったねぇ。いつもルインと呼んでいたから忘れかけていたよ。」
「僕もルインに慣れてしまっているので本名呼びは久しいです。まあ、まさに職業病ですね。」
その会話を聞いて彼が驚いていた。
「え、名前が二つもあるんか?」
「源氏名だよ。仕事で使う名前さ。ほら、テレビに出ている芸能人を思い浮かべて見なよ。大抵は別名で名が通っているだろう。それと同じだよ。」
今度は簡単に終わらした。それを聞いてなるほど、という表情をしていた。
「アンタら、知り合いなのかい?」
佐凪惠が割り込んできた。
ゴリが補足する。「ああ、中学生時代の友達でな。」
彼女は「なるほど」と頷いた。
「そうだ。この方は神判地佐凪惠さん。この会社で敏腕警備員と呼ばれる程でな。観察眼がとても凄くて、怪しい人物や行動を見逃さないんだぜ。」
満更でもない表情をしている。
また、それに対抗するかのように口を開く。
「けど、アンタも負けてないでしょ。中堅警備員としてみんなから認められていますからね。中間管理職一歩手前ではありませんか。」
きっと満更でもない表情か嬉しそうな表情をしているのだろうと顔を見たが、何故か複雑な表情をしていた。
「改めて。私達は当日、宝を死守します。お互いに力を合わせましょう。」綺麗なお辞儀だった。
「なあ、琉己。仕事終わったらさ、飲みに行かね?」とみっともない絡みだった。
それを見た彼女が強い口調で「旧友との出会いに浮かれているのは分かりますが、当日も浮かれていたら許されませんですから」と言い放った。そして、強調するために遅れて「ね!」と付け加えた。
そのまま彼女は「私はこれにて失礼します」と退出した。
もう一人はまだ残るようだ。
「マジで嬉しいぜ。仕事での鬱憤も溜まってた所だしな。まっ、お前さんも大変なんだろ。探偵ってアレだろ。尾行したりするんだろ。疲れそうだよな。」
「尾行もするし、探し回ったりもするし、書類作成のために頭も使うし、疲れることは多いよ。けど、社会人なんだから大変なのは当たり前。どんな職種だろうとも、どんな立場だろうとも、逆に無職だとしても、多忙、人間関係、心理的負担、金銭問題、困難はいつも付きまとう。結局はそのストレスをどういなすのか発散するのか考えるのが大人なんだよ。ゴリも同じでしょ。」
「それもそうだな」と大袈裟に笑っていた。
その場から去ろうとした時、彼が急に話題を作り始めた。
「ありがとな。本当はこの件、乗り気じゃなかったんだ。この件で見事手柄を上げると中間管理職に昇格しちまう。そのポストに、最近、天下りしてきた嫌な奴がいて、一緒に働くことが不安だったんだ。けどな、お前さんの言葉で勇気が出たわ。結局、立場が変わろうとも、結局の所、人間関係の悩みが目に見えてるだけで、そこから逃げても他の問題からは逃げ切れねぇのが大人だもんな。大変なのは今のままでも変わらねぇんだよな、きっと。お陰様で吹っ切れた。今夜は酒が美味いぜ。」
その顔に靄などは存在しない。とても明白な満面の笑みを浮かべていた。
その部屋を出た。
社長が直々にお出迎えして出入口まで送り届けてくれるそうだ。
人通りが多い。昼時から少ししか時間が経っていないからだ。
廊下を歩いていく。
また、だ。豪華客船爆破テロの事件の犯人について断片的に追加されていく。否、思い出されていく。
前方から不穏な影が近づいてくる。
それは深緑色の制服を着ていて、普通の社員なのだと判断できる。しかし、そんなちゃちな存在ではない何かがあると確証がないものの、そう思わされる。
一人の男とすれ違った。
爆破テロの爆弾を仕掛けた犯人とその場所の顔が思い出させられる。違う――すぐにそこが船内ではないことに気付く。その映像は爆破テロの記憶ではなかった。何故か思い出されるのは『龍の宮』の研究室の背景。そして、薄らと微笑む一人の科学者。その人物と爆破テロの犯人とがリンクしていたのだ。
