天の龍 地の女神

常盤 舞子

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第9話 闇の宮殿

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魔界の地下宮殿。
大理石や宝石など地下資源を豊富に使う贅を尽くした美しい建築物である。
列柱や壁には所々に意匠を凝らしたレリーフが施してある。
ここに住まうのは、魔界を統べる魔王ラディリオンとその血族たちである。
復活したとはいえ、あまりにも永い時を封印石の中で過ごしていた魔王ラディリオンの体は衰弱しきっていた。
今は宮殿地下の神殿にて、その体を薬水にひたし、回復を待っていた。

玉座の間では、夜の闇をそのまままとったかのような漆黒の髪と瞳を持つ女が金髪碧眼の男から復命を受けていた。
女の名前はラビリティア。
誰もが息を呑むような絶世の美貌であり、妖艶さと神秘的な雰囲気を併せ持っている。
魔王ラディリオンの妹であり、兄不在の魔界を統治していた。

金髪碧眼の男はリーデイル。
ウェーブがかった長髪と憂いを帯びた美貌は女と見まごうばかりである。
リーネ族の特徴である金髪碧眼の容貌をしているものの、母が魔族であるため、リーネ族として認められていない。
リーネ族は混血児を「不浄の者」と呼び追放していた。
リーデイルは魔界に与し、魔王ラディリオンとラビリティアに仕えている。

「リーザの転生者を特定し、追い詰めましたが、リーヴィシランの妨害に遭い、今一歩のところで取り逃がしました。
申し訳ありません」
リーデイルは美しい従姉を見つめた。
リーデイルの母ととラディリオンたちの父は兄妹なので、彼らは従兄弟同士となる。
「しかも、ソロモンの指輪のせいで、彼らの足取り一切の痕跡をつかめません・・・」
ラビリティアは眉をしかめた。
魔界一の闘士であるリーデイルが取り逃がしたのであれば、魔界の誰がやっても同じことになる。
しかも、痕跡がなければ追うこともできない。
「・・・しばらく泳がせておこう。なに、あやつらの目的はリーザの体と封印石。どの道、魔界を目指して、そのうち姿を現すだろうよ」
魔王ラディリオンの完全復活にはまだまだ時間がかかる。
焦る必要はないのだ。
やつらの出方を待とう。
リーデイルは復命を終えて辞した。
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