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第一章 王国、離縁篇
47. 離縁の先に待つは、希望か、絶望か※
しおりを挟む───時は遡る、
リリアーナが皇国皇帝ヴィクトールと共にルドアニア皇国へと出国した日。
レベロン王国の執務室には思わぬ来客があった。
王国宮廷医師のファルスである。
「殿下、久しいのぅ。アレクセイも、」
「ファルスどうした、今忙しいのだけど」
「そう言ってくれるな、殿下。ルドアニア皇国の皇族専属医師、マチルダから儂にリリアーナ様の身体検査の結果を開示するように文が来てな。それを纏めたんで送りたいんじゃが、速達で、と言われてのう、」
ルドアニア皇国、リリアーナ、という単語を聞いてクリストファーが心の底から嫌そうな顔を全面にだす。
「そんなもの「ファルス医師、ありがとうございます。私が魔法で送りましょう」
「ほう、流石アレクセイじゃな!」
アレクセイは集中して魔法を展開させた。
【魔法展開、物質瞬間輸送、レベロン王国王宮医師ファルスからルドアニア皇国セドリック・ラズベル殿、】
アレクセイと瞳の色と同じ深い緑の魔法陣が浮かび上がると、そこにアレクセイはファルスから受け取った書類を置く。そして、それは徐々に吸い込まれ、魔法陣と共に消えてなくなった。
「完了しました。これできっとすぐに受け取って頂けるかと。セドリック卿の魔力は知っているので、受け渡しが完了したこともすぐに分かりますよ」
「ほう、凄いのう!」
「それより、ファルス。いつになったら僕はルリナに会えるんだ?早く彼女に謝りたい。あんな手荒に扱ってしまって。舞踏会の日すら、アレクが俺を近づけなかったから話すらできていないんだよ」
「ふむ。それはアレクセイに聞いたらどうじゃ」
アレクセイはクリストファーに向き直って仕方なさそうに口を開く。
「殿下、ルリナ嬢の身体検査も終了し、月のものも来たようですので会うことはできます。ですが。
性交渉はおやめください。少なくとも国王がルリナ嬢を王太子妃にと任命し、公表するまでは。それをお約束して下さるのでしたら部屋をお教えします」
「も、勿論だ!父上もルリナ嬢との婚約は認めてくれたわけだし、きっと公表もすぐだろうが。そこまでは、絶対に手はださない!」
「分かりました。彼女は、別塔の最上階に隔離されています」
クリストファーはその場所を聞いて、足早に執務室をでていった。
「······そのお返事は前も聞いたのですがね。本当に、この国はどうなるんでしょう。国王陛下もリリアーナ様をルドアニア皇国に誓約付きで引き渡すなど。彼女を売ったも同然でしょうに」
クリストファーの恋愛結婚がしたいという子供じみた我儘でルリナ嬢を王太子妃とする等。絶対に間違っている。アレクセイは諦めたように首を横に振った。
「儂ももう引退時かのぅ、」
そんなアレクセイを見たファルスは、フォッフォッフォッと笑いながら部屋をでていった。
◆
クリストファーは別塔と呼ばれている城内にある隔離された塔の最上階までやってきた。
やってきた、にはやってきたのだが、なかなか部屋の中に踏みこめないでいる。
最初からなんとなくわかっていた事だったのに。
塔の下についた時に、そこで護衛をしていた騎士に面会を止められたのだ。
そして階段内部に足を踏み入れ進んでいけばその理由はすぐに分かった。
この塔は螺旋階段で階段内部は音が響く。
そして階段を登る彼の耳にはルリナの快楽に喘ぐ声が一定間隔で聞こえていた。
だが、クリストファーは歩みを止められなかった。
この目で真相をみるまでは、嘘だと思いたい、と。
そう願いながら、彼女の愉悦に善がる声を踏みしめるように一段一段、階段を上っていったのだ。
