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5章~豪華客船爆破テロ事件~
豪華客船爆破テロ事件④
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《22》
「流石に関係者以外は立ち入れないようですね。」
厨房部屋への入室は固くお断りされた。
横にある食料庫は関係者以外立ち入り禁止であり、セキュリティロックで固く閉じられている。
近くにあるトイレ。隈なく探すが、男子トイレに異常はない。また、清掃員に頼み込み女子トイレへと入る。やはり、爆弾物は無さそうだった。
「残るは自販機ルームですね。」
しかし、そこにもめぼしい物は置かれていなかった。
そこに二人の男女ペアがやって来た。
一人は竹月だった。
「ほっほ。カジノで大勝負した人じゃないか。ワシはあんな勝負が大好きでね。ハラハラさせられたよ。」
彼らは飲み物を購入した。
「おぬしらはどこかの経営者か何かかい?」
「いいえ。しがない探偵事務所の所長と助手だよ。」
「そうなんじゃな。凄い額の金を持っとったから、どこの豪邸人かと思ったわい。一応ワシらは月下美家具屋の経営者なんじゃよ。もし、家具が必要な時はいつでも買いに来ると良いぞ。」
朗らかに話してきた。
彼らは飲み物を持って、その場を去ろうとする。「あっ、自己紹介がまだじゃったな。ワシは竹月鳥爾。こっちは妻の花じゃ。一期一会。良い出会いを。」
そうして二人は過ぎ去っていった。
二人も自販機で飲み物を買う。
「そういや、その爆弾魔の彼はそう言ってたんだよね。つまり、ビルの貸し切りではないと思うんだ。本当に貸し切りが行われたらの話だけど、とても高くて眺めの良いばしょが一つピンと来る所があるんだよ。」そう言って、モタローはスマホを取り出して電話し出した。
電話を終えた頃には飲み物を半分ぐらい飲みきっていた。
その後、二日目は簡単に過ぎ去っていった。
三日目の夕暮れ時。
ルインは一人、三階の部屋が並ぶ場所に立っていた。
そこに怪しい箱を持っている黒フードの彼がやって来た。
「前回、録画していて良かったですよ。何時に、そしてここに来ることが分かりましたからね。」
彼の前に立ちはだかる。
「待ってましたよ。猿渡君。その爆弾を引き渡して貰おうか?」
「なっ、アンタ、何故それを。」
突然走り出し、思いっきり横に押し出す。それによって尻もちを着いた。すぐに立ち上がり、彼を追う。
優雅な船の中、足音が響き渡る。
足音は異変へと変わる。それに気付いた二人の客船クルー。その内一人が「まさか、待てや」と追ってきた。残る一人は「さっき入った爆弾の件っすか?」と聞こうとするが、とっくに置いていかれてしまっていた。
階段を勢い良く降っていく。
降った先に、モタローが待っていた。
「これは俺が追った方がいい感じだよね。」
それに対して「いいえ、僕が追うので――」と言いかけた瞬間、客船クルーの一人に捕まり床へと押し付けられた。そして、「んな、訳ねぇだろ。行けよ、アンタ。追うんだろ。早くしないと取り逃しちまう」と切羽詰まった声を響かせる。
それを見て「何が何だか分からないけど、行くしかなさそうなんだよね。運命的にもね」と走り出していった。
それを目で追っていく。
押さえつけてるクルーもまた目で追っていて、押さえつけることに集中出来ていない。そこを狙って力を込めて横に転がっていく。
彼の拘束から抜け出すことに成功し、その場で立ち上がった。
服についた汚れを手で払った。
「どうして邪魔をするんです? プレイヤーX君。」冷たく声が響く。
彼はダルそうに頭を搔いた。
片足に重心を置いた立ち姿勢で話していく。
「ったく、余計なことしやがって。せっかく演じやすくてボロが出なさそうなコイツ――片銀大志になれたと思った矢先によぉ。こんなことなら相方の齋藤黄丹にでもなってくれれば良かったのにな。」
独り言が宙を舞っている。
その間には少し温度差が感じられる。
「どうして、邪魔をするのか……。僕には理解が出来ませんね。」
「そんなの、未来が変わってしまうかも知れないからだろ。」
「君は未来を変えて、過去改変を失敗させるのが目的じゃないんです?」
「ああ、そうなんだが、それとこれとじゃ話が違う。アンタがしようとしてたのは、過去戻りに関する全ての根幹なんだ。」
「全く意図が掴めませんね。」
「アンタも無関係じゃないはずだぜ。今までは失敗しても戻されるだけだったと思うが、これは違う可能性がある。アイツが追うことが過去を戻るための根本なんだ。それが揺らぐもんなら、過去へと戻れず、爆破テロは防げないんだぞ。」
冷たい空気が漂っている。