身長は百八十はゆうにあり、百九十はあるのではないかと考えられる。しかし、猫背のせいでその大きさが分かりづらい。目にはクマがある。その顔つきは不健康そうな見た目をしていた。
歩きながら、左手でネクタイの結び目を器用に固く結び治す。
通り過ぎて、後ろ姿となっても彼が誰か判断できていた。
存在しなかった記憶の彼の声が「さあ、爆発だ」と悦び謳う記憶が現れた。
「どうしたんだい? ルイン君。」
「ふと、覚えのない記憶が現れましてね。僕らが死ぬことになる豪華客船の爆破テロ事件。その爆弾を仕掛けた犯人が浮かび上がったんですよ。」
奥川はその話を何を言っているのか分からず、無言になっていた。
「して、犯人は誰なんだい?」
「嘴平、亥……です。あの爆破テロの日の、あの声が何故か思い出されるんです。」深刻な声で放たれる。
その人物を知っていた彼は「彼のことを知っていらっしゃるのですか」と聞いた。
丁度エレベーター待ちとなった。
扉が開いた。中には誰も乗っていなかった。
三人だけでエレベーターへと乗った。
「以前、宗教団体に侵入調査をしていた時に知りました。そこまで接点はありませんが。」
「へぇ、宗教……。彼はこの夏頃にここに就職しました。今は中間管理職として働いています。」
「どうしてそんな役職に? まだ経験則も浅いはずですが。」
「ここからは愚痴になってしまうから。やめとくよ。」そう言って、浮かない笑みをした。
ただ、そこにある疑問点が頭の中を支配する。それを突き止めるべきという感覚に溺れた。
「教えて頂きませんか。我々は探偵です。もちろん、口外致しませんので。」
彼は少し考えた後に「承知しました。では、お車で目的地へと送り届けますので、その間にお伝えしましょう」と提案した。
その案に乗る。
「因みに何処へ送ればよろしいでしょうか。」
「実はパーキングに車を停めていてねぇ。」
車が用意され、その中に乗り込んだ。
社長自ら運転するというVIP待遇だ。
「では、お話をお聞かせくださいませんか?」
「そうですね。では、手始めにこの会社がここまで大きくなれた訳を伝えます。五年前、ここアトムは単なる中小企業の――一企業でしかありませんでした。その時に、私は親から社長の座を譲り受けました。」
車はゆっくりと進んでいく。
「しかし、その年、会社の株は大企業ツルヒグループに簡単に買われ、翌年にはツルヒグループの傘下になりました。その日からは奇跡的成長を遂げることとなります。ツルヒグループが建設した建物の警備や警備システムを弊社が独占で担当するようになりました。」
「つまり、会社ツルヒが大きくなり、沢山開発に携われば携わる程に、貴社も発展したということだね。」
「その通りです。それがこの会社が大きくなれた理由なのです。当たり前ですが、我々は親会社となるツルヒグループには頭が上がりません。」
少しずつピースが当てはまっていく。幻の摩天楼の時に手に入れたピースもそこに当てはまっていった。
「今年の夏頃に、そのツルヒグループの社長が自ずと来客されまして。社長は何やら『妻の犯した罪の罪滅ぼしのため』と仰られ、当該――嘴平亥を重要なポストで雇うようにと伝えられました。もちろん、頭が上がりませんから、現在のように彼は中間管理職として天下りを果たしたのです。」
夕陽が美しい峠で言われた言葉を思い出す。『もし良ければ、君たちを良いポストで雇わせて貰えないかな。一応これでも世間的には一流企業と呼ばれる会社の社長なんだ。僕にならそれなりのポストを用意できる。我がツルヒの社員でも良いし、子会社の重鎮でも良い。もちろん、モタローさん。貴殿も用意しますよ。一人や二人ぐらい。この立場ならどうにでもなりますからね』ツルヒの社長の言っていたことが本当であったという事実が重ねられた。
目的地までもうすぐだ。
赤信号となり車に一時的ブレーキがかかった。
「彼は仕事が出来るのかい?」
