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第一章 王国、離縁篇
※PV2万記念閑話: 花開くは、彼の才能と共に
しおりを挟むリチャードは部屋の扉を閉めてから、背をピッタリとつけるように扉にもたれ掛かる。
そうして背を預けたまま、ずるずると床にしゃがみ込んだ。
「はっ·····はぁ。っ······う」
これ以上声が漏れ出さないように両手で口を覆う。
どうせ顔が上気して恍惚といった表情になっているのだろう、こんな顔見せられるはずもない。
リチャードは頭を抱えて蹲った。
「ヴィクトールさま、、あれはっ、反則」
リチャードは女性に興味がない。
いや、他人に、性に、興味がない。と言おう。
ランブルグ公爵家の次男であり、女の子のような可愛らしい外見であることも相まって、何度公の場で女に囲まれたことか。しかしあれほど迷惑だと思ったことはない。
本当に、心から、長男として生まれなかったことに感謝している。長男としての役割は、僕には到底果たせないだろうから。
物心がついた時からずっと、性的な興味は全くなかった。兄や彼の友人が、女性関係について話しているのは何度も聞いてきたが、自分には関係のない話だとすら思っていたのだ。
魔法が、美しいものが、好き。
そう自覚したのは、体内の魔力を自分の身体の中で感じながら練りあげてピンク色の美しい炎が出たのを見た瞬間からだった。
『あぁ、美しい···········』
そんな言葉が自然と漏れて、初めて自身が昂ぶる高揚を感じた。
それからは、魔法だけに没頭した。元々、基本属性全ては使えたのだが、それを更に極限まで極めた。
そして、自分を滾らせるそのピンク色の美しい炎は、自分の新しい境地、無属性魔法だったらしい。
その瞬間(とき)、僕は特別になった。
他の属性の魔法と同等かそれ以上の威力で、その美しい魔法は僕から、僕だけの色で放たれていく。
それを見るだけで、自身が大きくなるのがわかる。無限の可能性を秘めている、そんな感覚。
気持ち良い、それに尽きた。
そして、それから直ぐに父がその特別な魔法の才能に気付き、リドゥレラ中立国の国立魔法学園に入学することになったのだ。
リチャードが弱冠十歳の事だった。
入学時、周りの全てを見下していたと断言しよう。
自分は公爵家子息で、美しく、魔法の天才。飛び級で学園に入った者など過去に類を見ないだろう。
だが、その屹立した鼻は、一瞬で折られることになる。当時、自分の国の皇太子であったヴィクトール・ルドアニアによって。
魔法実習で見た時から忘れはしない、あの冷めきった表情から放たれる美しい黄金の魔法陣と魔法。
そして、言わずもがな、彼も特別だった。
それだけではない。彼は今のこの世界では唯一とも言われる闇魔法の使い手だったのだ。
正真正銘の最強、を目の前に初めて足が竦んだ。
あの漆黒に濡れた髪、黄金の瞳。
最初、彼から闇が漏れだしたのを見た時、僕は一人闇に囚われたまま失禁したのだから。あの、背中を深い闇が這うような感覚、そして完全に呑まれた日には逃げられず、真っ黒な孤独と闇が自分を支配するのだ。
初めて、恋をした。
魔法に恋をしていた少年が、初めて人に興味を持ち、初めて、恋をした。
だが、ヴィクトールはその圧倒的な力を持ちながらも謙虚だった。力を見せびらかす事はせず、派手な事は好まず、傍にぴったりとついて離れないセドリックという一人の男といつも行動していた。
『あいつ、ばっかり、』
若さ故の間違えだったが、セドリックに喧嘩を売れば、返り討ちにされた。
そう、彼もまた特別。
そしてヴィクトールに仕えようと決意した。
きっと、彼の周りには優秀な人材が集まる。そしてこの人は新しい時代を切り拓くだろう。その圧倒的な魔力量、魔法、オーラとカリスマで。
自分の利用価値など、彼の前では無いに等しいのだろう。だが、もし、必要とされるのであれば。この特別な力と魔力、才能の全てを彼に捧げよう、と。
そして卒業後、リチャードは騎士団に所属。
三年後にヴィクトールは父を殺し皇帝へと即位した。
同時に、リチャードはヴィクトールから指名されて白騎士団を最初から発足したのだ。
白騎士団はリチャードの至宝。云うならば、ヴィクトールからの、初めての贈物なのである。
「ヴィクトールさま、、僕を······僕の魔力を、感じて····っ」
リチャードは一人、扉を背もたれに蹲りながら、自ら魔法付与を施した転移の指輪を付けた手で、膨張した己の男性器を強く握りしめた。
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