「君が爆破テロを阻止する理由が僕には分からない。被害に遭う僕ならまだしもね。」
彼はポケットに手を突っ込みながら言い放った。「それは俺も被害者だったからに決まってるだろ。」
「つまり、この船に君の本当の人物がいると言うことですか。もしかして僕は君に会っていたりしてます?」「ちっ、否定はしねぇよ。」
今まで謎に包まれていたプレイヤーXの正体が、それを覆う外の筒が剥がれ落ちていく。
頭の中で、今まで船の中で出会った人達を思い返していく。
まず客船クルーの二人、片銀と齋藤は彼が話した内容を考えると違うことが考えられる。燐音のようなお淑やかなタイプでもなさそうだ。
金太の独特な喋りはしていないし、側近にいる昌苅は無口で、違うとすぐに分かる。また、話し方から考えれば竹月鳥爾ではないと思われる。また、その妻でもないだろう。
残るは男勝りな俺っ子の船長、駱駝岩スフィアか。それとも、独特な喋り方をする前原雨譚か。それとも――
ふと思い出される怪盗エーワンの予告状に対して検査をすることになった時に、何故かプレイヤーXが犬島ルイン呼びをしたこと。船にいる合間にそう名乗った相手は一人しかいなかった。そして、その人物と彼が本性を顕にした時に話す話し方が一致した。
「君はもしかして――猿渡驚輝かい?」
彼はため息とともに「正解」と繰り出した。
そして、諦めたかのように天井を見上げていた。
「ったく、煙草が吸いてぇなぁ。」
そう愚痴ってから、正面を向き始めた。
「俺の――負けだ。」そして「正体が見破られるまでアンタの過去戻りを失敗させようと思ってたんだ。だが、正体が見破られちまった今、俺はアンタに協力してやるよ」と言い放った。
ゆっくりと近づいてきて、ルインの肩に手を置いた。
「まっ、この歴史は俺自身も変えたいと思ってるんだ。どうせ過去戻りの最後なんだろ。最後ぐらい協力しようぜ。」
肩から手を離して、そのままゆっくりと真っ直ぐに歩き出していた。
「募る話はあるだろうが、お話は、こんな鉄の塊の中で、狭苦しく騒々しい船内じゃなくて、もっと真逆の場所で話し合おうぜ。」
船という限られた狭い空間。爆弾に怯え逃げ惑う騒々しい音。薄暗い闇夜のこの場所とは真逆の場所。この時は全くピンとこなかった。
彼は肘から上の右手を上にあげた。
さらりと去っていく姿に、思わず呆気にとられてしまった。
彼を追いかけるか、モタローを追いかけるか。どちらか迷っている最中に現れる熱を帯びた煙。その爆風と共に意識が彼方に飛ばされていった。
「流石に関係者以外は立ち入れないようですね。」
厨房部屋への入室は固くお断りされた。
横にある食料庫は関係者以外立ち入り禁止であり、セキュリティロックで固く閉じられている。
近くにあるトイレ。隈なく探すが、男子トイレに異常はない。また、清掃員に頼み込み女子トイレへと入る。やはり、爆弾物は無さそうだった。
「残るは自販機ルームですね。」
しかし、そこにもめぼしい物は置かれていなかった。
そこに二人の男女ペアがやって来た。
一人は竹月だった。
「ほっほ。カジノで大勝負した人じゃないか。ワシはあんな勝負が大好きでね。ハラハラさせられたよ。」
彼らは飲み物を購入した。
「おぬしらはどこかの経営者か何かかい?」
「いいえ。しがない探偵事務所の所長と助手だよ。」
「そうなんじゃな。凄い額の金を持っとったから、どこの豪邸人かと思ったわい。一応ワシらは月下美家具屋の経営者なんじゃよ。もし、家具が必要な時はいつでも買いに来ると良いぞ。」
朗らかに話してきた。
彼らは飲み物を持って、その場を去ろうとする。「あっ、自己紹介がまだじゃったな。ワシは竹月鳥爾。こっちは妻の花じゃ。一期一会。良い出会いを。」
そうして二人は過ぎ去っていった。
二人も自販機で飲み物を買う。
「そういや、その爆弾魔の彼はそう言ってたんだよね。つまり、ビルの貸し切りではないと思うんだ。本当に貸し切りが行われたらの話だけど、とても高くて眺めの良いばしょが一つピンと来る所があるんだよ。」そう言って、モタローはスマホを取り出して電話し出した。
電話を終えた頃には飲み物を半分ぐらい飲みきっていた。
その後、二日目は簡単に過ぎ去っていった。
三日目の夕暮れ時。
ルインは一人、三階の部屋が並ぶ場所に立っていた。
そこに怪しい箱を持っている黒フードの彼がやって来た。
「前回、録画していて良かったですよ。何時に、そしてここに来ることが分かりましたからね。」
彼の前に立ちはだかる。
「待ってましたよ。猿渡君。その爆弾を引き渡して貰おうか?」
「なっ、アンタ、何故それを。」
突然走り出し、思いっきり横に押し出す。それによって尻もちを着いた。すぐに立ち上がり、彼を追う。