そしてその部屋の扉の前まできて目を見張った。
戸は完全には閉まっておらず、少し開いた隙間から覗くのは彼女の妖艶な横顔と男の上に跨る姿。
気付かれない程度の風魔法を使用し、耳を澄ませば室内の全ての音と声を簡単に拾い集められた。
いや、風魔法など·······。夢中になっている二人には必要なかったかもしれないが。
『ねぇ、ロメル。次はいつ来れそうなのぉ?』
『明日は駄目だな。明後日なら、王城で訓練の後に。それより、例のモノは?』
『ちょっとぉ、急かさないでよぉ』
『早くしろよ。俺も早くお前と堕ちたいんだよ』
『分かったからぁ、』
ルリナは男の上から降りると、近くにあった金庫から何かを取り出す。その手には白い小さな錠剤が入った瓶が握られていた。
それを持ってルリナは足早に男のもとに駆け戻る。
『おせーよ。はやく、口うつしで、』
ルリナは錠剤を舌に置いてからそれを見せつけるように男の唇と重ね合わせる。といっても彼らのそれは最初から深いもので、舌を絡ませるように貪り合い、くちゅくちゅと二人の唾液が絡まる音をたてた。
『ああ、美味いな。そのいやらしい口で俺のをしゃぶれよ。勃たせてくれ』
ルリナは尻尾を振る動物のように悦びを顕にしながら男の下半身に顔を埋めた。
自分の目の前で、彼女が一心不乱に口淫を始める。
じゅぽっじゅぽっ、と音がしてクリストファーは茫然とした。
そしてそんな卑猥な音を聞いても反応を示さない自分の息子を褒めてやりたくなった。今まで妄想の中では何度も彼女の口を此奴で犯してきたのに、だ。
次の瞬間、クリストファーはその男が彼女が持っていた瓶から錠剤を何粒か取り出してからベッドに掛けていた騎士服の上着胸ポケットに入れたのを見た。
(───あれは一体何なんだ、)
それに気付かないほどに夢中でしゃぶりついていたルリナは十分に大きくなったその男の肉棒を、恍惚の表情で眺めてから、手で握りしめた。
『········ねえ、もう良い?わたしもう、』
『ああ、勝手にしろよ』
彼女はその言葉に嬉しそうに微笑むと、大切に握りしめたそれを彼女自身の蜜口に充てがう。
そしてそのままゆっくり腰を落とした。
『あああっ!深いぃ······っ!』
『ああ、きたきた。これは本当に病みつきだなあ、』
今まで特段行為に興味のなさそうだった男は、突然何かが憑依したように蕩けた表情に変わる。
『ロメルっ、凄いっ。私で、感じてっ、』
『ああっ、最高だ!お前が極上な女に見えるぞ!』
『またおっきく······っ、はぁ、ふかぁ······』
ルリナは自分で腰を動かし、抽挿を繰り返す。
どれくらい経ったのだろう、一層激しく深くなったその交わりは終わりを迎えるらしい。
二人が快感に溺れる声が段々と荒くなり余裕のないものに変わる。
『───っ、もうだめっ、ろめるぅ、達くぅっ·············っ、』
『っ、そんなに焦らすな。直ぐにいっぱいにしてやるからッ!』
そして男は彼女の腟内に精を放った。そして自分の身体の上にぐったりと凭れ掛かった彼女を横へ押し退けると、足を縺れさせながらそそくさと騎士服に着替えていく。
情事の後直ぐに身支度を整えだした男を見てクリストファーは慌てて風魔法を解除し、瞬間転移魔法の発動に切り替える。
王族のクリストファーが唯一使える高位の魔法だ。
【瞬間転移魔法、レベロン王国執務室】
『ほんと、こんな女が王太子妃になるなんて、この国も終わったも同然だよなあ、』
転移の直前、最後にクリストファーが聞いたのはロメルという男の呟きだった。
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