4 / 4
4
しおりを挟む翌日。
これってもしかしなくてもデートだよな……。そう思いながら身支度を済ませる……とはいっても着るものも全部こっちのものだし
靴だけは自分の物を履こうそう思い靴ひもを締めた。
はわわわどうしよう。私としたことが実質デートだというのに昨日から流行最新コーデをかたっぱしから注文し
試着してはいるがどれがいいのか全くわからない
「やはりこのシックなレトロコーデが一番いいだろうか、いやいいに決まってる! これで行こう!」
何せ体験したことのない事態だ。
彼を待たせていないだろうかと気になる。
そんな面持ちで部屋から出ると
「おお、似合ってるじゃないか」
早速彼が褒めてくれた。嬉しい。
「それで今日はどこへ案内してくれるんだ?」
「VR映画なんてのはどうかな?」
「VR映画なんてのもあるのか、こいつは楽しみだな」
タクシーにのってやってきた映画館、さほど混み合ってもいなく快適にみれそうだ。
「どれが見たいボータロ」
「うーんここはやっぱり派手なアクションかなぁ」
「よしじゃあそれでいこう」
館内に入るとスクリーンは無く座席にVRヘッドセットが設置されていた。これは初めてみる光景で驚かされる。
「ほら座って、ここにあるゴーグルをかけるんだ」
「お、おう」
俺は言われるがままに座ってヘッドセットを着用する。すると綺麗な風景をバックに映画のマナーが流れている。
「何か初めてで不安だな……」
「不安だったらその……手でも握っておこうか」
そう言って奈津美が手を握ってきた。俺は恥ずかしいながらも振りほどくことはせずなすがまま手を繋いだ。
「ほらボータロ、もうすぐ始まるぞ」
ドーンという重低音の後にロゴが流れ映画が始まる、何より驚いたのはVRでまるで自分が映画の中にいるかのような感覚を味わえたことだった。ヒーローが戦ってる視点を色々な角度から見ることができる。未来の映画は素晴らしいなぁ、などと感動してるうちに映画は終わってしまった。
「どうだった? ボータロ、楽しめたか?」
ウキウキで聞いてくるまるで無邪気な子供のような彼女の瞳に一瞬魅入られてしまった
「ああ! 最後のヒーローの起死回生たまんなかったよな!」
お互い手を握り締め合いながら熱く語る。
ふとお互いが手を握り締めあっていたことに気付き、赤面しながらぱっと離す
その後もショッピングモールで買い物をしたりデートらしいデートを満喫した。
しかし帰りのタクシーでは奈津美はどこか落ち込み気味だった。
「どうした? 気分でも悪いのか?
「いやこんなにも楽しい時間を過ごしたのは初めてだ……だから終わってしまうのが勿体ないなって思って……」
そう、俺は明日過去に帰る予定なのだ。
「この短期間君とは非常にユニークな毎日を過ごさせてもらった、礼をいわないとな」
「そんな礼だなんて、俺は世話になりっぱなしだったし寧ろ助けてもらってばっかりだったよ」
お互いに関係性が変化してるのが伝わってくる。
タクシーが自宅兼ラボに到着すると二人は荷物を持って中へと入った。
「明日の天気は嵐だその前に備品を購入できてよかったよ」
まるで女性が服を悩むかの如く備品を品定めしていた姿はやっぱり研究者なんだと思い知らされた。
俺は本当に帰るべきなのかを悩んでいた
何故なら彼女、奈津美を愛してしまったからだ。
恋人のような一日を過ごしたからかもしれない。でももっとそれ以前に好意の感情はあったのかもしれない。
彼女のことを知れば知るほど惹かれていった。俺はこのまま帰るべきなのか残るべきなのか……。
私はどんでもないことしてしまってた。
研究者でありながら彼に恋をしてしまっのだ。彼は明日過去へ帰らなければならない。
