【R18/完結】転生先は親友だと思っていた友人の小説の中でした。- 悪役令嬢になりきれないから、王弟殿下に調教されています -

猫まんじゅう

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25. 白猫の大事な報・連・相



 ヒューベルは自室の寝室、寝台の上で寛ぎながら本を読んでいた。
 カチャリと音がして、専用の出入り口から白猫が入ってくるのを確認する。

 最近はこの白猫(リル)、早朝に機嫌よく出ていって、夜遅くに帰ってくることが多い。
 リルには与えている仕事もあるし、しっかり進捗は聞いているからあまり気にはしていなかったのだけど······。

「ふんふんふーん」

 鼻歌を歌いながら、ヒューベルの事など目もくれず、最近設置したばかりのリルの寝床猫タワーに登っていこうとするリルをヒューベルが引き留めた。

「リル」
「ふふふーん」
「おい、リル」

 不意に足元が暗くなり強い重力を感じて進まなくなった脚をみてリルは立ち止まった。

「え、」

「え、じゃないだろ?契約主である僕が呼んでいるんだけど?」
「あ······あるじ······」
「うん?ちょっと、こっちに来て」

 ”嫌だ”と顔に書かれているリルを無視して、ヒューベルは読んでいた本を閉じると寝台の淵に腰掛ける。

「ほら、早くきて」
「はい······」

 トボトボと近づいてきたリルを抱き上げれば、彼の首に付けられた首輪が光った。

「君さ、僕にどれだけ首輪を付けろって言われても嫌がっていたのに、この前いきなり名前入りのを作ってくれって懇願してきたよね」

 そう、リルはヒューベルに今回の任務で必要だから、と特注の名前入りの首輪をおねだりした。

 それで、漸く、シェリルに「リル」と呼んでもらう事ができたし、「シェリルと、リルって似てるわね」と微笑んでくれたんだ······。

「ねえ、なんでそんなにニヤニヤしているか聞いてもいいかい?」

 やっべ。大抵の人間にはニンマリしているのがバレないのに、いつも何故かヒューベルにはバレるんだ。なんでなんだろう?

「いや······ニヤニヤしてはいないけど······」
「言い訳は不要だよ、で?今日の報告は?」

「今日······の?」
「ああ、君が最近持ってきた情報は、ヴァレンティ―ナ嬢が不特定多数の男達と最後まではいかないものの関係を持っているという事だったね?あとは、シェリルの事を護衛のように見守っていると?」

「う······ん」

 そう、言えない。
 朝、シェリルの寮に忍び込んで一緒に寝台でひと眠りし、寝起きの彼女に顔をスリスリされて、ムフフーンとなった後、彼女の生着替えを見守っているなんて。

 そう、絶対に言えない。
 学校が終わればまた寮に一緒に戻り、彼女の太腿の上に顔を乗せて、寛ぎながら話を聞く相手になっているなんて。
 
 そう、口が裂けても······
 朝食、昼食、おやつ、夕食と4食を彼女から分け与えて貰っているなんて······言えるはずがないんだ!!

