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54. 親友の裏切り
寮の前についたシェリルは入口で待っていた寮母の元へ駆け寄った。
「寮母さま!!」
「シェリルちゃん!まった綺麗になってえ!いきなりいなくなるから心配したんだよお?」
「本当にごめんなさい」
急いでエヴァンがシェリルの後を追って、寮に入る直前、寮母に片手で止められる。
「エヴァン侯爵、女子寮は男子禁制!食堂に顔出して甘味を取ってくるだけなんだ、何処へも行きはしないよ」
エヴァンは寮母とシェリルを見て首を横に振った。
「シェリル様、駄目です。目の届かない所に一人で行かせるなど「お願いします!本当に久しぶりなの······ほんの少し、5分だけでもいいから······だめ、でしょうか?」
懇願する様な眼差しのシェリルに見つめられ、エヴァンは溜め息をつく。
学園の女子寮は男子は如何なる理由があっても入る事は許されない。
それにヴァレンティ―ナなら舞踏会で男達に囲まれていたからきっと此処にはいないだろうから。
「シェリル様、5分です。それ以上は危険と判断し、我々が突入しますので早急に用を済ませて頂けますか?」
「はい、分かりました!」
シェリルが嬉しそうに頷いて、エヴァンは外から食堂内部を見た。
「ロイド、窓の外からシェリル様の周辺を出来る限り監視してくれ。あと、リルはやはり彼女の傍に居てもらえますか?」
「はいーっす」
「にゃ」
エヴァンが窓を少し開けて、リルは食堂の中に身体を滑り込ませた。
シェリルを見に集まった大勢の女子生徒のドレスの下を練り歩きながら、リルはシェリルを探す。
そして、食堂の奥、調理場で料理長と話をする彼女を見つけ、駆けだした。
あと少しで彼女の元に辿り着ける。そう思った瞬間だった。
後方、入口で大きな爆発音が聞こえ、食堂内が一斉にパニックに陥る。
「きゃあ!」
「何?!」
「怖いッ!!」
リルは再び人の波に呑まれ、一気に先程までシェリルの居た調理場まで駆け抜けた。
「シェリルッ······!どこだ······?」
だが、見回してもシェリルの姿はない。
ドレスだって白と金でかなり目立つものなのに、見失うなんて······あり得ない。
「シェリル······」
何か嫌な汗が流れ、リルは窓の外を見た。
もうそこにはエヴァンとロイドの姿は無くて、直後食堂にエヴァンの大きな声が響き渡る。
「皆、落ち着いて下さい。大きな爆発物ではなかった為怪我人もおりません。安心して一旦外へ進んで下さい」
爆発物を回収したらしいロイドも既にシェリルの捜索に移っていて、リルは集中して瞳を閉じた。
大丈夫、ずっとシェリルの匂いを嗅いでいたんだから······見つけ出せる。
スンスンと鼻を鳴らして彼女の匂いを辿ってキッチンの中に脚を踏み入れ······、リルは少し開いた小さな扉を見つけた。
「ここ······か」
そして彼はその残り香漂う扉の中に入りこんだ。
◆
シェリルは身体を動かした。
「んんっ、んんん!!」
目の前に見えるのは、真っ赤な髪をクルクルと弄る親友、ヴァレンティ―ナ。
そしてその隣に5人の男が舌なめずりをして自分を見下ろしていて、シェリルはその状況に全身が粟立つのを感じた。
”粟立つ”といっても、ヒューベルから与えられる気持ちいい事からではない。
キモチワルイ、という感情からだ。
「ヴァレンティ―ナさん、マジで良いんすか?こんな極上の女······」
「いいわ?それにこの子、まだ初めてだと思うのよねえ」
楽しそうに笑ったヴァレンティ―ナはシェリルの身動きのとれない腕を踏みつける。
「っ······うぅ」
「ね、シェリル?アンタ、誰か私の送った男とヤれたの?」
ブンブンと首を横に振ったシェリルを見て、ヴァレンティ―ナは笑う。
「ははっ、ホント使えなさすぎ。婚約者ともヤッてないわよね?あの人が婚姻前に手を出す筈がないもんねえ」
ヴァレンティ―ナがそう言えば隣にいた男達が目を丸くした。
「婚約者がいて御貴族様、初物を頂いちゃうとか大丈夫かあ?嬢ちゃんも目えつけられて大変だなぁ」
「でも、この子、痛みは感じないし。ちょっとキモチワルイと思うけど、ナカは気持ちいいはずよ?その設定を高めにしてあげたのに、それすら使えないで死ぬなんて······馬鹿な子よね」
