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52. ヴァレンティ―ナの画策※
アロラインはヒューベルの執務室を出ると王城の廊下を突き進んだ。
薄々気付いてはいたけれど、きっと叔父上はシェリルが好きなのだろう······。
そして最近のヴァレンティ―ナはそれが気に入らないようだった。
中間舞踏会で叔父上が婚約をした後からヴィヴィはシェリルをさらに目の敵にするようになったのだ。
最近では彼女に対する嫉妬が強く見られて、その思いは憎しみや殺意、にまで至っている様で。
だから、先日のように男を送り込み、処女を奪わせることで叔父上との結婚を阻止しているのだろう。
単に叔父上を手に入れたいという思いだけであれば、アロラインにとっては許容範囲。
アロラインにとって、ヴァレンティ―ナが何人の男と姦通しようが何の問題もない。
むしろ、あんなに気の強い彼女が他の男に屈服し、犯されている姿を見れることは眼福であり至高なのだから······。
アロラインは王城の一画、自分の執務室の傍に作ったラルクの為の休憩部屋の前で立ち止まった。
部屋の扉が少し開いていて、それがラルクのサインである事を知っていた彼は隙間からそっと中を覗き込んだ。
『ッあぁ、ラル······ん、おおきっ······くるじぃ······』
『ほんと、お前は何人の夫を作れば気が済むんだ?殿下もこんな淫乱女が好きなんだもんなあ』
『でも、私はラルも好きだかあぁ······っ!』
『俺はアロライン殿下の傍に居られて、あの人が喜ぶならそれで良いから』
『あとは······ヒューベル殿下を······ッイ······イクううぅ』
アロラインはやはりと、納得する。
ヴァレンティ―ナはやはり叔父上も手にしたいと思っているのだ。
けれど、叔父上の気持ちはもうとっくにシェリルに向いていて、二人は婚約までしてしまった。
それが、どれほどヴィヴィの心をかき乱しているのか。
「でも、叔父上に関しては俺がどうこうできる方ではないからな······」
ばちゅんばちゅんっ、と卑猥な音が響き渡り、ぐったりと寝台に突っ伏したヴァレンティ―ナの上でラルクが腰を動かすのが見えてアロラインは膨張する己を必死に制する。
そして、彼は静かに扉を閉めた。
◆
「ホント、死ねばいいのに······」
ヴァレンティ―ナの呟きが部屋に響いて、隣に寝っ転がっていたラルクは彼女の顔を見た。
「誰の事だ?またバルモント公爵令嬢?ってかなんでそんな嫌いなんだよ?あの女がお前にそんな色々しているか?」
「それはっ······元々あの女が嫌いなの。ヒューベル殿下の気まで引いちゃって、絶対なんか色目つかってんのよ!早く死んでくれれば全部、私のものなのに······」
「まあ······。でも彼女を殺したら、それこそ死刑だぞ?相手は公爵令嬢で王弟殿下の婚約者なんだしな」
「もう!アンタに言われなくても分かってるわよ!私は絶対に殺しはしない。汚いの嫌いなの。それに、会う機会が全然ないのよ!もう、ホント、どこにいるのかしら!」
ラルクは考えた。
確か、バルモント公爵令嬢は王弟殿下の自室に匿われているんじゃなかったか?と。
でも、不確定情報は口にするなって殿下に再三注意されている身だ。言わなくてもいっか。と、ラルクは公表されている情報だけを伝える事にした。
「でも、あれだろ?彼女、最後の社交演習会には学園にくるって······あれ、1ヵ月後とかじゃなかったか?」
その瞬間、ヴァレンティ―ナは嬉々とした様子で顔をあげる。
「えっ?!本当?あの子に会えるの?!じゃあ、もうソコしかないじゃない!」
「でも、殿下も一緒でかなり護衛もつく筈だぞ。あの頭の良い王弟が彼女をお前に会わせるとは思えない」
「あんた、未来の王妃に向かって”お前”ってそろそろやめなさいよね」
「ハイハイ」
「でも、あれ?国王、って······その辺に死ぬんだわ?」
「は?」
ラルクは顔を引き攣らせた。
その発言は流石に、ヤバい。国王がその時期に死ぬんだよ!なんて不敬な話は、頭の悪い自覚のあるラルクでさえもあまり関わりたくなかった。
「え、だからその辺の日程で「いや、ちょっと待てっ。俺はこの先は聞かない事にする。流石に国王のそういう話は不敬罪にあたって罰せられる可能性が高いしな」
「ふーん、あんたもそういうの気にするのね。ま、いいや。で、アルもヒューベル殿下もその日の演習には参加しないから。ねえ、ラルク、シェリルを女子寮に入るように仕向けて欲しいんだけど。できるわよね?そんくらい簡単でしょ?」
ラルクは無い頭をフル稼働させて考え込む。
これで問題になる事があるだろうか······?と。
「バルモント公爵令嬢を寮に行くように仕向けるだけ、でいいんだな?」
「そうよ、あとは私がやるから」
ラルクはゆっくり頷いた。
「分かった。俺の知り合いにあの中の厨房で働いている奴がいるから、そいつに話しておく」
確か、あの女子寮の職員は皆シェリルを気に入っていた。
寮から急にいなくなった時、とても悲しがっていたらしいのだから。
きっと、学園最後の社交界演習の際にシェリルが来ると知らせれば、彼らはシェリルの為に彼女の好きだった食事や菓子などを用意するに違いない。
俺は彼女にその旨を伝えるだけで良いのだ。
これなら怪しまれないし、最悪、言い逃れもできるだろう。
「多分、大丈夫だよな······」
「ん、ありがとうっ!さっすがラールク!」
ヴァレンティ―ナに抱きつかれ、ラルクは目を閉じた。
最悪何かあって自分が爵位を取られるとして、家は兄弟にどうにかしてもらおう。
この女は最悪、極刑になるかもしれないが······アロライン殿下はその尻ぬぐいをするに違いない。そうなれば、俺も彼と共にどこまでもついていけばいい。
彼がMである事はとうに知っているし、その為に自分の加虐性癖を無理矢理底上げして彼女を犯すのなんて自分には簡単な役割だ。
「ね?もう一回ヤろ?」
きっとどうにかなる。大丈夫。
そう言い聞かせて、ラルクは自分の肉棒に舌を這わせる彼女の顔を見た。
それに、彼女の瞳を見る度に、心を掴まれて引きずり込まれるような気になるんだよなあ。
アロライン殿下への忠誠心の方が未だ勝つけれど、でも······
「なんでだろうな······」
「ん?何がぁ?」
「いや、なんでもねえ」
ラルクは考えるのを止め、再び快楽の中に意識を手放した。
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