「残念ながら全く駄目です。ですが、受け入れることしかできませんから。」
「それは大層大変なことだね。」
そこから心の底に置かれていた愚痴が混じっていく。
「学歴や経歴は良いですけど、やはり頭が良ければ良いという物ではないと突き詰められました。高卒で雇った剛力さんの方が数十倍マシですから。剛力さんの方が管理職に引き上がれば良かったと思うばかりです。」
「頭は良いんですね。」
「履歴書見ましたけど、頭は良いですよ。理系の大学院卒ですし、あの有名な博士――日午教授の助教を務めていたようですから。確か博士号も持っていたはずです。」
目的地に辿り着いた。
「お陰様で少しストレスを吐き出せました。ただ、流石に上方や社員に知れ渡るのは良くないので、門外不出でよろしくお願いします。」
「えぇ。もちろんです。」
その約束を守ることを誓った。もちろん、破るつもりなど毛頭ない。
料金所にお金を入れて、車の歯止めを下ろす。
車へと乗り込み、エンジン、シートベルト、ロック解除、そしてアクセルを踏んだ。
串カツが美味しい居酒屋で飲み食いをしていく。盛大に零していく愚痴。話を聞いて行くに連れ、彼が嫌いな中間管理職の人間が亥ということに気付く。
話は中学生時代の話題となり、あの頃の懐かしい話で多いに盛り上がった。
懐かしき友とカクテルが絶妙にマッチしてほろ酔い気分になる。「アッツアツの串カツとキンキンに冷えたビール。最高の二刀流だぜぃ。」
酔い潰れたゴリを介抱しながら帰路に着いた。
都市圏内に存在するビルの地下。無機質を基調とした通路。向かった先には検査機械が置かれている。
「それではモタロー様からお願い致します。その間に、ルイン様はサインの程、お願いします。では、こちらにお名前をご記入ください。」
手渡された電子パッドに名前を記入していく。
その後、検査機の中で検査された。
前回はこのまま帰宅するのだが、今回は当日同行する警備員と面会することをお願いしていた。
部屋の一室にもてなされながら座る。
そこに二人の警備員がやって来た。
一人の警備員が懐かしき存在に気づく。「お前、琉己じゃねぇか?」
前回と同様に「もしかして、ゴリかい?」と少し微笑んで返す。
それを聞いて「久しぶりだな。中学生以来か?」と彼もまた笑顔で返した。
「そう言えば、本当の名前は琉己だったねぇ。いつもルインと呼んでいたから忘れかけていたよ。」
「僕もルインに慣れてしまっているので本名呼びは久しいです。まあ、まさに職業病ですね。」
その会話を聞いて彼が驚いていた。
「え、名前が二つもあるんか?」
「源氏名だよ。仕事で使う名前さ。ほら、テレビに出ている芸能人を思い浮かべて見なよ。大抵は別名で名が通っているだろう。それと同じだよ。」
今度は簡単に終わらした。それを聞いてなるほど、という表情をしていた。
「アンタら、知り合いなのかい?」
佐凪惠が割り込んできた。
ゴリが補足する。「ああ、中学生時代の友達でな。」
彼女は「なるほど」と頷いた。
「そうだ。この方は神判地佐凪惠さん。この会社で敏腕警備員と呼ばれる程でな。観察眼がとても凄くて、怪しい人物や行動を見逃さないんだぜ。」
満更でもない表情をしている。
また、それに対抗するかのように口を開く。
「けど、アンタも負けてないでしょ。中堅警備員としてみんなから認められていますからね。中間管理職一歩手前ではありませんか。」
きっと満更でもない表情か嬉しそうな表情をしているのだろうと顔を見たが、何故か複雑な表情をしていた。
「改めて。私達は当日、宝を死守します。お互いに力を合わせましょう。」綺麗なお辞儀だった。
「なあ、琉己。仕事終わったらさ、飲みに行かね?」とみっともない絡みだった。
それを見た彼女が強い口調で「旧友との出会いに浮かれているのは分かりますが、当日も浮かれていたら許されませんですから」と言い放った。そして、強調するために遅れて「ね!」と付け加えた。