「痛みを感じない?やべえ奴っすね?腕とか切り落としても楽しそうだ」
ひゃひゃひゃっと汚く笑う男を別の男が嗜める。
「ナカが気持ち良いなんて、神に捧げられる名器って事だろ?男の精液を吸いつくす”神の器”だぞ?本当にそうなら、確実に稼げるじゃねえか!腕ナシとか客が限られるからやめろや」
「違いねえ!」と周りの男達が笑い合い、シェリルはその話の内容に身を捩った。
「んんんッ!」
「アンタ、煩いわね、何言ってんのか聞こえないしぃ」
シェリルの目の前に持ってきた椅子に腰を下ろしたヴァレンティ―ナは、縛られ床に放置されたままの彼女を見下ろす。
一人の男が後ろで縛られた紐を持ち、シェリルをヴァレンティ―ナの前まで無理矢理引きずり上げた。
「これはこれは、涎が垂れて大変なことだなあ」
「まあコレもそそられるけど」と、男がニヤニヤと頬を緩めながらシェリルの口に括り付けてられていた縄をナイフで切れば、シェリルは恐怖から涙を流した。
「ヴァ······ヴァレンティ―ナさん、どうして······っ、こんなこと······!私達は友達······親友なのでは······ないのですかっ······?」
「おお、お涙頂戴だな?こんな展開、エロすぎんだろ!」
ケラケラと笑う男は紐を強く引っ張った。
「ッ、あぁっ······!」
「オイオイ。コイツ、感じてんぞ?ほら、紐引っ張ると喘ぎやがる」
「うわ、ホントだ。こんな美女で、変態。それに加えて”神の器”持ちってやべえな」
「マジで売れますね?とりあえず俺達で味見しても······良いんだよな?」
「処女を売っても良いかもしんねえけど······」
「イヤぁ······ッ!ヴァレンティ―ナさん、お願い······助けて!お願いしますっ!」
シェリルはヒューベルの言葉を思い出した。
友人は助け合う事のできる仲で、頼みに答えてくれる筈だ······と。
そしてシェリルのその期待は、ヴァレンティ―ナの優しい笑顔と共に裏切られる事になる。
彼女は徐に立ちあがり、男に掴まれているシェリルの前にしゃがみ込むとにっこりと微笑んだ。
「い・や・よ。あぁ、シェリル······可哀相な子ねえ?キモチワルイ、アンタの友達になってあげたけど、もう用はないのよね。早く私の前から消えてくんない?」
シェリルは目の前で微笑んだヴァレンティ―ナを見た。
「っふふふ!その絶望の瞳、最高だわ?前世では見たことがなかったのよねえ。ずっと、ずっと見たいと思ってたの。アンタには私達の苦痛と絶望の気持ちが分からなかったでしょう?
親友?······ふざけないで、どんだけ私がアンタを嫌いだったか。どれだけ、殺してやりたいと思っていたか······!」
そのヴァレンティ―ナの憎悪の表情に、シェリルは胸が切り裂かれる思いがした。
「ずっと友達だと······思っていたのに······」
でも、確かにそうだ。
私は痛みも分からなかったから、拷問も苦痛では無かった。
皆は苦しく辛い思いをして生き続けて居たのだから、恨まれても仕方ない······。
「違った······のですね······っんんぅう!」
シェリルは項垂れた。
ボロボロと涙が零れ、大柄の男が嬉しそうにシェリルに近づいて口に指を突っ込む。
「やっべえじゃん、この展開!親友だと思ってたダチから、裏切られて死ねとか言われて?で、なに、俺らに強姦されるって?!」
男に顔面を強く押され、シェリルは床に突っ伏した。
「本当に······ごめんなさい······っ、」
「それよ!!アンタの、その”ごめんなさい”ってのが本当に嫌い!アンタにはこの世界で苦しんで死んでもらって、その後、また元の世界で苦しんで生きれる様に色々試してあげるから」
身体に括り付けられた紐を強引に引っ張られ、シェリルは床をずるずると引きずられる。
後ろから身体を支えられ、先程の大柄の男が嬉しそうに刃物を持ちながら歩いてくるとドレスに突き立てた。
ビリビリ、とヒューベルから貰ったドレスの生地が裂かれ、シェリルの豊満な胸が零れ落ち······
「っやぁ······やめて······見ないで······」
シェリルは恥ずかしさと悲しみで瞳を閉じた。
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