優雅な船の中、足音が響き渡る。
足音は異変へと変わる。それに気付いた二人の客船クルー。その内一人が「まさか、待てや」と追ってきた。残る一人は「さっき入った爆弾の件っすか?」と聞こうとするが、とっくに置いていかれてしまっていた。
階段を勢い良く降っていく。
降った先に、モタローが待っていた。
「これは俺が追った方がいい感じだよね。」
それに対して「いいえ、僕が追うので――」と言いかけた瞬間、客船クルーの一人に捕まり床へと押し付けられた。そして、「んな、訳ねぇだろ。行けよ、アンタ。追うんだろ。早くしないと取り逃しちまう」と切羽詰まった声を響かせる。
それを見て「何が何だか分からないけど、行くしかなさそうなんだよね。運命的にもね」と走り出していった。
それを目で追っていく。
押さえつけてるクルーもまた目で追っていて、押さえつけることに集中出来ていない。そこを狙って力を込めて横に転がっていく。
彼の拘束から抜け出すことに成功し、その場で立ち上がった。
服についた汚れを手で払った。
「どうして邪魔をするんです? プレイヤーX君。」冷たく声が響く。
彼はダルそうに頭を搔いた。
片足に重心を置いた立ち姿勢で話していく。
「ったく、余計なことしやがって。せっかく演じやすくてボロが出なさそうなコイツ――片銀大志になれたと思った矢先によぉ。こんなことなら相方の齋藤黄丹にでもなってくれれば良かったのにな。」
独り言が宙を舞っている。
その間には少し温度差が感じられる。
「どうして、邪魔をするのか……。僕には理解が出来ませんね。」
「そんなの、未来が変わってしまうかも知れないからだろ。」
「君は未来を変えて、過去改変を失敗させるのが目的じゃないんです?」
「ああ、そうなんだが、それとこれとじゃ話が違う。アンタがしようとしてたのは、過去戻りに関する全ての根幹なんだ。」
「全く意図が掴めませんね。」
「アンタも無関係じゃないはずだぜ。今までは失敗しても戻されるだけだったと思うが、これは違う可能性がある。アイツが追うことが過去を戻るための根本なんだ。それが揺らぐもんなら、過去へと戻れず、爆破テロは防げないんだぞ。」
冷たい空気が漂っている。
「君が爆破テロを阻止する理由が僕には分からない。被害に遭う僕ならまだしもね。」
彼はポケットに手を突っ込みながら言い放った。「それは俺も被害者だったからに決まってるだろ。」
「つまり、この船に君の本当の人物がいると言うことですか。もしかして僕は君に会っていたりしてます?」「ちっ、否定はしねぇよ。」
今まで謎に包まれていたプレイヤーXの正体が、それを覆う外の筒が剥がれ落ちていく。
頭の中で、今まで船の中で出会った人達を思い返していく。
まず客船クルーの二人、片銀と齋藤は彼が話した内容を考えると違うことが考えられる。燐音のようなお淑やかなタイプでもなさそうだ。
金太の独特な喋りはしていないし、側近にいる昌苅は無口で、違うとすぐに分かる。また、話し方から考えれば竹月鳥爾ではないと思われる。また、その妻でもないだろう。
残るは男勝りな俺っ子の船長、駱駝岩スフィアか。それとも、独特な喋り方をする前原雨譚か。それとも――
ふと思い出される怪盗エーワンの予告状に対して検査をすることになった時に、何故かプレイヤーXが犬島ルイン呼びをしたこと。船にいる合間にそう名乗った相手は一人しかいなかった。そして、その人物と彼が本性を顕にした時に話す話し方が一致した。
「君はもしかして――猿渡驚輝かい?」
彼はため息とともに「正解」と繰り出した。
そして、諦めたかのように天井を見上げていた。
「ったく、煙草が吸いてぇなぁ。」
そう愚痴ってから、正面を向き始めた。
「俺の――負けだ。」そして「正体が見破られるまでアンタの過去戻りを失敗させようと思ってたんだ。だが、正体が見破られちまった今、俺はアンタに協力してやるよ」と言い放った。
ゆっくりと近づいてきて、ルインの肩に手を置いた。
「まっ、この歴史は俺自身も変えたいと思ってるんだ。どうせ過去戻りの最後なんだろ。最後ぐらい協力しようぜ。」
肩から手を離して、そのままゆっくりと真っ直ぐに歩き出していた。
「募る話はあるだろうが、お話は、こんな鉄の塊の中で、狭苦しく騒々しい船内じゃなくて、もっと真逆の場所で話し合おうぜ。」
船という限られた狭い空間。爆弾に怯え逃げ惑う騒々しい音。薄暗い闇夜のこの場所とは真逆の場所。この時は全くピンとこなかった。
彼は肘から上の右手を上にあげた。
さらりと去っていく姿に、思わず呆気にとられてしまった。
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