そんな状態で相手を好きになってしまったのだ。彼は私を認め受け止めてくれた。これ以上嬉しかったことはない。正直この感情は彼に対する愛情だと思っている。だからと言って引き留めるわけにはいかない。
気まずさを振り払うように部屋をでたら彼と鉢合わせた。その時の彼はもう元居た時代の服を着ていて……・
そうだよなそうなんだ、彼は今日過去へ戻る、落雷予報が外れて延期になればいいのにと思ったが今日ほどの嵐で強い雷はそうそうこないとのことだった。
「おはよう、準備は万端だな」
私は気取られないよう注意して言葉を選ぶ。
「おう、後は雷がいつ落ちてくるかだな、予報では午後に激しい雷雨がくるんだろ? いやー未来の天気予報ってすごいなぁ」
俺は心にもない上っ面だけの言葉を並べてその場を取り繕う。
「取り敢えず朝食にしよう。雷雨は午後からだしな」
私は彼の調子に合わせて何の気ない返事をしてしてまう。本当に言いたいことはそんなんじゃないのに。
◇
早めの朝食を済ませた私たちはタイムマシンの最終チェックに入る。私たちとは言っても実際に作業するのは私とジーニアスがサポートしてくれてやる作業だけだ。
「システムオールグリーン、稼働可能状態でス」
「あぁ、ありがとうジーニアス、後はもう待つだけだな、雷雨が鳴り始めたらタイムマシンの指向性アンテナの前に立ってくれ、落雷と同時にシステムが稼働して元の時代に戻れるはずだ」
「そうか」
二人の間に気まずい沈黙が流れる
「あ、あのさ、よかったら300年後の私に手紙を出してくれないか?無事着いたのか確認したい」
「わかったそれくらいならお安い御用だ、
孫の代まで受け継がせるよ」
その言葉が胸にズキっと刺さる。私じゃない人と結婚して家庭を作っていくんだな……と。
そうこうしているうちに午後になり雷鳴が聞こえ始めた。
「そろそろだなボータロ、準備はいいか?」
「ああ、問題ない」
「システムスタンバイ」
ジーニアスがそう告げるとタイムマシンはキュッゥゥンと音を上げ稼働する
言わなくちゃ私! 今言わないと一生後悔する。
「ボータロ、私あなたが好き、愛してる……」
「そんなの俺だって同じだ!」
「嬉しい……私たち通じあってたんだね」
「やっぱ俺帰らない! お前と一緒に……」
「さよなら……ボータロ」
窓の外に閃光が満ちたと思った瞬間身体しびれる様な感覚を覚えた。
気が付いたのはいつも通る帰り道。
「ああ成功したんだ奈津美、成功したぞ」
「どうやらそのようだな」
ん?待て待て待て今奈津美の声が聞こえたような
「驚くのも無理もないだろう」
倒れた俺の上に奈津美が覆い被さっていた
「これがタイムトラベルかここが300年前だと思うと感慨深いな」
「なんで奈津美がいるんだよ!」
「うむ、手短に話そう、あの時ボータロの近くでスイッチ操作していた為側撃雷を受けたみたいだ、それでボータロと共にこの時代にやってきた」
「やってきたってお前!もうこっちにはタイムマシンはなくて片道切符なんだぞ正真正銘の!」
「いいんだ、向こうに未練はない、それよりもボータロと暮らすほうが大事だ、偶発的とは言えお互い愛し合ってることがわかった上で離れ離れにならずに済んだんだ。これは神の粋な計らいというやつかな?」
はーっとため息をついて考える。
「お前これから戸籍とかどうする気だ?」
「勿論ボータロの妻だ。あ、セキュリティ問題のこと言ってるならこの時代のセキュリティは私に取ってはおもちゃみたいなものだ戸籍偽造も容易い」
「堂々と犯罪自慢するんじゃねぇよ」
「とにかくこれからもよろしくなボータロ!」
こうして俺は奈津美と愛情を育むことになった。先行きはどうなるやら。
しかし思わぬところで俺の恋路も実ったのも事実。願わくばこの偏屈な博士に愛情を
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる