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13. 悪役令嬢役の努力
※小説内での♡記載は極力しない主義なのですが、ヴァレンティ―ナがシェリルに渡したお馬鹿なメモ書きには記載があるようなのでそこのみ入れています。
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シェリルは寮の部屋に備え付けの浴槽に恐る恐る湯を張った。
「寮母さんは気にせず湯を張って入ってと仰っていましたけれど······やはりお湯を沸かすだけでもお金がかかるのでしょうね?こんなに貴重な湯を大量にわたくし一人で使っても良いものなのでしょうか?」
確かに公爵家でも何度か湯には浸かったが、大量の水を使うそれは貴族が主にする事だと聞いた。
前世で施設にいた時は、週に2度だけ簡易的な清めの場を使う事ができたのだが、それも湯などではなく、いつも冷たい水だった。
シェリルは「海の水じゃないだけマシだと思え!」と研究員達が笑っていたのを思い出す。と言っても、海すら見たことがない彼女にはあまりよく分からなかったのだけど。
だから、今日はシェリルが初めて、自分で火を使って張った湯、なのだ。
たっぷりの湯が張られた浴槽を覗き込めば、自分の顔が映った。
「こ、これに入ればいいのですよね?それでは······失礼致します······ッ、ひあぁぁん!」
脚の先から浴槽に浸かろうとして爪先に走った感覚に、シェリルは悶絶し、後ずさり、蹲る。
「な、な、な······なんでしょうか!こ、これは!!」
シェリルは再び浴槽を覗き込んだ。
そして恐る恐る手でそれに触れる。
「あ······温かい······熱い······?も、もしかして······これが熱いという感覚なのでしょうか?公爵家ではいつもローズさんが張って下さっていたから······こんなに難しいのですね」
シェリルは温度確認をしながら、脚の先をゆっくりと浴槽の中に入れた。
「ッ······ぁぁ、っ······!これが······熱さからくる······痛み!っ······はぁ」
シェリルは感じた痛みに感動した。施設で火傷する一歩手前の熱湯を浴びせられる事もよくあった。
周りの子達は「痛い!」と泣いていたけれど、自分にはその感覚すら分からなかったから。
でも、この世界に来てからシェリルは痛みを感じるようになったらしいのだ。
それは、彼女にとっては願ってもなかった感覚······それが痛覚だ。
「痛みというのは、これほどのものなのですね······!」
身体を深く沈め、シェリルは先程まで読んでいたヴァレンティ―ナのメモ書きの内容を思い出した。
「ヴァレンティ―ナさん、自分の書いた小説に転生するなんて······本当に素晴らしいわ。それに、友人として私も連れてきてくれるなんて······なんて心優しいのかしら」
このロザリア王国で彼女は特別な存在。
この国の創造主であり、主人公として色んな人に愛される第二の人生を謳歌しようとしているヴァレンティ―ナなのだ。
「やはり、ヴァレンティ―ナさんは博識でいらっしゃいましたから······主人公になって今度こそ人生を謳歌されて当然ですよね」
自分はなんの取柄もないただのお荷物。
ヴァレンティ―ナはいつも、キモチワルイと言われてきた自分に色々と話をして友達になってくれた唯一の存在なのだから······。
「ヴァレンティ―ナさんのはっぴーえんど?とかいう幸せの為ならば何でもしましょう!恩返し、ですものね」
シェリルは浴槽から上がって下着を身に着けると、目の前の鏡に映った自分を見た。
「とはいえ、インランな悪役令嬢、とは一体どういうものなのでしょうか?身体で男性方を篭絡する······とは?私の身体に何かがあるのでしょうか?」
鏡に映るのは、真っ白な髪に、豊満な胸と縊れた臍回り、そこから曲線を描くような臀部にスラリと長い白く肉付きの良い脚。
それは彼女の儚く純粋無垢な印象と反対に、あまりに妖にして艶やか。
身体や顔は彼女の前世と変わらないが、施設に囚われて日々罵られていた為彼女は知らなかったのだ。
その異次元の美しさに。
研究員達がシェリルを慰み者にしたいと言っていたのは嘘ではなかった。
ただ、実験の道具としてシェリルは優秀であったから、誰にも触れられずに生きてこれただけ。
しかし、それを知る筈もないシェリルは、性に対する知識もないまま第一の生涯を終えた。
当然、”淫乱””篭絡”などの単語の意味を分かる筈もない。
それは小説の作者がシェリルに宛がった悪役令嬢としての設定だったのだから。
「この身体が何かの役に立つとは思えませんね。わたくしはキモチワルイですから······人目につかないのが一番です······早く着替えましょう」
シェリルは顔を俯けるとすぐに学園から支給されている部屋着を身につけた。
それからベッドにうつ伏せで横になるとヴァレンティ―ナのメモ書きの続きを見る。
【悪役令嬢:シェリル・バルモント。男好きの尻軽。私の恋路の邪魔をし続ける。男に近づき唾液に含まれる媚薬の能力を使い相手を身体で篭絡する淫乱女】
「尻軽······とは······?私のお尻がそんなに軽い気はしないのですが······もう少し痩せた方がいいという事なのでしょうか?」
シェリルは顎に手をあて、首を傾げた。
「それに、唾液に含まれる媚薬?何かの薬なのでしょうか?それであれば、困っている方々を助けられるかも······。な、なるほど!身体で、唾液を介して助ける、という意味かもしれません」
納得し、頷いたシェリルは明日行われる事が書かれた部分に目を落とす。
「明日は、8時には学園前の校門に行けばいいのでしたよね?そこにアロライン王太子殿下と、ヴァレンティ―ナさんの馬車が到着する······そこで嫉妬に身を焦がす演技を······」
シェリルは紙の裏を捲った。
【一妻多夫で夫は選び放題食べ放題!とりあえず第一の夫はアロライン殿下で王妃エンド♡】
「アロライン殿下はわたくしの婚約者でしたね······私には覚えもないですし、婚約解消ができればいいのでしょうが······」
【騎士ラルク、次期宰相候補アイザックも狙いたい!けど、やっぱり本命はヒューベル王弟殿下!!♡ 】
「本命はヒューベル王弟殿下?······王太子殿下以外は分かる方は今はいませんね。それは追々認識して行けば良いのでしょうか?一先ずは明日!ですねっ」
シェリルは両手を握りしめる。
明日から、悪役令嬢として生まれ変わってヴァレンティ―ナの役に立ってみせる!
完璧な悪役令嬢になれば、友人の手助けができるなんてなんて素敵な事なのかしら!
そう意気込みながら枕を抱きしめて眠りについたシェリル。
彼女はあまりにも純粋無垢で”友人”という存在に憧れ囚われていた為、考えてすらいなかったのだ。
ヴァレンティ―ナがどうしてシェリルを悪役令嬢にしたのかも。その能力の設定や彼女に用意された衝撃的な結末も。
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シェリルは寮の部屋に備え付けの浴槽に恐る恐る湯を張った。
「寮母さんは気にせず湯を張って入ってと仰っていましたけれど······やはりお湯を沸かすだけでもお金がかかるのでしょうね?こんなに貴重な湯を大量にわたくし一人で使っても良いものなのでしょうか?」
確かに公爵家でも何度か湯には浸かったが、大量の水を使うそれは貴族が主にする事だと聞いた。
前世で施設にいた時は、週に2度だけ簡易的な清めの場を使う事ができたのだが、それも湯などではなく、いつも冷たい水だった。
シェリルは「海の水じゃないだけマシだと思え!」と研究員達が笑っていたのを思い出す。と言っても、海すら見たことがない彼女にはあまりよく分からなかったのだけど。
だから、今日はシェリルが初めて、自分で火を使って張った湯、なのだ。
たっぷりの湯が張られた浴槽を覗き込めば、自分の顔が映った。
「こ、これに入ればいいのですよね?それでは······失礼致します······ッ、ひあぁぁん!」
脚の先から浴槽に浸かろうとして爪先に走った感覚に、シェリルは悶絶し、後ずさり、蹲る。
「な、な、な······なんでしょうか!こ、これは!!」
シェリルは再び浴槽を覗き込んだ。
そして恐る恐る手でそれに触れる。
「あ······温かい······熱い······?も、もしかして······これが熱いという感覚なのでしょうか?公爵家ではいつもローズさんが張って下さっていたから······こんなに難しいのですね」
シェリルは温度確認をしながら、脚の先をゆっくりと浴槽の中に入れた。
「ッ······ぁぁ、っ······!これが······熱さからくる······痛み!っ······はぁ」
シェリルは感じた痛みに感動した。施設で火傷する一歩手前の熱湯を浴びせられる事もよくあった。
周りの子達は「痛い!」と泣いていたけれど、自分にはその感覚すら分からなかったから。
でも、この世界に来てからシェリルは痛みを感じるようになったらしいのだ。
それは、彼女にとっては願ってもなかった感覚······それが痛覚だ。
「痛みというのは、これほどのものなのですね······!」
身体を深く沈め、シェリルは先程まで読んでいたヴァレンティ―ナのメモ書きの内容を思い出した。
「ヴァレンティ―ナさん、自分の書いた小説に転生するなんて······本当に素晴らしいわ。それに、友人として私も連れてきてくれるなんて······なんて心優しいのかしら」
このロザリア王国で彼女は特別な存在。
この国の創造主であり、主人公として色んな人に愛される第二の人生を謳歌しようとしているヴァレンティ―ナなのだ。
「やはり、ヴァレンティ―ナさんは博識でいらっしゃいましたから······主人公になって今度こそ人生を謳歌されて当然ですよね」
自分はなんの取柄もないただのお荷物。
ヴァレンティ―ナはいつも、キモチワルイと言われてきた自分に色々と話をして友達になってくれた唯一の存在なのだから······。
「ヴァレンティ―ナさんのはっぴーえんど?とかいう幸せの為ならば何でもしましょう!恩返し、ですものね」
シェリルは浴槽から上がって下着を身に着けると、目の前の鏡に映った自分を見た。
「とはいえ、インランな悪役令嬢、とは一体どういうものなのでしょうか?身体で男性方を篭絡する······とは?私の身体に何かがあるのでしょうか?」
鏡に映るのは、真っ白な髪に、豊満な胸と縊れた臍回り、そこから曲線を描くような臀部にスラリと長い白く肉付きの良い脚。
それは彼女の儚く純粋無垢な印象と反対に、あまりに妖にして艶やか。
身体や顔は彼女の前世と変わらないが、施設に囚われて日々罵られていた為彼女は知らなかったのだ。
その異次元の美しさに。
研究員達がシェリルを慰み者にしたいと言っていたのは嘘ではなかった。
ただ、実験の道具としてシェリルは優秀であったから、誰にも触れられずに生きてこれただけ。
しかし、それを知る筈もないシェリルは、性に対する知識もないまま第一の生涯を終えた。
当然、”淫乱””篭絡”などの単語の意味を分かる筈もない。
それは小説の作者がシェリルに宛がった悪役令嬢としての設定だったのだから。
「この身体が何かの役に立つとは思えませんね。わたくしはキモチワルイですから······人目につかないのが一番です······早く着替えましょう」
シェリルは顔を俯けるとすぐに学園から支給されている部屋着を身につけた。
それからベッドにうつ伏せで横になるとヴァレンティ―ナのメモ書きの続きを見る。
【悪役令嬢:シェリル・バルモント。男好きの尻軽。私の恋路の邪魔をし続ける。男に近づき唾液に含まれる媚薬の能力を使い相手を身体で篭絡する淫乱女】
「尻軽······とは······?私のお尻がそんなに軽い気はしないのですが······もう少し痩せた方がいいという事なのでしょうか?」
シェリルは顎に手をあて、首を傾げた。
「それに、唾液に含まれる媚薬?何かの薬なのでしょうか?それであれば、困っている方々を助けられるかも······。な、なるほど!身体で、唾液を介して助ける、という意味かもしれません」
納得し、頷いたシェリルは明日行われる事が書かれた部分に目を落とす。
「明日は、8時には学園前の校門に行けばいいのでしたよね?そこにアロライン王太子殿下と、ヴァレンティ―ナさんの馬車が到着する······そこで嫉妬に身を焦がす演技を······」
シェリルは紙の裏を捲った。
【一妻多夫で夫は選び放題食べ放題!とりあえず第一の夫はアロライン殿下で王妃エンド♡】
「アロライン殿下はわたくしの婚約者でしたね······私には覚えもないですし、婚約解消ができればいいのでしょうが······」
【騎士ラルク、次期宰相候補アイザックも狙いたい!けど、やっぱり本命はヒューベル王弟殿下!!♡ 】
「本命はヒューベル王弟殿下?······王太子殿下以外は分かる方は今はいませんね。それは追々認識して行けば良いのでしょうか?一先ずは明日!ですねっ」
シェリルは両手を握りしめる。
明日から、悪役令嬢として生まれ変わってヴァレンティ―ナの役に立ってみせる!
完璧な悪役令嬢になれば、友人の手助けができるなんてなんて素敵な事なのかしら!
そう意気込みながら枕を抱きしめて眠りについたシェリル。
彼女はあまりにも純粋無垢で”友人”という存在に憧れ囚われていた為、考えてすらいなかったのだ。
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