【R18/完結】転生先は親友だと思っていた友人の小説の中でした。- 悪役令嬢になりきれないから、王弟殿下に調教されています -

猫まんじゅう

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23. 悪役令嬢は設定が怖い



 シェリルは部屋の中で蹲った。
 初めての社交界演習の後、ヴァレンティ―ナを追って、そこで見知らぬ男に襲われそうになり。
 寸での所で助けてくれた黒髪の男性に寮へ送り届けてもらった後、寮母に付き添われ部屋まで戻ってきたのだ。

 こうして、一人になったシェリルは先程見た、ヴァレンティ―ナと殿下の護衛騎士の熱烈な様子を思い出した。

「っ······」

 前世を小さい頃から施設の中で過ごし、何も知らないシェリルにとってはあまりに衝撃的な光景。

 シェリルと違い、ヴァレンティ―ナが施設に来たのはもう物心ついた時だった。その為彼女は色々と知識も豊富だったのだ。
 彼女は特に男女の濃厚な恋模様を描いた小説を読むのが好きだったらしく、そこで得た様々な知識を無知なシェリルに教えてくれた。

 教えてくれてはいたけれど······。

 ヴァレンティ―ナのドレスの胸元を開けさせ、零れ落ちた胸に顔を埋めた男性。
 ドレス下に潜り込んだ彼と、その時の彼女の赤い顔。
 あまりよく見えなかったが、ヴァレンティ―ナはその後その男の前に跪き、髪を掴まれて頭を揺さぶられていて。

「っ······あれは······なんだったの······?」

 あれも、ヴァレンティ―ナが話していた男女の濃厚な恋模様の一つなのだろうか?
 自分には男女の恋愛に関する知識があまりないけれど、あれがもし彼女が前世で話していたような男女の恋愛で起こる一貫なのだとしたら······。

 あまりに刺激的で······破廉恥。
 人前で異性と身体を密着させるなど、破廉恥極まりないと思っていた自分が恥ずかしいくらいには。

 シェリルはぶるりと身を震わせた。
 思い出すだけで身体が熱くなり、内側からゾクゾクと何かが這いあがってくるようで。
 お腹の奥がきゅうっと締まる様な気がして、シェリルは自分の身体を守るように両腕をきつくまわした。

 怖い。自分の身体が自分の物ではないような気がして。

「っはぁ······わたくし······っ、どうしてしまったのでしょう······」

 心臓がバクバクと音を立てて鳴り、呼吸が浅くなる。
 あんな刺激的なもの、見てはいけないと分かっているのに目が離せなかった。

 それは、何故かシェリル自身が心の底からそれを懇願しているようで。

「なぜ······なぜなの······?なんでこんなに身体が熱いの······っ」

『君もああゆう事が誰とでも出来る、”淫乱”なんだろ』

 突如、先程襲われそうになった際に発せられた男の言葉が思い出され、シェリルは顔をあげた。

「”淫乱”······とは、そういう······事を指すのでしょうか?」

 もしかして、これがヴァレンティ―ナの言っていた自分の能力なのだろうか?
 淫乱というのは、先程の彼女のような事を沢山する事?

 だとしたら、それは自分が努力して出来るようになることなの?

「それは······」

 それは、ヴァレンティ―ナという友人の為になるのであれば絶対にやらなければいけない。
 彼女が自分に望むなら、それを遂行する事こそが、この世界で自分の唯一与えられた役割、生きる理由だから。

「でも······」

 でも、思い出すのは先程の異様な光景と、見知らぬ男にいきなり唇をこじ開けられて指を突っ込まれた······その生暖かい感触。
 ねっとりと自分の唾液を舐めた男の光景を思い出しただけで、ゾクゾクと肌が粟立ち、その不快感にシェリルは顔を歪めた。

「い、や······」

 嫌だ、気持ち悪かった。
 あそこで誰も助けてくれなかったら、今頃自分はどうなっていたのだろう?
 あの男が言ったように、あのような行為が淫乱なのだとすれば、自分も同じ事をされていたのだろうか?

 そう考えるだけで、身体を掻きむしりたくなるような衝動に駆られる。

「だから、私の身体を······ああやって······触ろうとして······いたの?」

 ドレスの合間から見える胸をじっと食い入るように見つめた男の顔。
 そこに伸ばされた手。

「なのに······逃げるなんて······私はっ!」

 あの時、きっと、自分は逃げてはいけなかったのだ。
 それが私の役目だった筈なのに。

 本当に、”親友失格”ですね。

 自分の身体が拒んでも、自分のこの世界での役割を見誤ってはいけない······のだろうから。

「目標である"はっぴーえんど"······とはアロライン殿下との筈ですよね?」

 その時、シェリルの脳裏には先程の図書室の影からヴァレンティ―ナと男性の情熱的な場面を影から見ていたアロライン王太子の姿が思い出された。

「あれは、確かにアロライン殿下······でした······。でも、だったら、なぜ······あんな」

 アロライン殿下はヴァレンティ―ナの小説内では第一夫となる人で、最近では二人の距離がかなり縮まって、もう恋人関係なのではないかとまで囁かれているのをシェリルは知っている。

「では······っ、なら、なぜ?!なぜ、あんなに嬉しそうに······?わからないっ······!」

 全てが分からない。
 何が正しくて何が間違っていて。
 もう何が本当に愛し合う男女の睦み合いで、どれが偽物なのかも。

「でも、きっと、今日は······助けて頂けて良かった······と思うべきなのでしょうね」

 助けてもらわなければ何が起こっていたか想像もつかない。
 けれど、もし、自分の身体の大切な部分をあんなふうに触られ、顔を押し付けられていたかと思えば吐き気がする。

 いつかは”淫乱”というものになって、ヴァレンティ―ナさんがやっていた様な事をやらなければいけないとしても、今日は全くその心の準備はできていなかったから······。

 だから、あの男性達に感謝して次に会う機会があればしっかり御礼を述べなければ。

 シェリルは黒髪にエメラルドの美しい瞳の青年を思い出した。

「助けて頂いたのに、私ったら······お名前を聞くのを忘れてしまうなんて······」

 シェリルが、寮まで送り届けてくれた彼がこの国のエヴァン・ホワーク侯爵であり、国一番の頭脳と呼ばれる男であると知ったのはその後すぐの事だった。
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