 ヒューベルはフルフルと身体を震わせたリルの毛並みを少し撫で、そしてクンクンと鼻を鳴らした。

「っひぃ、······」
「ん?······君、なんで仄かに甘い女性の匂いが······こんなにするんだい?」

「え······?」

 尚も匂いを嗅ごうとするヒューベルを遮るように、リルは肉球を彼の鼻にそっと押し当てて、急いで口を開く。

「あっ、あ······”悪役令嬢”って······言ってた!」
「ん?”悪役令嬢”?なんだいそれ?」

 ヒューベルがその言葉に興味を持ち、リルを寝台の上におろし、リルはほっと胸を撫でおろした。

「人間にある言葉じゃないの?悪役令嬢の役を頂いたって言ってたぞ」

「悪役令嬢······の役?頂いた?誰に?」
「それに前にも言ったかもだけどさ······彼女も······”世渡り人”だよ。今日で確定したんだ」

 そのリルの断定的な言葉にヒューベルは片眉を上げる。

「なんでそう思うんだい?腕輪が無ければ確定はできない筈だろう?それとも君が感じられる異世界の何かがあったのかい?」

 そのヒューベルの言葉にリルは頷いた。

「うん、それもある。それに、僕は喋れないから聞いているだけだったけどね?あのイヤな女はシェリルの前世で唯一の友人だったらしい。それで、あの女に”悪役令嬢”という役割を与えられてこの世界にいるから、踏み台になるためにがんばらなくちゃってって張り切ってたんだよ」

「あの女の······前世の友人?悪役令嬢?······踏み台?」

 ヒューベルはその単語を呟きながら顔を顰める。
 悪役、という事はシェリルをどうにかして”悪い事をする令嬢”に仕立てあげるにつもりに違いない。そして、それを踏み台にして自分が人気を得ようという事······か?
 いや、でもそれは、もう”友人”ではないのでは······。

「あのイヤな女が他の男といる時は、シェリルはすぐにそこに向かっていってケチをつけるように指示されているんだけど。でも、彼女が上手くケチをつけられるわけはないだろ?」

「まあ、そうだろうね?シェリルは優しい子だからね。悪役なんて向いていないんじゃないかい?」

「そうなんだ。で、やっぱり上手く行かなくて。その後、イヤな女に呼び出されて怒られているんだよね。”あんた、私のカブあげなくてどうすんのよ、ホント使えないわね!”って」

「へえ?」

 ヒューベルは自分の立てた予想が強ちまちがってはいないのではと推測した。

「ああ、あとはねー。”アンタには淫乱設定をつけてあげたって教えたでしょ?だから、早く身体で男を篭絡しなさいよね。それに唾液にも媚薬の効果があるんだから、キスくらいしておきなさい?”って言われていたな」

 ヴァレンティ―ナの口調を真似てそう言ったリル。

「は?」

 その言葉にヒューベルから怒りの感情が漏れ始め、リルは慌てて言葉を付けたした。

「あ、でも、その言葉は今日言われてたから······!それに対してシェリルは真剣に悩んでたんだけど······」

 シェリルがヴァレンティ―ナと同じ世界から来た”世渡り人”だったとしよう。
 その役割が”悪役令嬢”とかいう馬鹿げた役で、あの女の踏み台になる事だとして。

 「シェリルの”世渡り人”としての特殊能力は唾液に含まれる媚薬で······淫乱なんて能力もあり、男を身体で篭絡する······だと?」

 他の男がシェリルに口づけをするなど、想像するだけでおかしくなりそうだ。
 せっかく、”世渡り人”ヴァレンティ―ナが現れてアロラインが夢中になり、シェリルとの婚約破棄を考えているから喜んでいたのに。
 また誰かに彼女を取られるなんて事があれば······今度こそ耐えられないだろう。

 ヒューベルの顔が苦痛に歪み、そして彼の脳が情報処理と共に回転を始め、一つの答えにたどり着く。
 そして、彼はにっこりと待ちきれない様子で笑った。

「そっか······それなら、僕が”悪役令嬢”とやらにしてあげれば良いんだね?まだ誰も触れていない今なら、ゆっくりと調教して······僕の色に染められる」

 その言葉にリルはヒューベルを恐る恐る見上げた。
 そしてヒューベルの闇深さが滲み出た表情に唾を飲み込む。

「あぁ、そんな能力を持ってしまったなんて。
 可哀想なシェリル······。君には、僕だけの”悪役令嬢”になってもらおうか······」

 貴女が悪い事をすれば、僕がそのお仕置きをしてあげよう。
 その先に甘く蕩けるような快楽を添えて、逃れられないようにして。
 逃げたくないと貴女が懇願するほどに、大切に囚われ、愛される事の喜びを知ってもらって。
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