そのまま彼女は「私はこれにて失礼します」と退出した。
もう一人はまだ残るようだ。
「マジで嬉しいぜ。仕事での鬱憤も溜まってた所だしな。まっ、お前さんも大変なんだろ。探偵ってアレだろ。尾行したりするんだろ。疲れそうだよな。」
「尾行もするし、探し回ったりもするし、書類作成のために頭も使うし、疲れることは多いよ。けど、社会人なんだから大変なのは当たり前。どんな職種だろうとも、どんな立場だろうとも、逆に無職だとしても、多忙、人間関係、心理的負担、金銭問題、困難はいつも付きまとう。結局はそのストレスをどういなすのか発散するのか考えるのが大人なんだよ。ゴリも同じでしょ。」
「それもそうだな」と大袈裟に笑っていた。
その場から去ろうとした時、彼が急に話題を作り始めた。
「ありがとな。本当はこの件、乗り気じゃなかったんだ。この件で見事手柄を上げると中間管理職に昇格しちまう。そのポストに、最近、天下りしてきた嫌な奴がいて、一緒に働くことが不安だったんだ。けどな、お前さんの言葉で勇気が出たわ。結局、立場が変わろうとも、結局の所、人間関係の悩みが目に見えてるだけで、そこから逃げても他の問題からは逃げ切れねぇのが大人だもんな。大変なのは今のままでも変わらねぇんだよな、きっと。お陰様で吹っ切れた。今夜は酒が美味いぜ。」
その顔に靄などは存在しない。とても明白な満面の笑みを浮かべていた。
その部屋を出た。
社長が直々にお出迎えして出入口まで送り届けてくれるそうだ。
人通りが多い。昼時から少ししか時間が経っていないからだ。
廊下を歩いていく。
また、だ。豪華客船爆破テロの事件の犯人について断片的に追加されていく。否、思い出されていく。
前方から不穏な影が近づいてくる。
それは深緑色の制服を着ていて、普通の社員なのだと判断できる。しかし、そんなちゃちな存在ではない何かがあると確証がないものの、そう思わされる。
一人の男とすれ違った。
爆破テロの爆弾を仕掛けた犯人とその場所の顔が思い出させられる。違う――すぐにそこが船内ではないことに気付く。その映像は爆破テロの記憶ではなかった。何故か思い出されるのは『龍の宮』の研究室の背景。そして、薄らと微笑む一人の科学者。その人物と爆破テロの犯人とがリンクしていたのだ。
身長は百八十はゆうにあり、百九十はあるのではないかと考えられる。しかし、猫背のせいでその大きさが分かりづらい。目にはクマがある。その顔つきは不健康そうな見た目をしていた。
歩きながら、左手でネクタイの結び目を器用に固く結び治す。
通り過ぎて、後ろ姿となっても彼が誰か判断できていた。
存在しなかった記憶の彼の声が「さあ、爆発だ」と悦び謳う記憶が現れた。
「どうしたんだい? ルイン君。」
「ふと、覚えのない記憶が現れましてね。僕らが死ぬことになる豪華客船の爆破テロ事件。その爆弾を仕掛けた犯人が浮かび上がったんですよ。」
奥川はその話を何を言っているのか分からず、無言になっていた。
「して、犯人は誰なんだい?」
「嘴平、亥……です。あの爆破テロの日の、あの声が何故か思い出されるんです。」深刻な声で放たれる。
その人物を知っていた彼は「彼のことを知っていらっしゃるのですか」と聞いた。
丁度エレベーター待ちとなった。
扉が開いた。中には誰も乗っていなかった。
三人だけでエレベーターへと乗った。
「以前、宗教団体に侵入調査をしていた時に知りました。そこまで接点はありませんが。」
「へぇ、宗教……。彼はこの夏頃にここに就職しました。今は中間管理職として働いています。」
「どうしてそんな役職に? まだ経験則も浅いはずですが。」
「ここからは愚痴になってしまうから。やめとくよ。」そう言って、浮かない笑みをした。
ただ、そこにある疑問点が頭の中を支配する。それを突き止めるべきという感覚に溺れた。
「教えて頂きませんか。我々は探偵です。もちろん、口外致しませんので。」
彼は少し考えた後に「承知しました。では、お車で目的地へと送り届けますので、その間にお伝えしましょう」と提案した。
その案に乗る。
「因みに何処へ送ればよろしいでしょうか。」
「実はパーキングに車を停めていてねぇ。」
車が用意され、その中に乗り込んだ。
社長自ら運転するというVIP待遇だ。
「では、お話をお聞かせくださいませんか?」
「そうですね。では、手始めにこの会社がここまで大きくなれた訳を伝えます。五年前、ここアトムは単なる中小企業の――一企業でしかありませんでした。その時に、私は親から社長の座を譲り受けました。」
車はゆっくりと進んでいく。
「しかし、その年、会社の株は大企業ツルヒグループに簡単に買われ、翌年にはツルヒグループの傘下になりました。その日からは奇跡的成長を遂げることとなります。ツルヒグループが建設した建物の警備や警備システムを弊社が独占で担当するようになりました。」
「つまり、会社ツルヒが大きくなり、沢山開発に携われば携わる程に、貴社も発展したということだね。」
「その通りです。それがこの会社が大きくなれた理由なのです。当たり前ですが、我々は親会社となるツルヒグループには頭が上がりません。」
少しずつピースが当てはまっていく。幻の摩天楼の時に手に入れたピースもそこに当てはまっていった。
「今年の夏頃に、そのツルヒグループの社長が自ずと来客されまして。社長は何やら『妻の犯した罪の罪滅ぼしのため』と仰られ、当該――嘴平亥を重要なポストで雇うようにと伝えられました。もちろん、頭が上がりませんから、現在のように彼は中間管理職として天下りを果たしたのです。」
夕陽が美しい峠で言われた言葉を思い出す。『もし良ければ、君たちを良いポストで雇わせて貰えないかな。一応これでも世間的には一流企業と呼ばれる会社の社長なんだ。僕にならそれなりのポストを用意できる。我がツルヒの社員でも良いし、子会社の重鎮でも良い。もちろん、モタローさん。貴殿も用意しますよ。一人や二人ぐらい。この立場ならどうにでもなりますからね』ツルヒの社長の言っていたことが本当であったという事実が重ねられた。
目的地までもうすぐだ。
赤信号となり車に一時的ブレーキがかかった。
「彼は仕事が出来るのかい?」
「残念ながら全く駄目です。ですが、受け入れることしかできませんから。」
「それは大層大変なことだね。」
そこから心の底に置かれていた愚痴が混じっていく。
「学歴や経歴は良いですけど、やはり頭が良ければ良いという物ではないと突き詰められました。高卒で雇った剛力さんの方が数十倍マシですから。剛力さんの方が管理職に引き上がれば良かったと思うばかりです。」
「頭は良いんですね。」
「履歴書見ましたけど、頭は良いですよ。理系の大学院卒ですし、あの有名な博士――日午教授の助教を務めていたようですから。確か博士号も持っていたはずです。」
目的地に辿り着いた。
「お陰様で少しストレスを吐き出せました。ただ、流石に上方や社員に知れ渡るのは良くないので、門外不出でよろしくお願いします。」
「えぇ。もちろんです。」
その約束を守ることを誓った。もちろん、破るつもりなど毛頭ない。
料金所にお金を入れて、車の歯止めを下ろす。
車へと乗り込み、エンジン、シートベルト、ロック解除、そしてアクセルを踏んだ。
串カツが美味しい居酒屋で飲み食いをしていく。盛大に零していく愚痴。話を聞いて行くに連れ、彼が嫌いな中間管理職の人間が亥ということに気付く。
話は中学生時代の話題となり、あの頃の懐かしい話で多いに盛り上がった。
懐かしき友とカクテルが絶妙にマッチしてほろ酔い気分になる。「アッツアツの串カツとキンキンに冷えたビール。最高の二刀流だぜぃ。」
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